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3人のオオカミ

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「それは、田中さん……から聞いたんだよ。カズくんは今日から教育実習開始だろ?」
 茶髪のイケメンが爽やかな笑顔で言ってきた。それにつられて僕も顔を前に向けた。

「あの、3人はお知り合いなんですか? 友達とか。あの……お年を聞いても?」
「カズくんよりは年上だね。ここではトモが一番生まれが早い。5月生まれだ。次がリョウ、7月生まれ。僕が1番若いかな。11月だしね。けど、背の高さは1番。」
 
 同い年? 田中くんと話をしたんだ。いつ? 昨日は何故田中くんは話してくれなかったんだろう? 僕がそんなに余裕のないように見えたのかな? そんな事を考えながら、黒髪のトモが取り分けてくれたサラダの皿を手に取った。

『うっ……。』

 サニーレタスの上に千切りキャベツ。千切りにしたにんじんと賽の目に切ったハムはいいとして……飾りにつけたようなブロッコリーとミニトマト。僕はトマトが苦手だった。食べないとダメだろうか? 小さい頃、美味しそうだと丸ごと口に入れたミニトマトの予想を外れた酸っぱさに苦手になって、あれからほとんど口にしていない。匂いも……トマト特有の青臭い匂いも苦手だった。

「ドレッシングいただきます。」
 市販のフレンチドレッシングと青じそドレッシングが置いてあり、僕は青じそドレッシングを手に取った。トマトの上にも垂らす。……食べないとダメ? それとも苦手だって言う?

 どうしても3つのトマトには手をつけられずに、他の野菜を食べ進める。トマトの他には苦手はない。半分ほど食べたところで、目の前の茶髪の男が手を伸ばしてきた。

「トマトは嫌い?」
 サラダの中に埋もれかけたトマトを摘んで、口の中に入れた。
「あっ!」
「お前っ!」
 俺の声と隣の男の声が重なる。茶髪の男が「ハハッ。」と笑い声を上げた。

「トマト苦手だったんだ? なかなか面白い発見!」
 茶髪の男の笑いに釣られたように微笑みながら、中性的な男が自分のトマトを口に入れた。
「こんなに美味しいのに。」

「べ、べ、別に。嫌いじゃありません。食べられます。」
 俺は残りのトマトを全部口に入れた。
「うえっ……。」
 意地を張ってもトマトはトマト。酸味が口の中に広がって、とろっとした水分が舌を濡らした。鼻で息をしないようにしながら、数回噛んだだけのトマトをごくんと飲み込んだ。トマトが丸ごと食道を通っているような気がする。

「頑張ったな。」
 隣から手を伸ばしてきたトモに頭をワシャワシャ撫でられた。茶髪のユウも、中世的なリョウも笑っている。周りを見渡して、顔が熱くなるのを感じて、カレーが気になるかのように、皿の中を掻き回した。


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