17 / 43
17
しおりを挟む
エド曰く、魔法使いにはSからEまでのランクがあるらしく、高ランクの魔法使い程『言霊』の力は強いらしい。
「具体的にはどうするんだ」
「命令の上書きをする」
「何だそれ」
「命令を下した者よりも力が強ければ、その命令を解除する事が出来るんだよ」
という事は、あの熊の獣人に命令した魔法使いよりもエドの方がランクが上なのか。
「じゃあ、行ってくるよ。しっかり耳を塞いでおくんだよ」
エドが熊の獣人の前に立つ。刹那、灰色の瞳が光ったような気がした。
「『止まれ』」
その声は、不思議な声だった。優しく語り掛けてくるような、かと思えば抗う事は許さない重みを含んだ声。
エドに襲い掛かろうとした熊の獣人の動きがピタリと止まった。そして、オレは見た。その血走った赤い瞳から光が失われていく様を。
「『眠れ。君が受けた命令は、それだけだ』」
たったそれだけの言葉で、まるで糸が切れた操り人形のようにその体は床に崩れ落ちた。
「…上書きってのはそれで済んだのか?」
「…ああ。ラルフ、少しだけ抱きしめてさせてくれないかい」
そう聞いたくせに、同意を聞く前にオレの肩口に顔を埋めるエドの身体は僅かに震えていた。
「具体的にはどうするんだ」
「命令の上書きをする」
「何だそれ」
「命令を下した者よりも力が強ければ、その命令を解除する事が出来るんだよ」
という事は、あの熊の獣人に命令した魔法使いよりもエドの方がランクが上なのか。
「じゃあ、行ってくるよ。しっかり耳を塞いでおくんだよ」
エドが熊の獣人の前に立つ。刹那、灰色の瞳が光ったような気がした。
「『止まれ』」
その声は、不思議な声だった。優しく語り掛けてくるような、かと思えば抗う事は許さない重みを含んだ声。
エドに襲い掛かろうとした熊の獣人の動きがピタリと止まった。そして、オレは見た。その血走った赤い瞳から光が失われていく様を。
「『眠れ。君が受けた命令は、それだけだ』」
たったそれだけの言葉で、まるで糸が切れた操り人形のようにその体は床に崩れ落ちた。
「…上書きってのはそれで済んだのか?」
「…ああ。ラルフ、少しだけ抱きしめてさせてくれないかい」
そう聞いたくせに、同意を聞く前にオレの肩口に顔を埋めるエドの身体は僅かに震えていた。
10
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる