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4回目〜2年前〜(悠)
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顔を洗って歯を磨く。髭剃りを当ててクリームを塗る。乾燥するこの季節には欠かせない。俺が大学生になってから、4つ歳の離れた姉がくれたもの。つけていたメガネを外してコンタクトを入れる。俺のメガネは部屋専用。無くともなんとかなるが、自分の部屋では必ず使う。コンタクトは毎日寝る前に外しているんだ。
「今日も…黒だな。」
カラーコンタクトはいくつか準備している。色素の薄い茶色の目がコンプレックスというのもある。今日は前回と変わらない黒髪に合うように、コンタクトも黒。髪を少し斜めに流して真面目君の出来上がり。
「こんなもんだろ。」
あの黒縁メガネをかければバッチリだ。洗面所から部屋に戻った。
カウンターに置いといたアイスコーヒーに牛乳を混ぜて一口飲む。6枚切りの食パンにかじりつき、着替えを始める。今日は少し厚めの生地で仕立ててあるワイシャツを新調した。アイロンいらず、形状記憶のタグが付いた優れもの。アイロンなんてかけないから、本当に重宝する。結構高かったが、3枚大人買いした。
「ハムあったな…。」
急に思い立って冷蔵庫からハムを取り出す。残り3枚…食べてしまおう。3枚丸ごと口に入れて、ネクタイに取り掛かる。
「……。」
気が変わってクローゼットに向かった。前回と同じネクタイとスーツを取り出す。できればすぐに俺のことを思い出してほしい。真人…思い出すかな?
2年前だと聞かされたのが5日前。2年前だろうが、8年前だろうが、会いに行こうと思った。遠くから眺めるだけでも…。8年前の中学生の真人を遠くから眺めるのも悪くない。スーツを着込んで身支度が終わった。
食パンの残りをコーヒー牛乳で流し込み、もう一度歯を磨く。荷物はビジネスバッグひとつだけ。下着と靴下…そして真人へのプレゼントが入ってる。
『!』
洸一さんに住所を教えてもらって部屋に戻った後、撮ってきた画像を見て驚いた。誕生日がもうすぐ。年末の30日だった。俺の次の任務は1月6日。何か送りたい衝動に駆られ、通販でネックレスを購入した。しかも2つも。お揃いでつけたい。
本当は郵便で送るつもりだったけど、今現在、真人がこの住所にいる確信がない。電話番号が分かればかけるけど…。でもなんて言って?5年前に待っててって言った「ゆう」だよって?…躊躇している間に誕生日が来てしまった。
年が明けて2年前だと聞いた時には心臓が跳ねた。自分で会って渡したい…。会えなくとも、受け取った時の顔は見てみたい。早く行きたい。…早く真人の元へ…。
「よし、行くか。」
コーヒーを飲んだコップをシンクに置いて水に浸し、もう一度荷物を確認してから部屋を後にした。
「今日も…黒だな。」
カラーコンタクトはいくつか準備している。色素の薄い茶色の目がコンプレックスというのもある。今日は前回と変わらない黒髪に合うように、コンタクトも黒。髪を少し斜めに流して真面目君の出来上がり。
「こんなもんだろ。」
あの黒縁メガネをかければバッチリだ。洗面所から部屋に戻った。
カウンターに置いといたアイスコーヒーに牛乳を混ぜて一口飲む。6枚切りの食パンにかじりつき、着替えを始める。今日は少し厚めの生地で仕立ててあるワイシャツを新調した。アイロンいらず、形状記憶のタグが付いた優れもの。アイロンなんてかけないから、本当に重宝する。結構高かったが、3枚大人買いした。
「ハムあったな…。」
急に思い立って冷蔵庫からハムを取り出す。残り3枚…食べてしまおう。3枚丸ごと口に入れて、ネクタイに取り掛かる。
「……。」
気が変わってクローゼットに向かった。前回と同じネクタイとスーツを取り出す。できればすぐに俺のことを思い出してほしい。真人…思い出すかな?
2年前だと聞かされたのが5日前。2年前だろうが、8年前だろうが、会いに行こうと思った。遠くから眺めるだけでも…。8年前の中学生の真人を遠くから眺めるのも悪くない。スーツを着込んで身支度が終わった。
食パンの残りをコーヒー牛乳で流し込み、もう一度歯を磨く。荷物はビジネスバッグひとつだけ。下着と靴下…そして真人へのプレゼントが入ってる。
『!』
洸一さんに住所を教えてもらって部屋に戻った後、撮ってきた画像を見て驚いた。誕生日がもうすぐ。年末の30日だった。俺の次の任務は1月6日。何か送りたい衝動に駆られ、通販でネックレスを購入した。しかも2つも。お揃いでつけたい。
本当は郵便で送るつもりだったけど、今現在、真人がこの住所にいる確信がない。電話番号が分かればかけるけど…。でもなんて言って?5年前に待っててって言った「ゆう」だよって?…躊躇している間に誕生日が来てしまった。
年が明けて2年前だと聞いた時には心臓が跳ねた。自分で会って渡したい…。会えなくとも、受け取った時の顔は見てみたい。早く行きたい。…早く真人の元へ…。
「よし、行くか。」
コーヒーを飲んだコップをシンクに置いて水に浸し、もう一度荷物を確認してから部屋を後にした。
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