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1回目〜4年前〜(悠)
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木の根元に腰を下ろし、道端の自販機で買ったスポーツドリンクを飲みながら策を練る。
『……』
思いつかない…。これからどうしよう?交番に行ったら教えてくれるかな?考えながら目を上げると、柴犬と一緒に散歩してくる爺さんを見かけて、何も考えずに立ち上がり声をかけた。
「すみません!」
爺さんに駆け寄る。柴犬は長い舌を出してハアハアしている。分かるよ…その気持ち。
「なんだい?」
ジロジロ上から下まで眺める爺さんに少し怯むが、思い切って聞いてみた。
「あの、そっちの大きな家の真向かいにあった佐々木さんの家に来たんですが、家がなくなってて…。何故だか知りませんか?」
「君は?」
「昔遊びに来たことがあって懐かしくて…。でも更地になってたんです。」
「ほおー、公男君の友達かな?佐々木さん家なら、その大きな家に入ったんだよ。公男君は今日は仕事のはずだそ?行ってもいないぞ?」
爺さんは笑顔を見せて親切に教えてくれた。公男君がターゲットじゃないがこの際どうでもいい。
「そうだったんですね!行ってみます。ありがとうございます。」
じゃあね!と声をかけながら犬の頭を撫でると、犬は千切れんばかりに尻尾を振った。爺さんも満足げに去っていった。
「さてと…。張り込みするか…。」
とても広い敷地が昔ながらの白塗りの塀で囲まれている。時代劇に出てきそうな雰囲気だ。奥には瓦屋根の入母屋造りの大きな家が見える。ここいらへんの昔ながらの資産家っていうところか…。門のところまで行くと、やはり「佐々木」という立派な表札が掲げられていた。
あまり目立たないように門に目を向けながら、通りすがりの人を演じる。神社に戻っては一休みし、それを3回繰り返した。
「おっ。」
4回目に佐々木家に向かって歩いていくと、ちょうど40代ぐらいの女の人が門から出てきた。無地のワンピースを着て、日傘をさしている。
「ターゲットか?」
ちらりと見えた横顔では判別出来ない。距離を取って後をつけながら、スマホで情報を確認した。
『佐々木佳代子。49歳。』
写真の顔を頭に入れる。少なくとも、この写真よりは年を取ってるはずだ。あの服装…。50近い女の人にはちょっと派手かな…。
慎重に後をつけながら、どうやって顔を確認するか思案した。どんどん駅の方に向かっている…。
「…そうだ!」
俺は顔を確認する方法を思いつき、小さな路地を右に曲がり走り始めた。
『あの人が行った道はしばらく一本道だ!こっちから先回りして…。』
案の定、さっきの道に戻る頃には、ターゲットがその道から出てくるところで、顔をしっかり確認することができた。
『間違いない。たぶん。生きてた…っと…。』
初ミッションが案外早く達成したことに少しだけ安堵した。時間を確認すると、まだ昼を過ぎたばかり。少しだけ寄り道をして帰ることにした。
『……』
思いつかない…。これからどうしよう?交番に行ったら教えてくれるかな?考えながら目を上げると、柴犬と一緒に散歩してくる爺さんを見かけて、何も考えずに立ち上がり声をかけた。
「すみません!」
爺さんに駆け寄る。柴犬は長い舌を出してハアハアしている。分かるよ…その気持ち。
「なんだい?」
ジロジロ上から下まで眺める爺さんに少し怯むが、思い切って聞いてみた。
「あの、そっちの大きな家の真向かいにあった佐々木さんの家に来たんですが、家がなくなってて…。何故だか知りませんか?」
「君は?」
「昔遊びに来たことがあって懐かしくて…。でも更地になってたんです。」
「ほおー、公男君の友達かな?佐々木さん家なら、その大きな家に入ったんだよ。公男君は今日は仕事のはずだそ?行ってもいないぞ?」
爺さんは笑顔を見せて親切に教えてくれた。公男君がターゲットじゃないがこの際どうでもいい。
「そうだったんですね!行ってみます。ありがとうございます。」
じゃあね!と声をかけながら犬の頭を撫でると、犬は千切れんばかりに尻尾を振った。爺さんも満足げに去っていった。
「さてと…。張り込みするか…。」
とても広い敷地が昔ながらの白塗りの塀で囲まれている。時代劇に出てきそうな雰囲気だ。奥には瓦屋根の入母屋造りの大きな家が見える。ここいらへんの昔ながらの資産家っていうところか…。門のところまで行くと、やはり「佐々木」という立派な表札が掲げられていた。
あまり目立たないように門に目を向けながら、通りすがりの人を演じる。神社に戻っては一休みし、それを3回繰り返した。
「おっ。」
4回目に佐々木家に向かって歩いていくと、ちょうど40代ぐらいの女の人が門から出てきた。無地のワンピースを着て、日傘をさしている。
「ターゲットか?」
ちらりと見えた横顔では判別出来ない。距離を取って後をつけながら、スマホで情報を確認した。
『佐々木佳代子。49歳。』
写真の顔を頭に入れる。少なくとも、この写真よりは年を取ってるはずだ。あの服装…。50近い女の人にはちょっと派手かな…。
慎重に後をつけながら、どうやって顔を確認するか思案した。どんどん駅の方に向かっている…。
「…そうだ!」
俺は顔を確認する方法を思いつき、小さな路地を右に曲がり走り始めた。
『あの人が行った道はしばらく一本道だ!こっちから先回りして…。』
案の定、さっきの道に戻る頃には、ターゲットがその道から出てくるところで、顔をしっかり確認することができた。
『間違いない。たぶん。生きてた…っと…。』
初ミッションが案外早く達成したことに少しだけ安堵した。時間を確認すると、まだ昼を過ぎたばかり。少しだけ寄り道をして帰ることにした。
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