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僕は君の初恋の人? 君は憧れのお兄さん?
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「で? 何か悩んでる?」
開店したばかりの綺麗な店内で、ビールとチャーシュー、餃子を頼むと嶺さんが口を開いた。全部2人前頼んだのが謎だったけれど、コップに並々と注がれた水を一口飲む。
「悩んでは、いないですよ。」
ただ気持ちの整理をつけたいだけで。僕がこれからどうしたいのか、自分自身でも分からないから。
「嘘だね。それなら何故今朝は齋藤君と一緒に通勤しなかったんだ? ほぼ毎日一緒だったろ。」
「うーーん、悩みっていうか。自分の気持ちを整理したい、というか……。」
そこで店員が泡立ったビールのジョッキを2つ運んできた。嶺さんがそれを受け取り、僕に1つ差し出してきた。受け取って泡を眺める。プチプチと弾けている泡が陽気だ。みんな仕事帰りの疲れた体でビールを飲みたがるのは、気分を上げるためなのかもしれない。
「乾杯。」
嶺さんが大きな手でビールのジョッキを掴み上げて僕のにカツンと合わせた。そのまま喉に流し込む。やはり一度に半分以上なくなっていった。僕も泡に口をつける。泡が唇の上で弾けてくすぐったかった。
「あーー、仕事上がりのビールって美味いよなあ。齋藤君が今日は落ち込んでいたって聞いたぞ? 愛しの渡良瀬君と出勤できなくて。」
「やめてくださいよ。誰から聞くんですか、そのテの噂。」
もう一口ビールを飲む。今度はキンと冷えたビールが喉を通り抜けていった。店内は黒と白で統一されているようだった。黒いテーブルに置いてあるウォーターピッチャーも黒。醤油やラー油など調味料が入れてある容器は白だ。
「ん? 総務の日山君が言ってたな。」
「日山さんと、付き合ってるんですか?」
自分でも信じられないぐらい、すぐに言葉が口から飛び出していた。口にしてしまってから慌てる。嶺さんは口に持っていったジョッキを止めて目を丸くしてこちらを見ていたけど、そのうちに笑顔になった。
「いや、付き合っていないよ? 俺は社内恋愛はしない主義。後々面倒だろう? どうなったにせよ。別れたら別れたで何か言われる。たとえ結婚したにしても、何かしら同僚にイジられる。俺はそういうのは勘弁。」
「そうですよね。」
まさに僕がそんな状況だ。同期に揶揄われ、齋藤さんに言いふらされて。転職したい。まだ3か月も働いていないけど。
「ほら、髭がついてるぞ。」
嶺さんの手が伸びてきて、僕の上唇を撫でていった。人差し指一本なのに嶺さんの指は熱く、僕の胸は訳もなく鼓動を速めた。
「じゃあ、他の会社の方と?」
もう一口ビールを飲む。今度はちゃんと唇を拭った。そして、自分のドキドキする鼓動を誤魔化すかのように、嶺さんをさらに追求していた。
開店したばかりの綺麗な店内で、ビールとチャーシュー、餃子を頼むと嶺さんが口を開いた。全部2人前頼んだのが謎だったけれど、コップに並々と注がれた水を一口飲む。
「悩んでは、いないですよ。」
ただ気持ちの整理をつけたいだけで。僕がこれからどうしたいのか、自分自身でも分からないから。
「嘘だね。それなら何故今朝は齋藤君と一緒に通勤しなかったんだ? ほぼ毎日一緒だったろ。」
「うーーん、悩みっていうか。自分の気持ちを整理したい、というか……。」
そこで店員が泡立ったビールのジョッキを2つ運んできた。嶺さんがそれを受け取り、僕に1つ差し出してきた。受け取って泡を眺める。プチプチと弾けている泡が陽気だ。みんな仕事帰りの疲れた体でビールを飲みたがるのは、気分を上げるためなのかもしれない。
「乾杯。」
嶺さんが大きな手でビールのジョッキを掴み上げて僕のにカツンと合わせた。そのまま喉に流し込む。やはり一度に半分以上なくなっていった。僕も泡に口をつける。泡が唇の上で弾けてくすぐったかった。
「あーー、仕事上がりのビールって美味いよなあ。齋藤君が今日は落ち込んでいたって聞いたぞ? 愛しの渡良瀬君と出勤できなくて。」
「やめてくださいよ。誰から聞くんですか、そのテの噂。」
もう一口ビールを飲む。今度はキンと冷えたビールが喉を通り抜けていった。店内は黒と白で統一されているようだった。黒いテーブルに置いてあるウォーターピッチャーも黒。醤油やラー油など調味料が入れてある容器は白だ。
「ん? 総務の日山君が言ってたな。」
「日山さんと、付き合ってるんですか?」
自分でも信じられないぐらい、すぐに言葉が口から飛び出していた。口にしてしまってから慌てる。嶺さんは口に持っていったジョッキを止めて目を丸くしてこちらを見ていたけど、そのうちに笑顔になった。
「いや、付き合っていないよ? 俺は社内恋愛はしない主義。後々面倒だろう? どうなったにせよ。別れたら別れたで何か言われる。たとえ結婚したにしても、何かしら同僚にイジられる。俺はそういうのは勘弁。」
「そうですよね。」
まさに僕がそんな状況だ。同期に揶揄われ、齋藤さんに言いふらされて。転職したい。まだ3か月も働いていないけど。
「ほら、髭がついてるぞ。」
嶺さんの手が伸びてきて、僕の上唇を撫でていった。人差し指一本なのに嶺さんの指は熱く、僕の胸は訳もなく鼓動を速めた。
「じゃあ、他の会社の方と?」
もう一口ビールを飲む。今度はちゃんと唇を拭った。そして、自分のドキドキする鼓動を誤魔化すかのように、嶺さんをさらに追求していた。
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