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教育実習三週目
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「カズは好きな奴いるの?」
無言でフレンチトーストを胃に入れていると、リョウが小さな声で話しかけてきた。
「いいえ……今は。教育実習で忙しいですし。」
「ふーーん。ユウやトモはどう?」
ユウ? ……そしてトモ? 何日か前のリョウとユウの絡みやトモの身体。頭に映像が蘇ってきて、顔が赤くなるのが分かった。
「どうって言われても……なんとも。」
僕が気になるのはいつも女の子だった。性対象も女性だし。抜く時にはいつもお気に入りの動画を……。そこでこの前の事を思い出す。リョウとユウ、2人の様子を見て密かに興奮していたこと。僕は、僕も……あれ? あのセッ・スを普通に受け入れてる?
男どうし、僕が誰かを抱くとしたら? 頭の中に思い描こうとして首を振る。いや、朝から何を考えているんだ! もう6時半過ぎ。学校のことに頭を切り替えなくては。
「ごちそうさまでした。リョウさん、今日は洗濯物干し、お願いしてもいいですか?」
黙って頷いたリョウを見て安心し、食器を片付けて歯を磨こうと席を後にした。
「おはよう。」
「あ、わーちゃん!」
「わー先生おはよ。」
3年2組のドアを開けると、子どもたちが何人かまた近づいてきた。もう名前を訂正するのは諦めた。後10日ほどの付き合い。わー先生でいいや。「ちゃん」は頂けないけどな。
「『先生』ってつけろよ。」
浅川をひと睨みして教卓に出席簿を置く。朝の学活はほとんど任せてもらえるようになった。佐々木先生は最後に顔を出す程度。信頼してもらっていると思うとちょっとだけ嬉しい。
「わー先生って、あと授業いつやるの?」
教卓の周りに集まってきた子どもたちの中から三井が声をかけてきた。
「来週に一回かな。昨日はありがとな。三井と菊池に助けられた。」
「わー先生焦りすぎ。僕、ハラハラしてたよ。」
三井に笑顔を見せると、隣の佐藤が話しかけてきた。お前、全然やる気なさそうだったじゃないか! それにその髪、やっぱり茶色に脱色してるだろ? そんな気持ちを押し殺して佐藤に向き合う。
「ごめんごめん。来週の水曜日が最後だから、またみんな頼むな? 佐藤も分かったら手を挙げて答えるんだぞ? さ、もうみんな席に着いて。学活やろう。」
僕の言葉に、周りにいた子が自分の席に戻り始めた。うん、素直でいい子たちだ。思わずほのぼのとして様子を見ていると、小池が動かないでそこに立ったままなのに気付いた。
「ほら、小池。席につけよ。」
「わー先生、先生の教え方は悪くない。俺は……好きだな。」
「そうか。ありがと。また来週頼むな?」
小池はこのクラスで1番数学ができるのに発言が少ない。初めはシャイなのかと思っていたけど、こちらから指名すると普通に答えるし、その中身も的確で助かる。何だか達観して授業を見守っている、そんな感じがするんだ。
でも、最近ジッと見られていることが多くなってきた。何だろう、粗探しをされているとも違う何か……。たまに眼鏡の奥からの視線を感じるとドッキリしてしまうこともある。何を考えているやら、学級委員長くんは。
「ほら、学活始めるぞ? 日直よろしく。」
今日は一日、5つの授業観察だ。細かく記録を取るように言われているから頑張らなくては。そんな事を考えながら、水曜日の一日が始まっていった。
無言でフレンチトーストを胃に入れていると、リョウが小さな声で話しかけてきた。
「いいえ……今は。教育実習で忙しいですし。」
「ふーーん。ユウやトモはどう?」
ユウ? ……そしてトモ? 何日か前のリョウとユウの絡みやトモの身体。頭に映像が蘇ってきて、顔が赤くなるのが分かった。
「どうって言われても……なんとも。」
僕が気になるのはいつも女の子だった。性対象も女性だし。抜く時にはいつもお気に入りの動画を……。そこでこの前の事を思い出す。リョウとユウ、2人の様子を見て密かに興奮していたこと。僕は、僕も……あれ? あのセッ・スを普通に受け入れてる?
男どうし、僕が誰かを抱くとしたら? 頭の中に思い描こうとして首を振る。いや、朝から何を考えているんだ! もう6時半過ぎ。学校のことに頭を切り替えなくては。
「ごちそうさまでした。リョウさん、今日は洗濯物干し、お願いしてもいいですか?」
黙って頷いたリョウを見て安心し、食器を片付けて歯を磨こうと席を後にした。
「おはよう。」
「あ、わーちゃん!」
「わー先生おはよ。」
3年2組のドアを開けると、子どもたちが何人かまた近づいてきた。もう名前を訂正するのは諦めた。後10日ほどの付き合い。わー先生でいいや。「ちゃん」は頂けないけどな。
「『先生』ってつけろよ。」
浅川をひと睨みして教卓に出席簿を置く。朝の学活はほとんど任せてもらえるようになった。佐々木先生は最後に顔を出す程度。信頼してもらっていると思うとちょっとだけ嬉しい。
「わー先生って、あと授業いつやるの?」
教卓の周りに集まってきた子どもたちの中から三井が声をかけてきた。
「来週に一回かな。昨日はありがとな。三井と菊池に助けられた。」
「わー先生焦りすぎ。僕、ハラハラしてたよ。」
三井に笑顔を見せると、隣の佐藤が話しかけてきた。お前、全然やる気なさそうだったじゃないか! それにその髪、やっぱり茶色に脱色してるだろ? そんな気持ちを押し殺して佐藤に向き合う。
「ごめんごめん。来週の水曜日が最後だから、またみんな頼むな? 佐藤も分かったら手を挙げて答えるんだぞ? さ、もうみんな席に着いて。学活やろう。」
僕の言葉に、周りにいた子が自分の席に戻り始めた。うん、素直でいい子たちだ。思わずほのぼのとして様子を見ていると、小池が動かないでそこに立ったままなのに気付いた。
「ほら、小池。席につけよ。」
「わー先生、先生の教え方は悪くない。俺は……好きだな。」
「そうか。ありがと。また来週頼むな?」
小池はこのクラスで1番数学ができるのに発言が少ない。初めはシャイなのかと思っていたけど、こちらから指名すると普通に答えるし、その中身も的確で助かる。何だか達観して授業を見守っている、そんな感じがするんだ。
でも、最近ジッと見られていることが多くなってきた。何だろう、粗探しをされているとも違う何か……。たまに眼鏡の奥からの視線を感じるとドッキリしてしまうこともある。何を考えているやら、学級委員長くんは。
「ほら、学活始めるぞ? 日直よろしく。」
今日は一日、5つの授業観察だ。細かく記録を取るように言われているから頑張らなくては。そんな事を考えながら、水曜日の一日が始まっていった。
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