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僕の気持ちはどこにある? そして君は今、どこにいるの?
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正直それからの2日間のことは覚えていない。金曜日に伊東さんと電話番号を交換したことで、何度か電話をしたことだけは覚えている。その度に返事は決まっていた。
「まだ。」
朝か昼には、テレビのニュースも見た。連絡を絶った場所近辺で捜索にあたっているが、何の手がかりもないという。海は広い。ヘリコプターとか捜索用ヘリは飛ばないのだろうか? そう思いながら電源を切った。
日曜日の夜。明日はいつも通りの出勤。今日は何か食べたような気がするけど、何を食べたっけ? ああ、そうだカップラーメンを食べた。
こんな時なのに、普通に腹が減るということが滑稽だ。嶺さんの安否がわからずに、心配でたまらないというのに。
『もう寝ないとまずいだろう。』
そう思い始めた深夜0時。出勤の準備など何一つしていないけど、するつもりもなかった。なんだか、何もかもどうでも良い自分がいた。その日も眠りはなかなか訪れなかった。
「嶺くんについて色々噂を聞いていることと思うが、企業として顧客に迷惑をかけるわけにはいかない。今日から通常通りに仕事に専念してほしい。」
「色々な噂とは?」
勤務時間になってすぐの柿崎部長の言葉に、質問せずにはいられなかった。今朝、電車の中でネットニュースを漁ったけれども、大した進展がなさそうだった。
ただ、失踪後48時間以上が経っており、生存者は絶望か? などという根拠のない記事を見て、腹立だしさとともにスマホを閉じただけ。
そして、いつもの電車に乗っても嶺さんに会うことはなかった。
「ああ、渡良瀬……話しておくか。みんなも聞いて欲しい。」
部長が話してくれたのは、会社として上層部が関係各所に連絡をとっているということ。続報があればすぐに連絡が来ることになっている、ということ。
そして、嶺さんが孤独だったということだった。母親を早くに亡くし、父親、祖父母ともに他界しているという。兄弟もいない。
一番近しい親戚として会社に申し出ていたのは、北海道に住む叔母。それも疎遠だと言っていたという。
「その叔母には連絡をとった。なかなか東京までは来られないという話だ。続報を待つということだった。」
「そうですか……。」
僕が言葉を発すると同時に、目の前の伊東さんが「知らなかった。」と呟き、頭を抱えた。
いつも陽気に振る舞っていた嶺さん。もちろんお母さんが亡くなったことは聞いた。小学校の時だ。そうして父親に連れられて東京の祖父母のもとで暮らさなくてはならなくなったとか。でも……。
僕も涙が出てきそうだった。あの笑顔の陰に隠されていた孤独。幼い頃の僕たちのことを思い出していた時、本当は家族との幸せな日々を思っていたのではないだろうか?
涙が溢れそうになり、慌てて俯いて瞬きを繰り返した。仕事を始めるふりをして、近くにあった黄色のファイルを掴んで、中の書類を読むふりをした。
「まだ。」
朝か昼には、テレビのニュースも見た。連絡を絶った場所近辺で捜索にあたっているが、何の手がかりもないという。海は広い。ヘリコプターとか捜索用ヘリは飛ばないのだろうか? そう思いながら電源を切った。
日曜日の夜。明日はいつも通りの出勤。今日は何か食べたような気がするけど、何を食べたっけ? ああ、そうだカップラーメンを食べた。
こんな時なのに、普通に腹が減るということが滑稽だ。嶺さんの安否がわからずに、心配でたまらないというのに。
『もう寝ないとまずいだろう。』
そう思い始めた深夜0時。出勤の準備など何一つしていないけど、するつもりもなかった。なんだか、何もかもどうでも良い自分がいた。その日も眠りはなかなか訪れなかった。
「嶺くんについて色々噂を聞いていることと思うが、企業として顧客に迷惑をかけるわけにはいかない。今日から通常通りに仕事に専念してほしい。」
「色々な噂とは?」
勤務時間になってすぐの柿崎部長の言葉に、質問せずにはいられなかった。今朝、電車の中でネットニュースを漁ったけれども、大した進展がなさそうだった。
ただ、失踪後48時間以上が経っており、生存者は絶望か? などという根拠のない記事を見て、腹立だしさとともにスマホを閉じただけ。
そして、いつもの電車に乗っても嶺さんに会うことはなかった。
「ああ、渡良瀬……話しておくか。みんなも聞いて欲しい。」
部長が話してくれたのは、会社として上層部が関係各所に連絡をとっているということ。続報があればすぐに連絡が来ることになっている、ということ。
そして、嶺さんが孤独だったということだった。母親を早くに亡くし、父親、祖父母ともに他界しているという。兄弟もいない。
一番近しい親戚として会社に申し出ていたのは、北海道に住む叔母。それも疎遠だと言っていたという。
「その叔母には連絡をとった。なかなか東京までは来られないという話だ。続報を待つということだった。」
「そうですか……。」
僕が言葉を発すると同時に、目の前の伊東さんが「知らなかった。」と呟き、頭を抱えた。
いつも陽気に振る舞っていた嶺さん。もちろんお母さんが亡くなったことは聞いた。小学校の時だ。そうして父親に連れられて東京の祖父母のもとで暮らさなくてはならなくなったとか。でも……。
僕も涙が出てきそうだった。あの笑顔の陰に隠されていた孤独。幼い頃の僕たちのことを思い出していた時、本当は家族との幸せな日々を思っていたのではないだろうか?
涙が溢れそうになり、慌てて俯いて瞬きを繰り返した。仕事を始めるふりをして、近くにあった黄色のファイルを掴んで、中の書類を読むふりをした。
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