ある時、ある場所で

もこ

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5回目〜20年前〜(悠)

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「はあーっ。」
「何?どうした?」
俺のため息に前の席の生田さんが敏感に反応した。

「いえ、大丈夫です。ちょっと疲れてて…。」
一昨日、洸一さんにスマホを持って行くついでに、手紙もお願いしてきた。自分のスマホの電話番号を記して、電話をくれるように書いた。洸一さんは午後に外に出るから、その時にポストに入れると言っていたが、昨日は電話がなかった。

『近いから翌日には届くと思っていたけど…届かなかったか?』
昨日は電話が来るかもしれないと落ち着かず、夜は何も手につかなかった。スマホ片手にネットサーフィンし、日付けが変わったことに気づいて慌てて寝た。おかげで久しぶりに朝寝坊だ。朝食を食べる暇がなかった。
「よし、今日の昼もラーメンだな。一緒に。」
生田さんから笑顔でこの会社に入って2度目のお誘いがあった。


「俺味噌ラーメン。お前は?」
「同じもので。」
一階のレストラン街にあるラーメン屋に来ていた。以前と同じやりとりをして、通りかかった店員に注文をすると、生田さんが俺に向き直った。

「そんで?どうした?」
「はっ!?何がですか?」
生田さんは俺と同じ歳とはいえ、4月生まれだ。奏さんとは違って上から目線でものを言ってくるような気がするは、仕方がないのか。

「ほら、ため息の意味。」
生田さんがニヤッと笑って言った。
「何でもないですって。ちょっと昨夜眠れなかっただけで。」
別に隠すつもりもないが、こちらから進んで言いたくもない。

「ほー。なぜ?」
「昨日は休みだったから…だらけましたかね?」
躱してみる。一昨日は泊まりではなかったので、予定を1日繰り上げて今日は出勤日になっていた。厳しい…。ま、することないから別にいいけど。

「俺も休みだったけど、充実してたぜ?」
生田さんは木曜日が定休だ。滅多に有休も取らない。彼女と休みが合ってるのか?ちょっぴり興味が出てきた。

「何をしてたんですか?」
「アイツの働く本屋に行って4時間。本を読んできた。」
…彼女の職場に…。大丈夫なのか?
「それはまた…迷惑な話ですよね?」

「いや、余裕だって…って…お前…何だか変わったな。」
「何がですか?」
どこが?俺は何も変わってないぞ?
「好きな奴でもできた?」

「…ああ、まあ…そんなとこです。」
…ああ、そうか…。こんなに相手のことだけを想って過ごすのは初めてかもしれないな…。
「何?報われない恋?初めての経験?」

「そんなんじゃないですったら…でも、経験値は1くらい上がったかな…。ちょっと諦められそうには…無いですね。」
苦笑いをする…。4月1日になってどんな展開が待っているのか、少しだけ緊張している。ま、どんなことになっても押していくけどな。

「ほー…。ちっとはいい顔するようになったじゃん。」
俺の顔を見ていた生田さんがそう言った時、ちょうど頼んでいた味噌ラーメンが運ばれてきた。



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