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ウィリアム・エドワード・クロフォードという人間に出会って、オレの中で初めて『変人』というカテゴリーが出来た。
何が変かって。まず、こいつはオレを飼っている訳ではないらしい。拘束もしないし、首輪もつけない。今までの奴らのように閉じ込めてあの嫌な『匂い』を嗅がせないし、何より…エドはオレにそういう意図で触れてこない。
そしてエドはオレに3つの約束をさせた。出来るだけ毎食一緒に摂る事、挨拶はきちんと返す事、それから…夜眠る前に少しだけ話し相手になる事。
一体何がしたいのか全く分からない。今日もオレと一緒に朝食を摂った後、仕事へと出かけていった。
その日、オレは大分回復してきた事もあり、家の中を散策してみる事にした。
家の中はエドが言った通り、オレ以外誰もいなかった。一人で住むには広すぎる家。ここにずっと独りで暮らしてきたのだろうか。
「…いくら何でも不用心すぎだろ」
オレが言うのも何だが、オレみたいな奴を一人にして何かされるとは微塵も思わないのか。あのメイドだって人間ではなくエドが創ったものらしいから、簡単な動きしかできないらしいし…
『じゃあ、行ってくるね。留守を頼むよ』
「………」
毎朝そう言って出掛けていくあいつに、オレはまだ一度も「行ってらっしゃい」と言った事がない。
「おはよう」や「お休み」は少し抵抗はあるものの、全く言えない訳じゃない。でも、何度言おうとしても、どうしてもそれだけは言えなかった。
「ん…? ここ、」
すんっと嗅ぎ覚えのある匂いが通りかかった部屋からして、足を止める。入ってみると、そこは寝室のようだった。そして驚いた。その部屋はオレがいる部屋とかなり離れていた。
「あいつ…何考えてんだ」
ますますあいつが何を考えているのか分からない。獣人用の頑丈な鍵がかけてある訳でもなし。ならばと出てみた庭や家の周囲にも高圧線や罠、監視カメラさえ無かった。
いつでも逃げられる。まるで逃げたかったら逃げろとでも言っているようだった。
何が変かって。まず、こいつはオレを飼っている訳ではないらしい。拘束もしないし、首輪もつけない。今までの奴らのように閉じ込めてあの嫌な『匂い』を嗅がせないし、何より…エドはオレにそういう意図で触れてこない。
そしてエドはオレに3つの約束をさせた。出来るだけ毎食一緒に摂る事、挨拶はきちんと返す事、それから…夜眠る前に少しだけ話し相手になる事。
一体何がしたいのか全く分からない。今日もオレと一緒に朝食を摂った後、仕事へと出かけていった。
その日、オレは大分回復してきた事もあり、家の中を散策してみる事にした。
家の中はエドが言った通り、オレ以外誰もいなかった。一人で住むには広すぎる家。ここにずっと独りで暮らしてきたのだろうか。
「…いくら何でも不用心すぎだろ」
オレが言うのも何だが、オレみたいな奴を一人にして何かされるとは微塵も思わないのか。あのメイドだって人間ではなくエドが創ったものらしいから、簡単な動きしかできないらしいし…
『じゃあ、行ってくるね。留守を頼むよ』
「………」
毎朝そう言って出掛けていくあいつに、オレはまだ一度も「行ってらっしゃい」と言った事がない。
「おはよう」や「お休み」は少し抵抗はあるものの、全く言えない訳じゃない。でも、何度言おうとしても、どうしてもそれだけは言えなかった。
「ん…? ここ、」
すんっと嗅ぎ覚えのある匂いが通りかかった部屋からして、足を止める。入ってみると、そこは寝室のようだった。そして驚いた。その部屋はオレがいる部屋とかなり離れていた。
「あいつ…何考えてんだ」
ますますあいつが何を考えているのか分からない。獣人用の頑丈な鍵がかけてある訳でもなし。ならばと出てみた庭や家の周囲にも高圧線や罠、監視カメラさえ無かった。
いつでも逃げられる。まるで逃げたかったら逃げろとでも言っているようだった。
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