ある時、ある場所で

もこ

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4回目〜2年前〜(悠)

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4月から住んでいる自分の部屋に戻った。家具、家電付きで引越しの際は衣類だけで済んだ。造り付けのベッドに腰掛ける。ベッドに敷いてある布団はここにきてから購入したものだ。ベッドの棚に置いた宝箱に手を伸ばした。

『真人から奪い取った制服のボタン…』
ボタンを取り出して手に乗せる。前回戻ってからすぐに、クローゼットに突っ込んでおいたダンボールの中に、宝箱を見つけた。確かに入れておいたはずのそこには、真人のボタンは影も形も無かった。俺が過去から持ってきたから?それとも、今の自分がどこかで落としていた?

『真人に会いに行くとしたら、どこに行けばいい?』
このショッピングモールの近くに住んでいることはわかるが、何処だか分からなかった。あの「minori's  coffee」へ行ってみる?8年前に行くにしても2年前に行くにしても…また探すのか?任務にも時間がかかるのに…。手の中のボタンを箱に戻し、布団の上に置いた。

「よし、行ってみよう…!」

バックヤードへ続く扉を手紋で開け、ひたすら真っ直ぐに進んだ。店の従業員たちもチラホラ見かける。搬入途中のダンボールがあちこちに積み上げられていて、ぶつからないように気を使う。住居とは反対方向の壁まで来て、周りに誰もいないことを確認し、壁に手を当てた。

3階から4階へ続く螺旋階段。モールの一般的な従業員は誰も知らない秘密の場所。この上に洸一さんがいる…!螺旋階段を駆け上がり、白い部屋に着く。相変わらず眩しい。目の前のカーテンのない剥き出しの窓から光が差し込んでいた。

「洸一さん!」
「過去の部屋」に手紋を合わせるが何も反応がない。あれ?おかしい。ここで仕事をしてるんじゃないのか?ドンドン壁を叩き耳を澄ませるが、誰かがいる気配はなかった。

『今日は諦めろっていうことか…。』
ゆっくり螺旋階段を降りる。下に降りてバックヤードへ続く扉を開けようと手を上げた途端に、入り口が開いた。
「おわっ!」
「….何やってんだ。」
洸一さんがギロッと睨んで呟いた。

「すみません。仕事中ですか?今日は俺オフなんですが、個人的に頼みたい事があって…。」
「…部屋で聞く。」
螺旋階段を登り始めた洸一さんの後に続き、俺もまた上に登った。

「洸一さんがいないと、この部屋は反応しないんですか?」
階段を登りながら問いかける。
「鍵がかけてある。」
先に白い部屋にたどり着いた洸一さんが壁に何か描き始めた。…筆記体?

『…でおのでら…』
奏?小野寺?
「小野寺さん、愛されてますね。」
思わずニヤニヤしてしまう。洸一さんの愛は半端ないな。
「読んだのか?」
洸一さんが横目で見てきた。
「ずっと使ってきたが…キーワードを変えないとだな。」
扉が開くと同時に、「過去の部屋」へ招き入れられた。



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