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教育実習四週目
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「じゃあ、まとめるぞ?」
水曜日の3時間目は僕の教育実習の集大成となる授業の日だった。佐々木先生を始めとして他の学年の数学科の先生2人と教頭先生、校長先生の5人に参観してもらう。そして、放課後にそれぞれの先生方から指導を受けることになっていた。
「結局はどんな式でも(2次式)=0の形にすればいいんだ。そして各項に共通の因数があれば取り除く、そうすれば因数分解ができやすくなる。さ、ノートをまとめて。」
2次方程式の因数分解を使った解き方の応用。昨日佐々木先生が因数分解での解き方を指導していたおかげで、結構スムーズに授業を進めることができた。
「じゃあノートをまとめたら問題を解いて。問い3と問4だ。質問がある時には挙手で。」
後ろで教頭や校長が見ているだけあって、子どもたちはとても静かだ。空気を読んでいるのが素晴らしい。授業序盤の僕の質問にも張り切って挙手をしてくれた。
席の前の方から赤ペンを持って子どもたちが解いたところに丸をつけていく。浅川は記号を間違いやすいけど、ま、こんなものだろう。少しずつ移動しながら、授業中はなるべく考えないようにしていた小池のいない机の所にちかづいてきていた。
『小池……。』
今日の午後には通夜が予定しているはず。昨日は夕飯を食べた後、小池に手紙を書いた。便箋なんて洒落たものはなかったから、昔使っていたレポート用紙を使って封筒は茶封筒。趣も何もあったものではないけれど、心を込めて手紙を書いた。
『大丈夫だ。絶対にその子は乗り越えられる。』
あの時のトモの言葉が僕に勇気をくれた。そしてあれほど乱れていた心が平常に戻ったような気がする。
『2人で部屋に籠って何をしてたの?』
『いやらしい事はしてないよな?』
2人で下に降りてリビングに入っていくと、リョウとユウに揶揄われた。僕たちは何もしていないのに! ただ、話を聞いてもらって慰めてもらって……。
『いや、してたかもな。』
トモの言葉に顔から火が出そうだったけれど、その後はいつも通り4人で普通に食卓を囲んだ。甘いすき焼きのタレで煮込んだ肉や野菜がとでも美味しかった。
放課後、帰る時に佐々木先生に手紙を託そう。今の僕の思いを精一杯綴った手紙。小池が見ないで捨ててしまっても構わない。僕が気にかけていたということさえ伝われば、それで。
気がつくと小池の机を眺めていた。慌てて授業に頭を切り替え、丸付けを再開する。
「先生。」
珍しく手を挙げて僕を呼ぶ加納に近づく。こいつもこの3週間で印象がまるで変わった。ただの煩いだけの子だと思っていたけど、内側は基本的に真面目で頑張り屋。呼ばれたのなら、行って質問に応えてあげなくては。
僕の教育実習、最後の授業がそんな風にして無事に終わっていった。
水曜日の3時間目は僕の教育実習の集大成となる授業の日だった。佐々木先生を始めとして他の学年の数学科の先生2人と教頭先生、校長先生の5人に参観してもらう。そして、放課後にそれぞれの先生方から指導を受けることになっていた。
「結局はどんな式でも(2次式)=0の形にすればいいんだ。そして各項に共通の因数があれば取り除く、そうすれば因数分解ができやすくなる。さ、ノートをまとめて。」
2次方程式の因数分解を使った解き方の応用。昨日佐々木先生が因数分解での解き方を指導していたおかげで、結構スムーズに授業を進めることができた。
「じゃあノートをまとめたら問題を解いて。問い3と問4だ。質問がある時には挙手で。」
後ろで教頭や校長が見ているだけあって、子どもたちはとても静かだ。空気を読んでいるのが素晴らしい。授業序盤の僕の質問にも張り切って挙手をしてくれた。
席の前の方から赤ペンを持って子どもたちが解いたところに丸をつけていく。浅川は記号を間違いやすいけど、ま、こんなものだろう。少しずつ移動しながら、授業中はなるべく考えないようにしていた小池のいない机の所にちかづいてきていた。
『小池……。』
今日の午後には通夜が予定しているはず。昨日は夕飯を食べた後、小池に手紙を書いた。便箋なんて洒落たものはなかったから、昔使っていたレポート用紙を使って封筒は茶封筒。趣も何もあったものではないけれど、心を込めて手紙を書いた。
『大丈夫だ。絶対にその子は乗り越えられる。』
あの時のトモの言葉が僕に勇気をくれた。そしてあれほど乱れていた心が平常に戻ったような気がする。
『2人で部屋に籠って何をしてたの?』
『いやらしい事はしてないよな?』
2人で下に降りてリビングに入っていくと、リョウとユウに揶揄われた。僕たちは何もしていないのに! ただ、話を聞いてもらって慰めてもらって……。
『いや、してたかもな。』
トモの言葉に顔から火が出そうだったけれど、その後はいつも通り4人で普通に食卓を囲んだ。甘いすき焼きのタレで煮込んだ肉や野菜がとでも美味しかった。
放課後、帰る時に佐々木先生に手紙を託そう。今の僕の思いを精一杯綴った手紙。小池が見ないで捨ててしまっても構わない。僕が気にかけていたということさえ伝われば、それで。
気がつくと小池の机を眺めていた。慌てて授業に頭を切り替え、丸付けを再開する。
「先生。」
珍しく手を挙げて僕を呼ぶ加納に近づく。こいつもこの3週間で印象がまるで変わった。ただの煩いだけの子だと思っていたけど、内側は基本的に真面目で頑張り屋。呼ばれたのなら、行って質問に応えてあげなくては。
僕の教育実習、最後の授業がそんな風にして無事に終わっていった。
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