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遭遇6 〜侑〜
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「小田原さんと付き合ってるって噂も。」
「えっ? 杏と? ないよ。彼女は今彼氏いるし。仲がいいってだけで。」
杏とは授業が一緒の時には必ず一緒にいるけど、半分も同じじゃない。お昼もいつも一緒にとるわけじゃないし。気を使い過ぎずに自然と一緒にいたくなる、その関係が心地いいんだ。
そういえばここ2、3日、杏に会ってないかも。あれ? 昨日の授業で会わなかったから、連絡しようと思ってたのを忘れてた。一昨日は会わなくてもおかしくなかったから……。
駅まで夏帆ちゃんと一緒に歩き、夏帆ちゃんも彼氏がいないことや好きな本のことを聞いた。楽しそうに話す夏帆ちゃんの姿を見て、何故か夏帆ちゃんとは違う自分の好みは言えないでいた。
駅で反対方向の電車に乗る夏帆ちゃんと別れて杏にメールする。
『杏、昨日と今日見かけなかったけど、具合悪くしてない?』
なかなか既読が付かなかったけど、電車を降りて駅の階段を登っている時に返信がきた。
『大丈夫よん。来週は学校行く!』
いつも通り。可愛いスタンプとともにきた返事にホッと胸を撫で下ろした。
『金曜日だから、ま、いいかっ!』
30%に割引されていたお弁当を1つ買ってレジ袋に入れる。最近はレジ袋にもお金がかかるようになったから、いくつか持ち歩くようになった。一人暮らし、それもバイトもしてない身で5円は大きい。毎回支払ってはいられない。
いつもはお弁当を買って夕飯にはしないけど、今日は特別。頑張ったご褒美。アパートにはこの前格安で買ったみかんもあるからデザートつき。動画でも見ながら食べようかな?
和樹に突き飛ばされて以来、あの道は通らなくなった。買い物が無くてもこちら側。店が並んで人通りもある表通りを歩く。少しだけ遠回りになるけど、自分のため。あんな思いは2度としたくない。
和樹は大学で、この1週間で一度しか見かけなかった。昨日、購買に入る時。男友だちと普通におしゃべりしながら歩いてた。こっちに気づいたかどうかは分からない。直ぐに購買に入って奥の飲料コーナーに行ったから。
しばらく経っても入ってこなかったから学食に行ったんだと思ったけれど、少しだけ、ほんの少しだけ怖かった。急いで買い物をして、逃げるようにF棟に行った。
『今度から、誰かに誘われたらのるようにしよ。』
思わずため息が漏れる。自分がこんなに弱いとは思ってなかった。あの時は、殴ってやろうとまで思ったはずなのに……。
そんなことを考えながらアパートへの細道を入ると、男が1人、向かい側の塀に背中をつけて立っていた。
『だれ?』
心臓が1つ肋骨を叩き、思わず立ち止まる。スマホを覗いてたようだった男がこちらに気づいて顔を上げた。
「よう、熱は下がったか?」
「えっ? 杏と? ないよ。彼女は今彼氏いるし。仲がいいってだけで。」
杏とは授業が一緒の時には必ず一緒にいるけど、半分も同じじゃない。お昼もいつも一緒にとるわけじゃないし。気を使い過ぎずに自然と一緒にいたくなる、その関係が心地いいんだ。
そういえばここ2、3日、杏に会ってないかも。あれ? 昨日の授業で会わなかったから、連絡しようと思ってたのを忘れてた。一昨日は会わなくてもおかしくなかったから……。
駅まで夏帆ちゃんと一緒に歩き、夏帆ちゃんも彼氏がいないことや好きな本のことを聞いた。楽しそうに話す夏帆ちゃんの姿を見て、何故か夏帆ちゃんとは違う自分の好みは言えないでいた。
駅で反対方向の電車に乗る夏帆ちゃんと別れて杏にメールする。
『杏、昨日と今日見かけなかったけど、具合悪くしてない?』
なかなか既読が付かなかったけど、電車を降りて駅の階段を登っている時に返信がきた。
『大丈夫よん。来週は学校行く!』
いつも通り。可愛いスタンプとともにきた返事にホッと胸を撫で下ろした。
『金曜日だから、ま、いいかっ!』
30%に割引されていたお弁当を1つ買ってレジ袋に入れる。最近はレジ袋にもお金がかかるようになったから、いくつか持ち歩くようになった。一人暮らし、それもバイトもしてない身で5円は大きい。毎回支払ってはいられない。
いつもはお弁当を買って夕飯にはしないけど、今日は特別。頑張ったご褒美。アパートにはこの前格安で買ったみかんもあるからデザートつき。動画でも見ながら食べようかな?
和樹に突き飛ばされて以来、あの道は通らなくなった。買い物が無くてもこちら側。店が並んで人通りもある表通りを歩く。少しだけ遠回りになるけど、自分のため。あんな思いは2度としたくない。
和樹は大学で、この1週間で一度しか見かけなかった。昨日、購買に入る時。男友だちと普通におしゃべりしながら歩いてた。こっちに気づいたかどうかは分からない。直ぐに購買に入って奥の飲料コーナーに行ったから。
しばらく経っても入ってこなかったから学食に行ったんだと思ったけれど、少しだけ、ほんの少しだけ怖かった。急いで買い物をして、逃げるようにF棟に行った。
『今度から、誰かに誘われたらのるようにしよ。』
思わずため息が漏れる。自分がこんなに弱いとは思ってなかった。あの時は、殴ってやろうとまで思ったはずなのに……。
そんなことを考えながらアパートへの細道を入ると、男が1人、向かい側の塀に背中をつけて立っていた。
『だれ?』
心臓が1つ肋骨を叩き、思わず立ち止まる。スマホを覗いてたようだった男がこちらに気づいて顔を上げた。
「よう、熱は下がったか?」
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