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オオカミは1人だけ

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「もっとこっちにきて?」
 言葉とともにベッドの中で、トモに身体を引き寄せられた。もう夜の10時過ぎ。土曜日はそんなに仕事をしていなかった3人が、今日は朝食を食べて暫くしてから一緒に出掛けてしまった。


……………………

「頑張って早く帰るから。ちょっとだけ待ってて?」
 支度の整った3人を見送ろうとリビングを出る時に、トモの腕が伸びて抱きしめられた。そのまま顎を捕らえられてキスが落ちてくる。

「おいっ! 全て終わらせてくるんだ。7時は過ぎるぞ!」
 先に廊下に出ていたリョウが顔を覗かせて大声を上げる。それでもトモの優しいキスは続き、息が苦しくなってきた。

「大丈夫。6時には帰る。」
「ふはっ、はっ、はっ……。」

 6時でも7時でもいいから……この状況を何とかして? 僕は息を整えながらも爪先から頭の先までカアっと熱い血が巡るのを感じていた。

 3人が出ていき、頼まれた食器洗いをして洗濯物を干す。まだまだ腰が鈍く痛んでいたから、この様子を3人に見られなくて正解だった。トモの掛け布団のカバーとリョウの部屋のベッドシーツ……。

「本当は自分たちで洗濯するのが正解なんだけど、今日だけ大目に見て? ま、色々と想像してくれてもいいから。」

 ユウの言葉をおもいだして顔が熱くなる。リョウのベッドシーツは薄いピンク色をしていた。そして下着……。ユウは黒、トモは白地に大きな花柄、僕はグレーのボクサー。そして……。

『これがジョックストラップ。』
 初めて見せてもらったリョウの赤い下着は、前だけ隠れるタイプの布面積が非常に少ないものだった。これは誰にも見せたくないというのも分かる。

 ベランダに干すのも躊躇するレベル。知らないうちに、前の通りをご近所さんが歩いてないかと目を配り、洗濯ハンガーの中心に隠すように干してそそくさと終わらせた。

 それからはリビングのソファの周りでダラダラと過ごした。お昼は久しぶりにカップ麺を啜り、テレビを見たりスマホを弄んだりしながら過ごして、午後はいつの間にか寝てしまっていた。

「ただいま。」
 耳元でトモの声が響き、チュッとリップ音が響いて目が覚める。ソファでそのまま寝てしまい、体が少し冷たい。部屋の灯りが点けられていて、外は薄暗くなりつつあった。

「あ、ごめんなさい! 夕飯にうどんを作ろうと思ってたのに!」
 慌てて起きようとしたところをトモに押さえつけられて唇を奪われた。

「大丈夫。もう少し横になってて? まだ6時にもなってない。俺が夕飯を作るし、他のことはあの2人がやってくれる。」

 でも、何もせずにはいられない。それから僕はトモを手伝って4人で食べる最後の夕食の餃子作りを手伝った。

……………………


「俺、ここの家を買おうと思うんだ。」
「えっ? 家を買う?」

 トモに体を引き寄せられ、左手を握り締められた。

「そう。ほら、俺が大学の頃、ここが空き家だったと言ったろ?」
「うん。」

 トモの顔を見上げる。トモは僕の額にキスをしてから天井を見上げて、少しずつ話し始めた。

「多分本当は、社会人だった2人とカズが引っ越したのが年度末だ。そして1番若かった田中っていう子もその半年後にここを出た。そして無人になって暫くして売りに出されることになったらしい。」

 近所に聞いて回って調べた。そう言ってトモが僕の頬にキスをしてきた。

 

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