ある時、ある場所で

もこ

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5回目〜20年前〜(悠)

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俺は6時には自分の部屋のテーブルに向かって、夕飯の弁当を食べていた。定時に上がり、一階の食料品売り場で弁当とつまみを買って部屋に戻った。6時になったら電話がくるかもしれない。外食する気はさらさらなかった。

『テレビでもつけるか…。』
久しぶりのテレビをつけると、ちょうど天気予報がやっているところだった。明日は晴れて花粉が多く飛ぶそうだ。そういえば、経理部の田中さんが箱ティッシュを持ってきてたっけ…。花粉症ではない俺には関係ないけど、真人は…花粉症かな?

『真人は…電話くれるかな?あれから2年は経ってる…。彼氏ができていても不思議じゃない…。』
真人と顔のない彼氏が絡んでいるところを想像しそうになって首を大きく振った。ペットボトルのお茶で残っていたご飯を流し込んだ。

『……』
何もする事がない。シャワーも浴びたし、後は歯を磨いて寝るだけだ。寄りかかっていたベッドに飛び乗り、宝物箱を手に取った。

『あった…。』
小さな石やガラスのかけら、酒の王冠など、手に入れた時の事がはっきりと映像で頭に浮かぶ。特に強烈なのは、真人のボタンだ。1本の縫い糸でプラプラしてたっけ…。そしてあの…瞳…。

『会いに行きたいな。もし、契約を破ったらどうなるんだろう…。』
夜中にここを抜け出して…。夜間警備の窓口に社員証を提示するのは分かっている。公園を抜けて…。あの遊具、今でもあのままあるのかな……砂場……。真人…まーくんって……呼ばれてた……。
いつの間にか、ボタンを握りしめて眠りに落ちていた。

プルルルルー。

パッと目が覚めて、すかさず通話ボタンを押した。
「もしもし?真人?」
我ながら今までで1番の目覚めだ。部屋の時計を見ると、9時10分。2時間以上寝てたらしい。

「ゆ、ゆう…。」
躊躇いがちな真人の声が聞こえる。ハッキリと目が覚めた。

「今、どこ?」
「い、今…部屋。自分の部屋。」
電話を通して初めて聞く真人の声は、やはり少しだけハスキーで耳に心地よかった。

「自分の部屋って…あの部屋?」
「うん…。」
1ヶ月前、2年前に飛んだ時のことを思い出す。真人のモノトーンで統一されたオシャレな部屋…。あれ?でも、一年前に飛んだ時には「minori's coffee」にいたよな?あそこで働いている雰囲気だった…。通ってるのか?

「真人は…『trois』で働いてるの?『minori's coffee』じゃなく?」
俺の質問に質問が返ってきた。
「どうして俺が『minori's coffee』で働いていたことを知っているの?」
「!!」
やばい…。どうしよう。あの時、俺は気がつかなかったんだ…。


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