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教育実習ニ週目
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「……だから√a×√bは、√a×bの計算と同じ。小学校の時にやってきたかけ算に√をつければいいだけだ。簡単だろ?」
初めての授業は意外と楽に進んでいた。まとめまで書かせてあと20分はある。練習問題を解く時間も充分。
「さ、まとめを書いたら周りを囲んで。あ、あれ? 定規は?」
黒板でいつも使用している直線定規がない。常に黒板の下にしまってあるのに。
「左。教師用机の後ろだ。」
教室の後ろから見守ってくれていた佐々木先生の声が飛んできた。あ、あった。佐々木先生は結構だらしがない。机の周りに教材用具を集めておくから、探すのが一苦労だ。
まとめを板書して周りを囲むと、今度はチョークがポッキリ折れて飛んでいった。
「先生、チョーク飛んだ。」
五十嵐《いからし》から声がかかる。クラスのみんながその声に合わせてクスクス笑った。
「分かってる。ちょっと待ってて。」
線を引き終わって後ろを振り返ると、菊池が床からチョークの破片を拾って持ってきてくれた。
「あ、ありがと。そんなに飛んだか?」
菊池の席はちょうど教室の真ん中だ。4メートルは離れているぞ?
「でーーっかい弧を描いて。」
菊池の言葉にクラス中が大爆笑した。ちょっぴり恥ずかしい。でも、ここで怯んではいられない。練習問題をさせなくては。
「ほらほら、もう終わり。練習問題を解くぞ。教科書の問1から問3まで合計22個の計算がある。よく問題を読むこと。特に指定がなければ答えはa√bの形にするんだ。」
僕の言葉に、最後まで笑っていた加納も教科書を開いて問題を解き始めた。このクラスの良いところは、基本やらなければならない事を疎かにしないことだ。1番心配な浅川のところに行ってみる。うん、大丈夫そう。基本的なかけ算はできている。
「先生。」
他の子どもたちの様子を見ていた時に、窓際から声がかかった。小池だ。学級委員長くんはこのぐらいの問題は朝飯前だと思うけどな?
「先生、ここの問題を教えてもらっていいですか?」
近くに行ってみると、とっくに問題を解き終わり問題集に手を付けていた。近似値や有理化の問題に入っていたらしい。そこは明日の授業内容だ。でも既に今日の部分の問題は解き終わってる。明日の内容だから、と突っぱねることもできるけど、頑張っている奴には応えてやりたい。
「明日やるとこだけど、ちょっといいか? 鉛筆貸して。」
チョークまみれの手で貸してというのは気が引けたけど、持ってないものはしょうがない。小池の右手から鉛筆を奪うと、小池の手がさっと引っ込められた。
「……分かるか? 結局今日の応用。かけ算の形にして、元の値を当てはめていくんだ。」
説明を終えて小池を見ると、ジッと見つめられていた事に気づいた。眼鏡の奥からジッと……。僕は何故かその視線に耐えることができなかった。
「じゃ、頑張って。おい、みんなできたか? 答え合わせするぞ!」
動揺を隠すように全員に向かって大声を出し、「もう少し。」「まだーー!」という声を無視して答え合わせをするべく、僕は教卓に戻った。
初めての授業は意外と楽に進んでいた。まとめまで書かせてあと20分はある。練習問題を解く時間も充分。
「さ、まとめを書いたら周りを囲んで。あ、あれ? 定規は?」
黒板でいつも使用している直線定規がない。常に黒板の下にしまってあるのに。
「左。教師用机の後ろだ。」
教室の後ろから見守ってくれていた佐々木先生の声が飛んできた。あ、あった。佐々木先生は結構だらしがない。机の周りに教材用具を集めておくから、探すのが一苦労だ。
まとめを板書して周りを囲むと、今度はチョークがポッキリ折れて飛んでいった。
「先生、チョーク飛んだ。」
五十嵐《いからし》から声がかかる。クラスのみんながその声に合わせてクスクス笑った。
「分かってる。ちょっと待ってて。」
線を引き終わって後ろを振り返ると、菊池が床からチョークの破片を拾って持ってきてくれた。
「あ、ありがと。そんなに飛んだか?」
菊池の席はちょうど教室の真ん中だ。4メートルは離れているぞ?
「でーーっかい弧を描いて。」
菊池の言葉にクラス中が大爆笑した。ちょっぴり恥ずかしい。でも、ここで怯んではいられない。練習問題をさせなくては。
「ほらほら、もう終わり。練習問題を解くぞ。教科書の問1から問3まで合計22個の計算がある。よく問題を読むこと。特に指定がなければ答えはa√bの形にするんだ。」
僕の言葉に、最後まで笑っていた加納も教科書を開いて問題を解き始めた。このクラスの良いところは、基本やらなければならない事を疎かにしないことだ。1番心配な浅川のところに行ってみる。うん、大丈夫そう。基本的なかけ算はできている。
「先生。」
他の子どもたちの様子を見ていた時に、窓際から声がかかった。小池だ。学級委員長くんはこのぐらいの問題は朝飯前だと思うけどな?
「先生、ここの問題を教えてもらっていいですか?」
近くに行ってみると、とっくに問題を解き終わり問題集に手を付けていた。近似値や有理化の問題に入っていたらしい。そこは明日の授業内容だ。でも既に今日の部分の問題は解き終わってる。明日の内容だから、と突っぱねることもできるけど、頑張っている奴には応えてやりたい。
「明日やるとこだけど、ちょっといいか? 鉛筆貸して。」
チョークまみれの手で貸してというのは気が引けたけど、持ってないものはしょうがない。小池の右手から鉛筆を奪うと、小池の手がさっと引っ込められた。
「……分かるか? 結局今日の応用。かけ算の形にして、元の値を当てはめていくんだ。」
説明を終えて小池を見ると、ジッと見つめられていた事に気づいた。眼鏡の奥からジッと……。僕は何故かその視線に耐えることができなかった。
「じゃ、頑張って。おい、みんなできたか? 答え合わせするぞ!」
動揺を隠すように全員に向かって大声を出し、「もう少し。」「まだーー!」という声を無視して答え合わせをするべく、僕は教卓に戻った。
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