俺が送ったメールは瞬時に既読になる。けど、アイツからの返事は一切ないんだ。……俺はいつまで待っていればいい？ 〜明日のその先〜

２：誰もいない

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「望っ！　昼飯一緒に食べようぜ。」
後ろから肩に腕を回して来たのは……伸一だ。俺は、講義があったＥ棟から学食に向けて歩いている所だった。

「ああ、いいよ。みんなは？」
文学部のいつものメンバーはそれぞれ用事があるようで、授業の後すぐに別れた。伸一も一人みたいだ。

「何だかサークルの集まりだって散ってったな。文化祭の相談じゃね？　望は？　今年も模擬店？」
「いや……最近行ってなくて。」
２年になって、いや、去年の文化祭からサークルにあまり顔を出していなかった。何だかバレーボールをしたいと思わない。五十嵐さんや福島さんはたまに校内で会うけど、挨拶はしても、「サークルに来いよ。」なんて言われないし……。もうすぐ１１月。一年近く経とうとしていた。

「あれから？」
「んー、ま、そうかな。それだけじゃないけどな。」
伸一の言いたい事は分かる。あの時助けてくれたのは、他でもないこの伸一と雅人だ。あれから良太は普通の大学生活を送っていると感じる。前ほど頻繁じゃないけど、学食でみんなで昼をとることも増えてきた。俺も普通に接しないと、とは思うけど……。

「何だ？　元気ないな？」
「いや、元気だよ？」
このモヤモヤとした原因は他にある。田崎さんと連絡がつかないんだ。

『メールも既読にならないし、電話も繋がらないって……。』
お父さんの会社の手伝いって言ってた。でも、携帯ぐらい持って行くだろ、普通。昨日はメールじゃなくて、電話を入れてみた。けれど、いくら呼び出しても繋がらない。

学食で、いつものように唐揚げを選ぼうとして……やめた。今日は魚にする。
「望、珍しいな。」
「……まぁね。」
伸一は唐揚げ。一緒にお盆を持って空いている席に向かった。

「なに何？　この伸一お兄さんに話しなさい。どうした？」
伸一に話しても分かりっこない。田崎さんの事は知らないだろうし、駿也の事だって覚えてないし……。いや、待てよ？　久しぶりに聞いたら思い出したりするのか？

「な、伸一。駿也って……覚えてる？」
「……。」
伸一が無言でこちらをジッと見てきた。な、何？　何この間……怖いんですけど。

「なぁ……瞳美ちゃんって、いただろ？」
かなりの間があいて伸一の口から出てきた言葉は、意外な人物の名前だった。
「あ？　うん。２年の時に一緒だった子だろ？」
忘れっこない。高２の時の欅葉祭で、熱を出した瞳美ちゃんの代わりに白雪姫になったんだ。瞳美ちゃんは人前では滅多に声を出さない、けど暗いというわけじゃなくて……不思議な子だった。

「夏休みに瞳美ちゃんに会ってさ、お茶したわけ。あの瞳美ちゃんが普通に声を出しててさ。びっくりしたんだけど……。」
そこから、この夏に伸一が瞳美ちゃんと会った時の話が始まった。