ある時、ある場所で

もこ

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5回目〜20年前〜(悠)

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「まーくんっ!!」
慌てた母親がすぐにまーくんを取り上げて引き剥がしてくれた。
「はははっ。積極的ですね。」
頬を触るとだいぶ濡れてる…。しかし、汚いとか嫌な気持ちにはならなかった。それよりも子ども特有の天真爛漫さに、とても惹かれた。

「すみません!すみません!!」
母親は平謝りだった。抱いているまーくんを落としそうだ。
「大丈夫ですよ。気にしませんから。」
俺の言葉に母親がほっとした顔を見せた。

「すみません…私にしかチューをしたがらないんですが…。どうしてかしら?父親と勘違いしたのかも…。」
チューと聞いてまーくんが「ちゅー。」と言いながら、母親の頬にチューし始めた。

「大丈夫です。本当に。気になさらないでください。じゃ、またね。まーくん。」
とりあえず、ここから出ようと挨拶をして、鞄と携帯を持って歩き出した。
「ほら、バイバイしよ?」
母親に腕を掴まれたまーくんが手を振ってくれた。

遊具コーナーを出て、噴水の方へ向かう。遊具コーナーの中からさっきの母親の声が聞こえた。
「まーくん、もうそろそろ帰ろ?バーバがだんだんお野菜切り終わるから…アイスもらお?」
「あいしゅーっ!」
まーくんの元気な声が響いてきた。



『ほっ、良かった。』
噴水まで戻るとさっきのカップルがいなくなっていた。噴水の水辺を囲む石の上に腰掛ける。携帯をとりだして、写真を見直すと、先ほど見ていた地図の次に拡大したものが入っていた。

『さすが、洸一さん。』
地図を確認してみると、ここから真人の家がある住宅街を抜けて…道3本分進んだところだ。2,3百mってとこか?頭に地図をインプットすると、まずは公園を抜けようと歩き出した。

『おっ、クリーニング屋。』
公園の目の前にあるクリーニング屋は、まだ建物が新しそうだった。よく見ると、ここいらへんの住宅は皆新しいような気がする。この時代に開発された土地なのかもしれない。

『troisは…?』
…あった。少し入り口のフードの色が違うような気もするが、同じ場所に店があることが遠目で確認できた。…行ってみたい…。でも、あそこにいる真人は、真人でも真人じゃない…。

『小さい頃の真人はどんなかなあ。』
後で昼を食べに行ってもいいな。…そんな事を考えながら、住宅街に足を踏み入れた。



結局、今回の任務は呆気なく終了し、昼食を食べに「trois」に寄る必要もなく、「過去の部屋」へ戻った。
「ただいま戻りました。」
「ご苦労、早く終わったな。」
洸一さんがパソコンの前で、出てきた時と変わらない態勢で出迎えてくれた。




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