華散るその時まで

６ sideエドワード

草木も眠る、深夜。新月の闇に紛れて動く者達がいた。

『クロフォード様、配置完了致しました』

ザザ…とノイズ音と共に伝えられた報告に「了解」と短く答える。いよいよだ。これが最初の一歩となる。絶対に失敗する訳にはいかない。

「…作戦開始だ」

全部隊に向けて告げられた合図と共に、それぞれの配置についていた者達が建物の中へ侵入していく。

インカムから逐一流れてくる報告を聞くと、「やはりそうだったか」と予想が当たっていた事への安堵と、出来ればそんな事実はあって欲しくなかったという思いに苛まれた。

『ザザ…クロフォード様、目標を発見できません。やはり逃げたのでは…』
「いや、それはないよ。多分どこかに隠し通路があるはずだ」
『了解。捜索を続けます』

上位の魔法使いが認められている権限の一つに、獣人捜査のために大隊規模の私部隊を持つ事が許されている。

『こちらB班、隠し通路を発見。地下に続いているものと思われます』
「私が行くまで待機していてくれ。合流後、A班とB班で突入する。C班は周囲の道路を封鎖してくれ」
『A班、了解』
『B班、了解』
『C班、了解』
　　　　　
地下へと続く階段を降りると、むせ返りそうな程の独特の甘い香りに顔をしかめた。

「B班はここで待機。A班は私に続け」

更に奥へ進むと長い通路の先に部屋を発見した。中から聞こえる微かな音と漏れ出している特有の『匂い』。

間違いない、ここだ。