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2 side C
しおりを挟む「千秋、起きろ。昼休みだぞ」
「んー…?あれ、もしかして俺寝てた?」
「がっつりな」
「雨の日って異様に眠くなるんだよねー」
いつものようにつずきくんを迎えに行こうと廊下に出ると、知らない女の子に呼び止められた。
「泉水君、ちょっと話したい事があるんだけど。いいかな」
チラリとその子の後ろを見ると、数人の女の子がこちらを見ている事に気がついた。その中心には守られるように髪の長い女の子がもじもじとしている。
その様子から何となくの察しはついた。
「それって、今じゃなきゃだめ?」
だけどごめんね。
「だめ…って訳じゃないけど、何か用事があるの?」
「うん。凄く大事な用事」
俺にとって何よりも優先したい、大切な時間。一秒だって無駄にしたくないし、一秒でも多く一緒に過ごしたい。
…なんて言ったら、君はどんな顔をするかな。
*******
「あれ…」
いつものようにつずきくんの教室を覗く。だけどいつもはいるはずの場所にその姿がない。
「あの…西条君なら多分保健室だと思います」
「え、そうなの?」
「はい」
「分かった、ありがとう!」
つずきくんと同じクラスの子にお礼を言って、急いで保健室に向かう。
どうしたんだろう。今朝会った時は普通そうだったのに…
「失礼しまーす」
小さめに挨拶して保健室に入る。先生はいないみたいだ。
…あそこかな?
一角だけ引かれているカーテン。そっと中を覗くと背中が見えた。
「つずきくん…?大丈夫?」
小さく呼びかけてみるも返事はない。顔色を見ようと反対側に回り込むと、つずきくんは苦しそうに眠っていた。
顔色が悪い。気分が悪いのだろうか。
「熱は……ないか」
熱がない事を確かめて、額から手を離すと薄くつずきくんの目が開いた。
「あ、ごめん起こしちゃった?」
「せん、ぱい…?」
「大丈夫?迎えに行ったら保健室だって聞いたからびっくりしたよ。一応つずきくんのお弁当持ってきたけど、ご飯食べられそう?」
「今は…」
「要らない?」
「ん…」
そう答える間も依然つずきくんの顔色は悪いままで。
「あっ、ちょっと待ってて」
「…?」
「あったあった。つずきくん、ちょっと頭浮かせられる?」
冷蔵庫から水枕を取り出して、つずきくんの首の下に入れる。これで少しはマシになると良いんだけど。
ベッドの縁に腰掛けて、よしよしと頭を撫でる。
「…先輩、なんか子供扱いしてませんか」
「してないよ。特別扱いはしてるけどね」
夏樹と歴にもよくしてあげるけど。それはまた別の特別だから。
「だから、それ…やだって……言……」
そのまま暫く撫で続けていると、つずきくんの目が次第にうとうととし始める。うんうん、分かるよ。こうされると眠くなるんだよね。
「お休み、つずきくん」
夢の世界へと旅立ったつずきくんの頬を最後にひと撫でする。願わくば、良い夢を。
───そうして傍を離れようとした時だった。
「………──…──」
ともすれば雨の音にかき消されてしまいそうなくらい、とても小さな声。
けれど俺にははっきりと聞こえた。
──────『うそつき』と。
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