未来も過去も

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「過去の部屋」

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早起きしておにぎりを作る。ご飯を茶碗にわけて、買っておいた昆布を挟み込む。ラップに取り出し、ギュッギュッと握っていく。塩を振るのを忘れてた。塩を振って握り直しながら、昨日のことを思い出していた。


3日間の出張が終わり、1日休んだ後に生田が出社した。でもいくら聞いても、どうして3日間も出張だったのか教えてくれなかった。
「ま、俺が行っても成果あげられなかったし。これ以上はリスクが高過ぎるってことで…。」
若干疲れてるように見えるけど、何だかスッキリした顔をしている。…アヤシイ…。

「泊まりだったんだろ。どこに泊まったの?」
「おや、気になる?」
生田が悪い顔になった。…ニヤついている。
「1日目は『過去の部屋』。2日目は戻らないで駅前のビジネスホテル。ちなみに管理人とは何にもなかったぞ。俺、奏一筋。」
「そ、そんなの聞いてないし!小野寺って呼べよっ!」
何が「奏」だっ!親にしか呼ばれていなかったんだぞ。歴代彼女達も「小野寺くん」だったし。ま、期間は短かったけど。


おにぎりが三角にならない。俺は、野球ボールのようなおにぎりを見つめて、ため息をついた。ま、いいか。よし、次。次はたらこ。新鮮なものを夕べ食品売り場で買ってきた。ちゃんと一口大に切れているのを選んだぞ!これは2つ。俺も絶対食べる。大好物。


「管理人の料理食べた?」
生田はボカンとした顔をしてこちらを見た。普段表情を引き締めているから、余計に間抜け顔に見える。
「いや。…あいつ、料理するの?」
「あ、ああ…。俺食べたことあるぞ。普通に美味しい。」
「どんなの?」
怪訝そうな顔だ。
「いや、オムレツとか、ハンバーグとか…。カプセルに入った後に出してくれる。」
生田の顔が固まった。…何?…何か言いたいのか?…ほれ、…吐き出せ!

「お前、餌付けされてんじゃん。狙われてんじゃねえ?」
……今度は俺が固まる番だった。


続けて梅と、混ぜ込みワカメのおにぎりを用意。三角は諦めた。俺にはハードルが高すぎる。握り終わったボール、もといおにぎりに海苔を巻いて、アルミホイルに包んだ。具材の印をつけて買い物袋に突っ込む。三合で5個か…。おにぎりってご飯たくさん消費するんだな。

俺が狙われてる?そんな事あるわけないし…。生田はいつもそっち系統に思考が持ってかれるのが難点だ。

押入れから、学生時代に愛用してた肩掛けバッグを取り出しておにぎりの入った袋を詰めると、財布とスマホをポケットに入れ、もう一つ重要な荷物を抱えて部屋を後にした。
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