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教育実習一週目
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「わー先生、出席取るの? 大丈夫?」
「わーじゃない。和《かず》だっ! ほら、席につきなよ。」
今日は教育実習2日目。「朝の時間、少し遅れるから出席取ってて。」と指導教官の佐々木先生に頼まれて、出席簿を片手に3年2組の教室に入った。教卓の周りに集まってた子どもたちに席につくように声をかけると、一番派手な容姿をした女の子が最後までグズグズして声をかけてきた。
「出席をとるぞ。」
まだ子どもの名前は覚えてない。昨日は朝と帰りのホームルームと、授業を1時間だけ見学させてもらったけど、それで覚えようだなんて無理な話だ。今日は出席取りを任せてもらってラッキーかも。名前と顔が確認できる。
「浅川玲美。」
「はい。」
1番派手な子は浅川……。この子は昨日も絡んできた。馴れ馴れしいんだって。黙っていれば美人なのにな。
「五十嵐剛。」
「センセ、いからし。」
「へっ?」
「『いからし』つよしだって。」
「いからし」? 自分と同じ苗字だから「いがらし」だとばかり思い込んでた。名前って……面白いな!
俄然やる気が湧いてきて、元気に次の名前を呼んだ。
「長内沙那。」
「はい。」
黒髪ストレートの女の子。校則に従って長い髪を1つに束ねているけど、相当な長さだ。腰のあたりまであるんじゃないか?
「加納遼太郎。」
「はい。」
『うげっ!』
体を横にして生意気そうな視線をよこした奴。チビで色白で、目が大きい。てっきり女の子だと思って話しかけたのがいけなかったらしい。昨日の心労はコイツのせいだ。
「菊池佑介。」
「はい。」
へぇ、菊池佑介っていうんだ。あまり目立たない。全然頭に入ってなかった顔。整った顔立ちしているけど、長い髪が邪魔してる。色が黒い。野球部か……サッカー部?
「小池基治。」
「はい。」
あ、こいつは覚えてる。学級委員長をやってる奴。佐々木先生のとこに来て話をしていた。メガネをかけて、結構背が高いけど姿勢が悪い。ちょっぴり暗そうな奴だ。
「佐藤俊輔。」
「はい。」
色白の細い奴。このクラスで1番髪が茶色い。……染めてないだろうな!?
それから淡々と出席を取り、最後の28番、「渡邊優里」まで無事に出席を取ることができた。
「わー先生、みんなの名前覚えた?」
担任の佐々木先生が登場して無事に朝の短学活が終わると、ニヤニヤしながらら1人の男の子がそばに寄ってきた。昨日ずっと睨まれていたような気がした奴。僕の心労の中心だった。
「『かず』だから。そんなにいっぺんに覚えられるわけないだろ? あ、でも君の名前は覚えた。……えっと、りょう、遼太郎だ!」
「正解。苗字は?」
「え? か、か、加藤……?」
覚えたはずの苗字がなかなか出てこず、声が尻すぼみに小さくなっていった。
「違うよ。」
「えーー、ちょっと待って。思い出す。」
「加納です。先生。」
必死に脳みそを動かそうとした瞬間、横からちょっぴり低い声が聞こえた。学級委員長、小池だ。
「基治、バラすな!」
加納が小池の脇腹に拳を入れようとするのをスッとかわして、小池がこちらを見た。
「先生、ここにいていいんですか?」
「あっ!」
1時間めは2年生を担当している吉村先生に数学の授業を見せてもらうんだった! 慌てた僕は、「ありがとう。」と礼だけをして教室を飛び出し、職員室へ向かった。
「わーじゃない。和《かず》だっ! ほら、席につきなよ。」
今日は教育実習2日目。「朝の時間、少し遅れるから出席取ってて。」と指導教官の佐々木先生に頼まれて、出席簿を片手に3年2組の教室に入った。教卓の周りに集まってた子どもたちに席につくように声をかけると、一番派手な容姿をした女の子が最後までグズグズして声をかけてきた。
「出席をとるぞ。」
まだ子どもの名前は覚えてない。昨日は朝と帰りのホームルームと、授業を1時間だけ見学させてもらったけど、それで覚えようだなんて無理な話だ。今日は出席取りを任せてもらってラッキーかも。名前と顔が確認できる。
「浅川玲美。」
「はい。」
1番派手な子は浅川……。この子は昨日も絡んできた。馴れ馴れしいんだって。黙っていれば美人なのにな。
「五十嵐剛。」
「センセ、いからし。」
「へっ?」
「『いからし』つよしだって。」
「いからし」? 自分と同じ苗字だから「いがらし」だとばかり思い込んでた。名前って……面白いな!
俄然やる気が湧いてきて、元気に次の名前を呼んだ。
「長内沙那。」
「はい。」
黒髪ストレートの女の子。校則に従って長い髪を1つに束ねているけど、相当な長さだ。腰のあたりまであるんじゃないか?
「加納遼太郎。」
「はい。」
『うげっ!』
体を横にして生意気そうな視線をよこした奴。チビで色白で、目が大きい。てっきり女の子だと思って話しかけたのがいけなかったらしい。昨日の心労はコイツのせいだ。
「菊池佑介。」
「はい。」
へぇ、菊池佑介っていうんだ。あまり目立たない。全然頭に入ってなかった顔。整った顔立ちしているけど、長い髪が邪魔してる。色が黒い。野球部か……サッカー部?
「小池基治。」
「はい。」
あ、こいつは覚えてる。学級委員長をやってる奴。佐々木先生のとこに来て話をしていた。メガネをかけて、結構背が高いけど姿勢が悪い。ちょっぴり暗そうな奴だ。
「佐藤俊輔。」
「はい。」
色白の細い奴。このクラスで1番髪が茶色い。……染めてないだろうな!?
それから淡々と出席を取り、最後の28番、「渡邊優里」まで無事に出席を取ることができた。
「わー先生、みんなの名前覚えた?」
担任の佐々木先生が登場して無事に朝の短学活が終わると、ニヤニヤしながらら1人の男の子がそばに寄ってきた。昨日ずっと睨まれていたような気がした奴。僕の心労の中心だった。
「『かず』だから。そんなにいっぺんに覚えられるわけないだろ? あ、でも君の名前は覚えた。……えっと、りょう、遼太郎だ!」
「正解。苗字は?」
「え? か、か、加藤……?」
覚えたはずの苗字がなかなか出てこず、声が尻すぼみに小さくなっていった。
「違うよ。」
「えーー、ちょっと待って。思い出す。」
「加納です。先生。」
必死に脳みそを動かそうとした瞬間、横からちょっぴり低い声が聞こえた。学級委員長、小池だ。
「基治、バラすな!」
加納が小池の脇腹に拳を入れようとするのをスッとかわして、小池がこちらを見た。
「先生、ここにいていいんですか?」
「あっ!」
1時間めは2年生を担当している吉村先生に数学の授業を見せてもらうんだった! 慌てた僕は、「ありがとう。」と礼だけをして教室を飛び出し、職員室へ向かった。
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