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体
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電車を降りて改札口を通り抜けると、その男はすぐに見つかった。黒い薄手のジャンパーに真っ白な野球帽。帽子には、三日月のような形の有名なスポーツブランドの黒いマークが付いている。
「王高寺優樹さんですね?」
近づいてみると背が高い。声も低い。ジャンパー越しにも筋肉が盛り上がっているのがわかり、何故だか少しだけドキドキしてきた。
「ええ。貴方は?」
「小林と名乗っておきます。少し後ろから歩きますのでお先にどうぞ。」
名乗っておくって何? 本名じゃないってこと? 初めて会った相手に戸惑い、マンションへ向かって歩き出しながら愼に問いかける。
「愼、今の奴でいいの?」
『はい、大丈夫です。音声で確認を取っております。残念ながら通信手段が限られていまして、容姿は私も知りませんでした。』
駅前の横断歩道で信号が変わるのを待つ間に、チラッと後ろを振り返った。1m近く離れて立ちながら、右の耳に入れたイヤフォンを押さえて何か話しているようだった。
「愼、今奴と話してんのか?」
『はい。優樹様はそのままいつもの道を通ってお帰りください。』
後ろからも、時折小声で「はい。」とか「ええ。」とか聞こえてくる。愼と何かしら打ち合わせをしているに違いない。そのうちに信号が青になり、歩いているうちに気にならなくなっていた。
バイト先へ向かう交差点。ここを右に行って少し歩いたところに「魚正」はある。マンションからも、さほど離れてはいない。今日は米田さんはシフトに入っていたっけ……。
右を向きながらぼんやりと考えていると、いきなり後ろから腕を掴まれた。驚いて後ろを振り返る。
「危ないです。」
無表情の小林さんが、腕を掴んでいた。前を見ると横断歩道は赤。車がちょうど動き出したところで、大きなトラックが前を通り過ぎていった。恥ずかしい……。
『優樹様。大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫。ぼんやりしてた。」
目の前を行き交う車の量が多い。国道で2車線もあるから当たり前だ。だんだんと周りにも人が集まってきて同じ信号を眺める。それからはよそ見をすることなくマンションまで歩き続けた。
「ありがとうございました。」
愼から指示をされ、マンションの前で小林さんに挨拶をする。ボディガードはここまでということだ。マンションの中は安心。
「中に入るまで見送ります。」
浅黒い肌に太い眉。この人に白い帽子は似合わないな。そんなことを思いつつ、頭を下げてからボードに向き合い、マンションの入り口のドアに暗証番号を入力して中に入っていった。
「王高寺優樹さんですね?」
近づいてみると背が高い。声も低い。ジャンパー越しにも筋肉が盛り上がっているのがわかり、何故だか少しだけドキドキしてきた。
「ええ。貴方は?」
「小林と名乗っておきます。少し後ろから歩きますのでお先にどうぞ。」
名乗っておくって何? 本名じゃないってこと? 初めて会った相手に戸惑い、マンションへ向かって歩き出しながら愼に問いかける。
「愼、今の奴でいいの?」
『はい、大丈夫です。音声で確認を取っております。残念ながら通信手段が限られていまして、容姿は私も知りませんでした。』
駅前の横断歩道で信号が変わるのを待つ間に、チラッと後ろを振り返った。1m近く離れて立ちながら、右の耳に入れたイヤフォンを押さえて何か話しているようだった。
「愼、今奴と話してんのか?」
『はい。優樹様はそのままいつもの道を通ってお帰りください。』
後ろからも、時折小声で「はい。」とか「ええ。」とか聞こえてくる。愼と何かしら打ち合わせをしているに違いない。そのうちに信号が青になり、歩いているうちに気にならなくなっていた。
バイト先へ向かう交差点。ここを右に行って少し歩いたところに「魚正」はある。マンションからも、さほど離れてはいない。今日は米田さんはシフトに入っていたっけ……。
右を向きながらぼんやりと考えていると、いきなり後ろから腕を掴まれた。驚いて後ろを振り返る。
「危ないです。」
無表情の小林さんが、腕を掴んでいた。前を見ると横断歩道は赤。車がちょうど動き出したところで、大きなトラックが前を通り過ぎていった。恥ずかしい……。
『優樹様。大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫。ぼんやりしてた。」
目の前を行き交う車の量が多い。国道で2車線もあるから当たり前だ。だんだんと周りにも人が集まってきて同じ信号を眺める。それからはよそ見をすることなくマンションまで歩き続けた。
「ありがとうございました。」
愼から指示をされ、マンションの前で小林さんに挨拶をする。ボディガードはここまでということだ。マンションの中は安心。
「中に入るまで見送ります。」
浅黒い肌に太い眉。この人に白い帽子は似合わないな。そんなことを思いつつ、頭を下げてからボードに向き合い、マンションの入り口のドアに暗証番号を入力して中に入っていった。
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