24 / 87
遭遇4 〜侑〜
2
しおりを挟む
何かをジャンパーの内ポケットに入れながら、黙ったまま純が近づいてきた。年上なのは分かっているけど、心の中では「純」でいいや。
「何?」
目の前に立った純に話しかける。うん、自分でも素っ気ないと思う。でもここで声をかけられる意味が分からない。友だちでもないし学生でもない。何なのコイツ?
「飯、買ったのか。」
「うん。」
「どこで食べるんだ。」
目の前で見ると、本当に背が高い。和樹より5㎝ぐらいは上だな。でも、この髪型は無いわ。パーマをかけてるの? それとも天然?
中央より少しだけ右よりから、ウェーブがかった髪が顔を縁取り後ろに流れている。耳の後ろからもところどころ撥ねながら首の後ろにかかっていた。綺麗に整えられた髭。少しだけ目尻が上がった二重の目。太くて整えられた濃い眉。まぁ、顔は整ってると言えなくもないかも。
「F棟。」
「1人?」
「うん。何か用?」
何をこの人は言いたいわけ? 自分でも声が冷たくなっているのが分かる。前から吹いてきた風が微かな煙草の香りを運んできた。
「アンタ、タバコ吸ってたでしょ? 大学《ここ》は敷地内全面禁煙のはずだけど。」
自分の言葉に、純が右手を口元に持ってきた。このしぐさ、この前会った時も見た。
「午後は?」
「ご飯食べたら、図書館行って帰る。」
「…………。」
自分の質問には答えてもらえなかった。それでもいいけど、何か言いたそうに髭を撫でているのをやめてくれない? そう思いながら口を開いた。
「じゃ。」
「送る。」
純との声が重なって、何を言ったのか聞き取れなかった。
「何?」
「送るよ。図書館には必ず行かなくちゃならないのか?」
「必ずってわけじゃないけど……。」
「じゃあ、この前の駅まで送るよ。俺のトラックで食べろ。新商品のジュース奢るから。」
何故純に送ってもらわなくちゃならないのか分からないけど、「新商品のジュース」という言葉にちょっとだけ心が惹かれた。確かこの人と初めて会った時の台車には、お茶のダンボールが積まれてた。
「襲わない?」
一応聞いてみる。下心あるとは思えないけど、知り合ったばかりだしね。
「ば、バカやろっ! お前なんか襲うかっ! 俺は男専門だっ!」
顔を真っ赤にして焦った物言いに笑いが込み上げた。何だか、可愛いとこあんじゃん。
「あはははっ! 声が大きいからっ。じゃお願いしまーーす。車どこ?」
憮然とした純の後ろに続いて歩き出す。手に持ったレジ袋の中の麻婆丼とお茶が触れ合って、カシャカシャと陽気な音を立て始めた。
「何?」
目の前に立った純に話しかける。うん、自分でも素っ気ないと思う。でもここで声をかけられる意味が分からない。友だちでもないし学生でもない。何なのコイツ?
「飯、買ったのか。」
「うん。」
「どこで食べるんだ。」
目の前で見ると、本当に背が高い。和樹より5㎝ぐらいは上だな。でも、この髪型は無いわ。パーマをかけてるの? それとも天然?
中央より少しだけ右よりから、ウェーブがかった髪が顔を縁取り後ろに流れている。耳の後ろからもところどころ撥ねながら首の後ろにかかっていた。綺麗に整えられた髭。少しだけ目尻が上がった二重の目。太くて整えられた濃い眉。まぁ、顔は整ってると言えなくもないかも。
「F棟。」
「1人?」
「うん。何か用?」
何をこの人は言いたいわけ? 自分でも声が冷たくなっているのが分かる。前から吹いてきた風が微かな煙草の香りを運んできた。
「アンタ、タバコ吸ってたでしょ? 大学《ここ》は敷地内全面禁煙のはずだけど。」
自分の言葉に、純が右手を口元に持ってきた。このしぐさ、この前会った時も見た。
「午後は?」
「ご飯食べたら、図書館行って帰る。」
「…………。」
自分の質問には答えてもらえなかった。それでもいいけど、何か言いたそうに髭を撫でているのをやめてくれない? そう思いながら口を開いた。
「じゃ。」
「送る。」
純との声が重なって、何を言ったのか聞き取れなかった。
「何?」
「送るよ。図書館には必ず行かなくちゃならないのか?」
「必ずってわけじゃないけど……。」
「じゃあ、この前の駅まで送るよ。俺のトラックで食べろ。新商品のジュース奢るから。」
何故純に送ってもらわなくちゃならないのか分からないけど、「新商品のジュース」という言葉にちょっとだけ心が惹かれた。確かこの人と初めて会った時の台車には、お茶のダンボールが積まれてた。
「襲わない?」
一応聞いてみる。下心あるとは思えないけど、知り合ったばかりだしね。
「ば、バカやろっ! お前なんか襲うかっ! 俺は男専門だっ!」
顔を真っ赤にして焦った物言いに笑いが込み上げた。何だか、可愛いとこあんじゃん。
「あはははっ! 声が大きいからっ。じゃお願いしまーーす。車どこ?」
憮然とした純の後ろに続いて歩き出す。手に持ったレジ袋の中の麻婆丼とお茶が触れ合って、カシャカシャと陽気な音を立て始めた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる