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もう1つの本屋
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「オイ、誰か代わりに行ってくれ。」
バックヤードでオーナーの太田さんの声が響いた。
「えっ? 僕ですか?」
オーナーの視線が僕を捉えている。今から昼休憩を取ろうとしてたんだけど……。
オーナーの隣にいた池谷さんが代わりに口を開いた。
「しょうがないだろ。社長は腰を痛めているんだ。小寺なら……ああ、あまり力はなさそうだな……。」
「行きます。……で? どこに?」
体は小さくても、結構力はある方だ。池谷さんの言葉にちょっとだけ頭に血が昇った。
「FOUR。」
この街最大のショッピングモール「FOUR」。3階にこの太田書店の姉妹店「OHTA」が入っている。もちろんここの規模には足元にも及ばないけど、結構な売り上げがあるという噂だ。
「『FOUR』ですか……。」
池谷さんの話だと、本来ならモールの方に納入すべきコミックが全部こちらにきてしまったのだとか。発売日は明日だ。納品のチェックをしたり、ビニールを巻いたり、やるべき事は沢山ある。
「分かりました。行きましょう。」
昼はこれが済むまでお預けだ。俺は一緒にレジを打っていたしおりんに、出かけてくる旨を告げて、山ほどある段ボールを運ぶために台車を取りに向かった。
「お前さ、結構、史織さんと仲がいいよな。」
「えっ? ええ、まぁ……。」
大量の段ボールを会社のバンに詰め込み、助手席に収まった。運転は池谷さん。こうやって横顔を見ると、意外と男前だ。
「付き合ってるのか?」
「はい? いやいや、付き合ってはいませんよ。」
たまに招く誤解。世間一般には男と女の友情は成立しにくいと思われている。じゃあ、僕たちは? これを友情といわずに何て呼ぶのだろう。
「史織さんは素敵ですけど。」
「……。」
やっぱり……。池谷さんはしおりんに気があるんだ。改めて彼を眺める。短く刈り上げた後ろと両サイド。トップは軽くパーマをかけて整えている。笑った時に目の傍にシワができて、真面目な顔とのギャップが凄い。
『うん、いいんじゃないか?』
僕より10㎝以上は違うけど、大男というわけじゃない。けれども背の高い男の人を探している僕じゃないんだから……。しおりんとはお似合いだ。
『あのこういちっていう人、あれから《J》に来ないな……。』
あの夜から半年以上が過ぎている。僕は相変わらず週に2、3回は通っているけど、まだ「こういちさん」には会えていなかった。
『別に会いたいと思っているわけじゃないけどさ。』
ちょうど、ショッピングセンターの裏にある商品の搬入口に着いた。僕は手続きをするのを買って出て、車から降りた。
バックヤードでオーナーの太田さんの声が響いた。
「えっ? 僕ですか?」
オーナーの視線が僕を捉えている。今から昼休憩を取ろうとしてたんだけど……。
オーナーの隣にいた池谷さんが代わりに口を開いた。
「しょうがないだろ。社長は腰を痛めているんだ。小寺なら……ああ、あまり力はなさそうだな……。」
「行きます。……で? どこに?」
体は小さくても、結構力はある方だ。池谷さんの言葉にちょっとだけ頭に血が昇った。
「FOUR。」
この街最大のショッピングモール「FOUR」。3階にこの太田書店の姉妹店「OHTA」が入っている。もちろんここの規模には足元にも及ばないけど、結構な売り上げがあるという噂だ。
「『FOUR』ですか……。」
池谷さんの話だと、本来ならモールの方に納入すべきコミックが全部こちらにきてしまったのだとか。発売日は明日だ。納品のチェックをしたり、ビニールを巻いたり、やるべき事は沢山ある。
「分かりました。行きましょう。」
昼はこれが済むまでお預けだ。俺は一緒にレジを打っていたしおりんに、出かけてくる旨を告げて、山ほどある段ボールを運ぶために台車を取りに向かった。
「お前さ、結構、史織さんと仲がいいよな。」
「えっ? ええ、まぁ……。」
大量の段ボールを会社のバンに詰め込み、助手席に収まった。運転は池谷さん。こうやって横顔を見ると、意外と男前だ。
「付き合ってるのか?」
「はい? いやいや、付き合ってはいませんよ。」
たまに招く誤解。世間一般には男と女の友情は成立しにくいと思われている。じゃあ、僕たちは? これを友情といわずに何て呼ぶのだろう。
「史織さんは素敵ですけど。」
「……。」
やっぱり……。池谷さんはしおりんに気があるんだ。改めて彼を眺める。短く刈り上げた後ろと両サイド。トップは軽くパーマをかけて整えている。笑った時に目の傍にシワができて、真面目な顔とのギャップが凄い。
『うん、いいんじゃないか?』
僕より10㎝以上は違うけど、大男というわけじゃない。けれども背の高い男の人を探している僕じゃないんだから……。しおりんとはお似合いだ。
『あのこういちっていう人、あれから《J》に来ないな……。』
あの夜から半年以上が過ぎている。僕は相変わらず週に2、3回は通っているけど、まだ「こういちさん」には会えていなかった。
『別に会いたいと思っているわけじゃないけどさ。』
ちょうど、ショッピングセンターの裏にある商品の搬入口に着いた。僕は手続きをするのを買って出て、車から降りた。
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