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教育実習一週目
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「おはよう。今日は早いな。」
階段を降りてくる足音が聞こえて、洗面所に入る音がしたと思ったら、トモがリビングに入ってきた。薄い水色の線が入っているワイシャツとグレーのスラックス。持っていたネクタイをポイッとソファに投げ出して、黒のエプロンを身につけてキッチンに回り込んだ。
「たまには、僕が皆さんに朝食を披露しようと思いまして。えっと……塩と胡椒。」
もう5時半。玉ねぎとピーマン、ベーコンを炒めていた僕は塩胡椒を探しながら上の空で返事をした。昨日買ってあった8枚切りの食パンを見て思いついた。今日は僕がみんなにピザトーストを作るんだ。5時に目覚ましをかけて早起きを決行した。
「はい。何を作ってる?」
シンクの左端の調味料入れから塩胡椒を取り出して、トモが渡してくれた。
「ピザトーストをって……えっ? トモさん、眼鏡を掛けてたんですか?」
トモが銀縁の眼鏡を掛けていた。レンズが横長でカッコいい。凄く知的に見える。
「普段はコンタクト。今はこっちで物音がしたから気になって……。」
無表情で言い切るわりに、少しだけ頬が赤くなった気がした。何だか面白い。
「似合いますよ、眼鏡。カッコいいです。」
「ほら、後は俺がやる。洗濯物を干してきてくれ。今日は晴れる。」
塩胡椒を振ったところでフライパンと菜箸を奪われた。素直にキッチンを明け渡す。僕がやるよりトモに任せた方が断然早い。
「お願いします。」
僕は、タイマーで洗い上がっているはずの洗濯物を取りに洗面所に向かった。
洗濯カゴに衣類を取り出しながら考える。役割分担をしてから3日が経った。洗濯物は、洗剤とタイマーを仕掛けておくのが最後に風呂に入った者。干すのは時間に余裕がある人。声を掛け合いながらお互いにお願いをする。
『僕の下着は自分で洗うっ!』
あの時のリョウの慌てぶり。どんな下着を身につけているやら。自然と笑みが溢れた。カゴを抱えて2階のベランダへ。廊下から行けるけど、ユウの部屋の真ん前だ。音に気をつけないと。たぶんまだ寝てるから。
『みんな、ボクサーだよなあ。』
リョウ以外の3人はボクサーパンツ。僕より少し大きいボクサーはトモとユウのだ。カルバン・クラインは僕でもわかるブランドだけど、こっちの派手なのは何だろう? 下着はユニクロでグレー一択の僕からしてみると、他の3人は下着にお金をかけているのがわかる。
『黒のカルバンは……トモ? 派手なのは……。』
想像しそうになって慌てて首を振る。変態かっ! 自分に突っ込みながら、残りの洗濯物を干すことに集中した。
階段を降りてくる足音が聞こえて、洗面所に入る音がしたと思ったら、トモがリビングに入ってきた。薄い水色の線が入っているワイシャツとグレーのスラックス。持っていたネクタイをポイッとソファに投げ出して、黒のエプロンを身につけてキッチンに回り込んだ。
「たまには、僕が皆さんに朝食を披露しようと思いまして。えっと……塩と胡椒。」
もう5時半。玉ねぎとピーマン、ベーコンを炒めていた僕は塩胡椒を探しながら上の空で返事をした。昨日買ってあった8枚切りの食パンを見て思いついた。今日は僕がみんなにピザトーストを作るんだ。5時に目覚ましをかけて早起きを決行した。
「はい。何を作ってる?」
シンクの左端の調味料入れから塩胡椒を取り出して、トモが渡してくれた。
「ピザトーストをって……えっ? トモさん、眼鏡を掛けてたんですか?」
トモが銀縁の眼鏡を掛けていた。レンズが横長でカッコいい。凄く知的に見える。
「普段はコンタクト。今はこっちで物音がしたから気になって……。」
無表情で言い切るわりに、少しだけ頬が赤くなった気がした。何だか面白い。
「似合いますよ、眼鏡。カッコいいです。」
「ほら、後は俺がやる。洗濯物を干してきてくれ。今日は晴れる。」
塩胡椒を振ったところでフライパンと菜箸を奪われた。素直にキッチンを明け渡す。僕がやるよりトモに任せた方が断然早い。
「お願いします。」
僕は、タイマーで洗い上がっているはずの洗濯物を取りに洗面所に向かった。
洗濯カゴに衣類を取り出しながら考える。役割分担をしてから3日が経った。洗濯物は、洗剤とタイマーを仕掛けておくのが最後に風呂に入った者。干すのは時間に余裕がある人。声を掛け合いながらお互いにお願いをする。
『僕の下着は自分で洗うっ!』
あの時のリョウの慌てぶり。どんな下着を身につけているやら。自然と笑みが溢れた。カゴを抱えて2階のベランダへ。廊下から行けるけど、ユウの部屋の真ん前だ。音に気をつけないと。たぶんまだ寝てるから。
『みんな、ボクサーだよなあ。』
リョウ以外の3人はボクサーパンツ。僕より少し大きいボクサーはトモとユウのだ。カルバン・クラインは僕でもわかるブランドだけど、こっちの派手なのは何だろう? 下着はユニクロでグレー一択の僕からしてみると、他の3人は下着にお金をかけているのがわかる。
『黒のカルバンは……トモ? 派手なのは……。』
想像しそうになって慌てて首を振る。変態かっ! 自分に突っ込みながら、残りの洗濯物を干すことに集中した。
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