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ゆびわ
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「やれやれ、またお前か…。」
巌城さんはため息をつくと、洸一が俺の隣に座るのと反対に立ち上がり、机にある電話のボタンを押して話し始めた。
「小池さん、コーヒー3つ頼むよ。キリマンジャロ以外で。」
…ことさら『キリマンジャロ以外』を強調していた。
「どうして奏が呼ばれたんだ?」
巌城さんがまた腰かけるとすぐに、洸一が切り出した。途端に巌城さんは笑顔になった。
「そうそう、お前たち来週休暇を取るんだろ?」
「ああ。…それが?」
洸一が聞き返す。…俺の出番は無かった。
「杉崎君から聞いたんだ。小野寺君が実家に帰るって。」
ますます笑みを深くする。前のめりになって…。
「息子さんを俺にくださいっ、ってやってくるんだろ?…私も行った方が良くないか?」
ワクワクしている雰囲気が、体全体に滲み出ていた。
「……」
「……」
顔が熱い…。今度の帰省で洸一を両親に紹介しようと思っていて、とくに反対されるとは思ってなかった。母親方の叔父はゲイだ。相手方の籍に婿養子に入り、夫夫で仲良くやっている。両親もそんな叔父を嫌悪することなく受け入れていて、正月やお盆に祖父母の家に集まると、和気あいあいと過ごしていた。俺も叔父夫夫が大好きだった。ずっと前に生田から男どうしを『気持ち悪がってない』って言われたけど、俺の育ちがそうさせたのかもしれない。
『でも…でも……洸一が……俺と?』
熱い顔を隠すように俯いていたけど、洸一の様子が気になって横目で右隣を見た。洸一は、今までに見たことがないほど…首筋まで真っ赤になって巌城さんを見ていた。
「なんでっ!どこに…け、結婚の承諾をとりに…親連れて行く奴が…どこの世界にいるんだよっ!」
俺はその言葉を聞いて…ますます顔が熱くなった。チラッと巌城さんに目を向けると、明らかにガッカリしていた。
「だって、小野寺君の両親も心配するだろ?どんな家かって…。きちんとした家だと印象づけた方が良くないか?」
「俺がちゃんと説明するっ!全く、俺を幾つだと思ってるんだ。」
しょんぼりした巌城さんに追い討ちをかけるように洸一が言い放った。
「じゃ、手紙を出そうかな?」
「それもいい。」
妥協点を見出して復活した巌城さんの言葉を、洸一が一瞬で断り、また巌城さんはガッカリした顔をした。
「洸さん、諦めましょう?」
奥の部屋の扉が開き、香ばしい香りを纏って、コーヒーのお盆を持った小池さんが入ってきた。
「美智子さん…。」
巌城さんが縋るように小池さんを見た。
「洸一さんや小野寺さんの幸せを願う気持ちは分かりますけど、これ以上は…。本人たちに任せましょう?」
コーヒーを前に置きながら、穏やかに話す小池さんの言葉に巌城さんも慰められたようだった。
「…そうだな……。頑張ってこい、洸一。」
巌城さんはため息をつくと、洸一が俺の隣に座るのと反対に立ち上がり、机にある電話のボタンを押して話し始めた。
「小池さん、コーヒー3つ頼むよ。キリマンジャロ以外で。」
…ことさら『キリマンジャロ以外』を強調していた。
「どうして奏が呼ばれたんだ?」
巌城さんがまた腰かけるとすぐに、洸一が切り出した。途端に巌城さんは笑顔になった。
「そうそう、お前たち来週休暇を取るんだろ?」
「ああ。…それが?」
洸一が聞き返す。…俺の出番は無かった。
「杉崎君から聞いたんだ。小野寺君が実家に帰るって。」
ますます笑みを深くする。前のめりになって…。
「息子さんを俺にくださいっ、ってやってくるんだろ?…私も行った方が良くないか?」
ワクワクしている雰囲気が、体全体に滲み出ていた。
「……」
「……」
顔が熱い…。今度の帰省で洸一を両親に紹介しようと思っていて、とくに反対されるとは思ってなかった。母親方の叔父はゲイだ。相手方の籍に婿養子に入り、夫夫で仲良くやっている。両親もそんな叔父を嫌悪することなく受け入れていて、正月やお盆に祖父母の家に集まると、和気あいあいと過ごしていた。俺も叔父夫夫が大好きだった。ずっと前に生田から男どうしを『気持ち悪がってない』って言われたけど、俺の育ちがそうさせたのかもしれない。
『でも…でも……洸一が……俺と?』
熱い顔を隠すように俯いていたけど、洸一の様子が気になって横目で右隣を見た。洸一は、今までに見たことがないほど…首筋まで真っ赤になって巌城さんを見ていた。
「なんでっ!どこに…け、結婚の承諾をとりに…親連れて行く奴が…どこの世界にいるんだよっ!」
俺はその言葉を聞いて…ますます顔が熱くなった。チラッと巌城さんに目を向けると、明らかにガッカリしていた。
「だって、小野寺君の両親も心配するだろ?どんな家かって…。きちんとした家だと印象づけた方が良くないか?」
「俺がちゃんと説明するっ!全く、俺を幾つだと思ってるんだ。」
しょんぼりした巌城さんに追い討ちをかけるように洸一が言い放った。
「じゃ、手紙を出そうかな?」
「それもいい。」
妥協点を見出して復活した巌城さんの言葉を、洸一が一瞬で断り、また巌城さんはガッカリした顔をした。
「洸さん、諦めましょう?」
奥の部屋の扉が開き、香ばしい香りを纏って、コーヒーのお盆を持った小池さんが入ってきた。
「美智子さん…。」
巌城さんが縋るように小池さんを見た。
「洸一さんや小野寺さんの幸せを願う気持ちは分かりますけど、これ以上は…。本人たちに任せましょう?」
コーヒーを前に置きながら、穏やかに話す小池さんの言葉に巌城さんも慰められたようだった。
「…そうだな……。頑張ってこい、洸一。」
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