未来も過去も ーコウイチー

もこ

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君を忘れる

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長い時間、親父と話したが、結局結論が出ぬまま所長室を後にした。すぐに同じフロアにある俺の研究室に入り、長いこと引き籠った。退勤時間が大分過ぎて、ようやく帰る気持ちになる。

『部屋を片付けよう…。』
食欲がない…。眠くなるまで引っ越しができるように片付けをすることに決め、退勤メールを送ると、研究室を後にした。

管理人室へ戻ると、店のバックヤードから持ってきたダンボールに本棚の本を詰めた。もういらないものもあるが、選別も面倒だ。確認することなくダンボールに詰め込む。5つのダンボールが満杯になり、部屋の隅に積み上がった。

『…』

見た目が空になった本棚の下、ベッドに隠れる部分に手を伸ばす。一冊のアルバムを手に取った。奏が巌城家に来た時に撮りためた写真…。1番最後のページを開く…。奏が顔を真っ赤にして手で覆っている写真…。俺が関係をぶち壊す直前の…平和だった…最後の…写真。

枕を拳で打ち付ける。…後悔しても遅い。無かったことには出来ない…。俺はアルバムを布団に放り投げ、管理人室を後にした。

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