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教育実習一週目

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 朝日が遮光カーテンの隙間から漏れてきているのが分かる。今何時だろう? ロフトに収まったローチェストの上からスマホを取って時間を確かめる。まだ5時半。せっかくの日曜日なのに、何で目が覚めるかな。布団を頭の上に引き上げて、目を瞑りながら昨日のことを思い出していた。


……………………

「わー先生、顔出して!」
「遊ぼうよっ!」
「おーーいっ!」

 外から聞こえる声を頑なに無視して問題を解き続けていた。全ての問題を解き終わった頃には外の喧騒も止まり、そうっとカーテンの隙間から覗くと、アスレチックには誰もいなかった。ホッとしてコーヒーのマグを持って下に降りる。キッチンに降りると、ユウとトモがリビングのソファに向かい合わせに座り、テレビを見ていた。

「あ、降りてきたね。いやあ、可愛かったなあの子たち。」
「ありがとうございました。大丈夫でしたか?」
 キッチンでマグを洗いながら声をかけると、ユウが笑いながらこちらに向き直った。

「うん平気。仕事をしていて忙しいから、って言っておいたよ。り……1番小さかった子が1番元気だったな。いやあ、みんな可愛かった。な、トモ?」
「……俺は会ってない。」
 テーブルに置いてあるお茶のコップを取り上げながら、トモが呟いた。

「またまたぁ、シャワーを浴びるって籠ってたけど、チェックはしてたんだろ?」
「……。」
 2人ともお茶を飲んでたみたいだ。僕もお茶を飲みたい。冷蔵庫からペットボトルを取り出してコップと一緒に持つ。ソファに近づくと、ユウがペットボトルを受け取ってくれた。ユウの隣に腰を下ろす。

「サンキュー。もうちょっと飲みたかったところだ。はい、注いであげる。」
 ユウが僕のコップにお茶を注ぎ、トモと自分のコップにも注ぎたしてくれた。

「トモさんはシャワーを浴びていたんですか?」
「ああ……まあ。」
「あの中で、数学が1番できる子って誰なの?」
 何とも歯切れの悪いトモの返答を不思議に思う間も無く、ユウが傍から声をかけてきた。あれ? 僕が数学の先生を目指しているなんて言ったことがあったっけ?

「うちのクラス……3年2組の担任についているんですけど、あのクラスでは小池でしょうね。あと菊池かな? あ、菊池はいなかったかな?」
 菊池は確かサッカー部だ。真っ黒に日焼けをした整った顔が目に浮かんできた。

「小池ってどんな子? さっきいたかなあ。」
「眼鏡をかけていた子です。あの中では背は高い方かな? 僕よりは小さいんですけどね。」

 そうだ。たぶん小池が最初に僕を見つけたんだ。あの時にすぐに窓から離れていれば、加納になんか見つからなかったのに。月曜日には加納が絡んでくるだろう事が手にとるように分かる。もう来るな、ときっぱり言わなくては。

 そんな思考に陥っていた僕は、憮然とした様子のトモや心底楽しそうな笑顔を見せるユウの様子に全く気がつかなかった。

……………………


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