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あいつ
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あいつと関わるようになったのは、中学校に入ってしばらくたった後のこと。
中学ニ年のクラス替え。
チカと同じクラスになれず、離れ離れになって落ち込んでいた時期だ。
自分から話しかけに行くような性格じゃなかった俺は、グループに入れず一人で本を読んでいた。
たまに近くの生徒が、何読んでるの~と聞いてきたりするぐらいで、特別変わったことはなかった。
何ヶ月か経って、席替えのくじ引きが行われ、隣の席があいつだった。
その日の帰り道、あいつを見つけて、
何となく話しかけた。
まぁ、あいつも一人だったし、仲間意識的なものがあったのかもしれない。
その頃の俺はチカしか友達がいなかったから、他の人との接し方が良くわからなかった。
あいつは口数が少なくて、俺のボケを無視することもあったけど、一緒にいて楽しかった。
なにより、自然な自分で居ることができた。
テニス部だったチカは、月曜日の朝に朝練があって、俺は月曜日だけはいつも一人だった。
チカは友達が多くて、帰り道は団子みたいになって帰る。
中学一年のときは、部活が終わったと同時にダッシュでチカの所へ向かっていたから、部活の帰りも一緒に帰っていた。
それをしなくなったのはチカと同じテニス部の天野が俺を睨むようになってからだ。
気が付かなければよかったんだけど。その視線は痛いほど俺に突き刺さっていた。
最初は普通だったのに、何が天野を怒らせたのか、俺には分からなかった。
それを堺に、他の生徒がいるときはチカに近づかないようになって、少し距離を置くようになった。
そして、あいつといる時間が増えた。
休みの日は、俺から誘わないと遊ぶことはなかったけど、誘ったら絶対一緒にいてくれた。
俺はその日嫌なことがあって、落ち込んでいた。
だからカラオケで歌って憂さ晴らししようとあいつを誘ったんだ。
カラオケで歌ってスッキリして、さぁ帰ろうと歩きはじめた。
無言で歩くことは別に苦じゃないが、このときは駄目だった。
静かになって、嫌なことを思い出した俺の気持ちはどんどん暗くなった。
そんなこと知らないあいつは一言呟いた。
『お前人形みたいだな。』
何を思ってそう言ったのかは分からなかったけど、その言葉で親から言われ続けてきたことがフラッシュバックした。
『お前は感情がないから、まともに考えることも、謝ることもできないんだ。』
『心がない人形だ。』
あぁ、こいつも俺のことを人形だって言うのか。
俺に心がないって、そう思うのか。
一気に心臓が締め付けられた。
目に涙がこみ上げてきて泣くもんかと、歯を食いしばった。
平常心を保とうと、瞼をゆっくり閉じて深呼吸をする。
しかし、段々と呼吸は荒くなっていった。
「おい、どうした。」
中学ニ年のクラス替え。
チカと同じクラスになれず、離れ離れになって落ち込んでいた時期だ。
自分から話しかけに行くような性格じゃなかった俺は、グループに入れず一人で本を読んでいた。
たまに近くの生徒が、何読んでるの~と聞いてきたりするぐらいで、特別変わったことはなかった。
何ヶ月か経って、席替えのくじ引きが行われ、隣の席があいつだった。
その日の帰り道、あいつを見つけて、
何となく話しかけた。
まぁ、あいつも一人だったし、仲間意識的なものがあったのかもしれない。
その頃の俺はチカしか友達がいなかったから、他の人との接し方が良くわからなかった。
あいつは口数が少なくて、俺のボケを無視することもあったけど、一緒にいて楽しかった。
なにより、自然な自分で居ることができた。
テニス部だったチカは、月曜日の朝に朝練があって、俺は月曜日だけはいつも一人だった。
チカは友達が多くて、帰り道は団子みたいになって帰る。
中学一年のときは、部活が終わったと同時にダッシュでチカの所へ向かっていたから、部活の帰りも一緒に帰っていた。
それをしなくなったのはチカと同じテニス部の天野が俺を睨むようになってからだ。
気が付かなければよかったんだけど。その視線は痛いほど俺に突き刺さっていた。
最初は普通だったのに、何が天野を怒らせたのか、俺には分からなかった。
それを堺に、他の生徒がいるときはチカに近づかないようになって、少し距離を置くようになった。
そして、あいつといる時間が増えた。
休みの日は、俺から誘わないと遊ぶことはなかったけど、誘ったら絶対一緒にいてくれた。
俺はその日嫌なことがあって、落ち込んでいた。
だからカラオケで歌って憂さ晴らししようとあいつを誘ったんだ。
カラオケで歌ってスッキリして、さぁ帰ろうと歩きはじめた。
無言で歩くことは別に苦じゃないが、このときは駄目だった。
静かになって、嫌なことを思い出した俺の気持ちはどんどん暗くなった。
そんなこと知らないあいつは一言呟いた。
『お前人形みたいだな。』
何を思ってそう言ったのかは分からなかったけど、その言葉で親から言われ続けてきたことがフラッシュバックした。
『お前は感情がないから、まともに考えることも、謝ることもできないんだ。』
『心がない人形だ。』
あぁ、こいつも俺のことを人形だって言うのか。
俺に心がないって、そう思うのか。
一気に心臓が締め付けられた。
目に涙がこみ上げてきて泣くもんかと、歯を食いしばった。
平常心を保とうと、瞼をゆっくり閉じて深呼吸をする。
しかし、段々と呼吸は荒くなっていった。
「おい、どうした。」
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