21 / 104
教育実習ニ週目
1
しおりを挟む
「わーちゃん、彼女いる?」
「ほらほら、いいから席に着きなよ。短学活始めるぞ。」
朝、3年2組の教室に入ると女の子たちに取り囲まれた。話し始めたのはやっぱり浅川。この子、何だか苦手なんだって。
「えぇっ! 教えてくれてもいいじゃん。」
「いるんでしょ!?」
「あ、別れたばっかりで今寂しいとこ?」
「ね、ねっ、この中では誰が好み?」
長内、田口、渡邊と一斉に話し始める。この子たちの相手をしていたら、学活が進まない。せっかく佐々木先生に任されたのに。
「ほら、どうだっていいだろ? 席に座って!」
少しだけ強い口調で言ってみたら、「えーー、つまんない。」などと言いながらも素直に席に着いてくれた。うん、たまには威厳も大事だ。威厳があったかどうかは知らないけど。
「今日の数学は、因数分解のテストだからな。分かってたよな?」
「えぇーー!」
佐々木先生に言っとけと頼まれた予定を告げる。金曜日の数学の時間に、佐々木先生が勉強しとけって言ってただろ? この土日に復習してこなかったお前たちが悪いんだ。溜飲が下がるような感覚を覚えて、笑顔になった。子どもたちって面白いな!
出席を取って今日の予定と授業の準備物を確認させ、10分弱で学活を終える。あちこちから見えてくる男子のニヤニヤ笑いは無視をした。1番ニヤついているのは加納。くそっ。あとできっちり言わなくてはならない。部活の時にでも話をするかと考えながら、教室を後にした。
2時間目の2組の数学の時間はずっと静かだった。佐々木先生は教卓の前で1時間目にやった他のクラスのテストの採点をしている。僕は子どもたちの机の間を見て回りながら、どのくらいできているかを確認していた。
『加納は計算は速いけど、間違いも多いな。』
基本はできているのに、エックスに2乗を書き忘れたり、+と-を間違えたりしている。浅川は……全然ダメだ。授業をしっかりと聞いていないな?
子どもたちの中を回っていると、やはり小池が1番できるようだった。まだ終了20分前なのに、最後の応用問題に入っている。間違いは……うん、2つあるけど、見直してすぐに気がつくレベルだ。じっと小池の答案を見ていると、ふと小池が顔を上げた。
『!』
あの時と同じような目。土曜日にアスレチックの上で見たような。眼鏡の奥からじっと見られて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
「コホン。」
咳払いをしてその場を離れる。集中しろよという意味も込めて。うん、僕はなかなかいい先生だ。自分に満足をしながら、隣の三井の解答を見に向かった。
「ほらほら、いいから席に着きなよ。短学活始めるぞ。」
朝、3年2組の教室に入ると女の子たちに取り囲まれた。話し始めたのはやっぱり浅川。この子、何だか苦手なんだって。
「えぇっ! 教えてくれてもいいじゃん。」
「いるんでしょ!?」
「あ、別れたばっかりで今寂しいとこ?」
「ね、ねっ、この中では誰が好み?」
長内、田口、渡邊と一斉に話し始める。この子たちの相手をしていたら、学活が進まない。せっかく佐々木先生に任されたのに。
「ほら、どうだっていいだろ? 席に座って!」
少しだけ強い口調で言ってみたら、「えーー、つまんない。」などと言いながらも素直に席に着いてくれた。うん、たまには威厳も大事だ。威厳があったかどうかは知らないけど。
「今日の数学は、因数分解のテストだからな。分かってたよな?」
「えぇーー!」
佐々木先生に言っとけと頼まれた予定を告げる。金曜日の数学の時間に、佐々木先生が勉強しとけって言ってただろ? この土日に復習してこなかったお前たちが悪いんだ。溜飲が下がるような感覚を覚えて、笑顔になった。子どもたちって面白いな!
出席を取って今日の予定と授業の準備物を確認させ、10分弱で学活を終える。あちこちから見えてくる男子のニヤニヤ笑いは無視をした。1番ニヤついているのは加納。くそっ。あとできっちり言わなくてはならない。部活の時にでも話をするかと考えながら、教室を後にした。
2時間目の2組の数学の時間はずっと静かだった。佐々木先生は教卓の前で1時間目にやった他のクラスのテストの採点をしている。僕は子どもたちの机の間を見て回りながら、どのくらいできているかを確認していた。
『加納は計算は速いけど、間違いも多いな。』
基本はできているのに、エックスに2乗を書き忘れたり、+と-を間違えたりしている。浅川は……全然ダメだ。授業をしっかりと聞いていないな?
子どもたちの中を回っていると、やはり小池が1番できるようだった。まだ終了20分前なのに、最後の応用問題に入っている。間違いは……うん、2つあるけど、見直してすぐに気がつくレベルだ。じっと小池の答案を見ていると、ふと小池が顔を上げた。
『!』
あの時と同じような目。土曜日にアスレチックの上で見たような。眼鏡の奥からじっと見られて、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
「コホン。」
咳払いをしてその場を離れる。集中しろよという意味も込めて。うん、僕はなかなかいい先生だ。自分に満足をしながら、隣の三井の解答を見に向かった。
0
お気に入りに追加
32
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる