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148.問題
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『これはっ、我の宝玉ではないか!』
地下から出てきてピラミッド型の遺跡の頂上で、ドラゴンの石像が祀られている祭壇の周りをイリゼが興奮したように飛び回る。
「ああ。それ、何か宝箱の中から出てきたよ」
『宝箱?』
「私が説明しましょう」
ルカが担いでいた赤毛とスイカ頭を下ろして、イリゼに今レールでは祭りが行われている事やその内容を説明する。
『ふむ、地上はいつの世も騒がしいようだな』
「イリゼ殿はいつからここに封印されていたのですか」
『細かい月日は忘れたが、百五十年は経っておろう』
ふーん…百五十年もこんな所にいたんだ。俺だったら暇で死んじゃうね。きっと。
『百五十年など我からしてみればほんの僅かな時間よ。うたた寝でもしておればあっという間に過ぎる』
「そんなもん?」
『そういうものだ。さて、主よ。宝玉を取ってくれまいか』
「何で」
『この宝玉は元々は我の一部なのだ。失くしたと思っていたが漸く見つけられた』
へぇ、そうなんだ。
何で失くす事になったのかは気になるところだけど、多分答えてくれないだろうから聞かないでおく。
グイッとドラゴンの石像の口から宝玉を引き抜き、イリゼに渡す。
すると、宝玉が光り出して小さくなったかと思えば、イリゼがそれを飲み込んだ。
『これで良し。感謝するぞ、主』
「それ飲み込んだら何か変化あるの」
『色々あるが、大きな変化としては人化が可能になった』
「ふーん」
『聞いておいて興味無さげだな』
まあ、だって漫画とかだとありがちだし?
「そういえば、イリゼ殿。一つお聞きしたいのだが」
『何だ』
ルカはモーニのおじさんが言っていた地震の頻発やこの土地の魔力量が徐々に減ってきている事に何か心当たりはないかと聞いた。
「特に先ほど起きた一際大きな地震など、何か知りませんか」
『地震?そんなもの我は感じなかったぞ』
「え?」
『…いや待てよ。先ほどと言ったな。それはどれくらい前の事だ』
「2時間程前です」
『………』
「なんか心当たりあるの」
『確か…それくらいの時間に寝ぼけて壁に激突したような…』
「………」
「………」
それじゃん。完璧原因それじゃん。
俺とルカからの視線に耐え切れなかったのか、イリゼが焦ったようにまくし立てる。
『そ、それはそれとして、この土地の魔力量に関してはもう心配する事はないと思うぞ』
「? 何故ですか」
『恐らくこの土地の魔力量が減ってきておったのは我がここに封印されていたからだ』
…ああ、なるほどね。
「どういう事なんだ?アメ」
不思議だったんだよね。あれだけの封印の魔法をどうやって維持させていたのか。
答えは簡単だ。この土地の豊富な魔力を使っていたから。
だけど、いくら豊富だからと言っても土地の魔力が生産されるよりも早く消費されれば、いつか均衡は崩れる。
それが、土地の魔力量の減少化の正体だったという訳だ。
「…なるほど。つまりイリゼ殿が解放された今もう封印に魔力を消費される心配はなくなったという訳か」
そういう事。…あれ、でも待てよ。これ、何て説明するの?
地下都市の遺跡に古代竜が封印されていて、地震も魔力量の減少も全部こいつのせいでした、って言うの?ここにいる小さい竜がそのご本人です、って?
「…間違いなく混乱になるだろうな」
『そのまま言えば良いのではないか?』
「そういう訳には。古代竜とは我々人間にとって神聖な生き物です。そんな存在がこんな所に封印されていたと知られれば、弱っているあなたを狙って国家が動き出すでしょう」
『ふむ…人間は相変わらず面倒くさいな』
まあ、確かに人間って面倒くさいよね。そこは同意する。
「んー…別に言わなくて良いんじゃない?」
「え?」
『え?』
だって、モーニのおじさんに相談はされたけど、解決してくれってはっきり言われたわけじゃないし。分かりませんでしたーって言っても誰も怒らないと思うけど。実際、問題は解決したようなもんだし。それを伝えないってだけで…
「それでは駄目だ」
「何で」
「確かに明確に依頼された訳ではない。だが、不安に思っている人々がいる。それを無視する事など私には出来ない」
「………」
「アメ」
「…分かったよ。好きにすれば?」
やれやれと俺が溜め息を吐くと、ルカはぱっと顔を明るくして「ありがとう」と言った。
地下から出てきてピラミッド型の遺跡の頂上で、ドラゴンの石像が祀られている祭壇の周りをイリゼが興奮したように飛び回る。
「ああ。それ、何か宝箱の中から出てきたよ」
『宝箱?』
「私が説明しましょう」
ルカが担いでいた赤毛とスイカ頭を下ろして、イリゼに今レールでは祭りが行われている事やその内容を説明する。
『ふむ、地上はいつの世も騒がしいようだな』
「イリゼ殿はいつからここに封印されていたのですか」
『細かい月日は忘れたが、百五十年は経っておろう』
ふーん…百五十年もこんな所にいたんだ。俺だったら暇で死んじゃうね。きっと。
『百五十年など我からしてみればほんの僅かな時間よ。うたた寝でもしておればあっという間に過ぎる』
「そんなもん?」
『そういうものだ。さて、主よ。宝玉を取ってくれまいか』
「何で」
『この宝玉は元々は我の一部なのだ。失くしたと思っていたが漸く見つけられた』
へぇ、そうなんだ。
何で失くす事になったのかは気になるところだけど、多分答えてくれないだろうから聞かないでおく。
グイッとドラゴンの石像の口から宝玉を引き抜き、イリゼに渡す。
すると、宝玉が光り出して小さくなったかと思えば、イリゼがそれを飲み込んだ。
『これで良し。感謝するぞ、主』
「それ飲み込んだら何か変化あるの」
『色々あるが、大きな変化としては人化が可能になった』
「ふーん」
『聞いておいて興味無さげだな』
まあ、だって漫画とかだとありがちだし?
「そういえば、イリゼ殿。一つお聞きしたいのだが」
『何だ』
ルカはモーニのおじさんが言っていた地震の頻発やこの土地の魔力量が徐々に減ってきている事に何か心当たりはないかと聞いた。
「特に先ほど起きた一際大きな地震など、何か知りませんか」
『地震?そんなもの我は感じなかったぞ』
「え?」
『…いや待てよ。先ほどと言ったな。それはどれくらい前の事だ』
「2時間程前です」
『………』
「なんか心当たりあるの」
『確か…それくらいの時間に寝ぼけて壁に激突したような…』
「………」
「………」
それじゃん。完璧原因それじゃん。
俺とルカからの視線に耐え切れなかったのか、イリゼが焦ったようにまくし立てる。
『そ、それはそれとして、この土地の魔力量に関してはもう心配する事はないと思うぞ』
「? 何故ですか」
『恐らくこの土地の魔力量が減ってきておったのは我がここに封印されていたからだ』
…ああ、なるほどね。
「どういう事なんだ?アメ」
不思議だったんだよね。あれだけの封印の魔法をどうやって維持させていたのか。
答えは簡単だ。この土地の豊富な魔力を使っていたから。
だけど、いくら豊富だからと言っても土地の魔力が生産されるよりも早く消費されれば、いつか均衡は崩れる。
それが、土地の魔力量の減少化の正体だったという訳だ。
「…なるほど。つまりイリゼ殿が解放された今もう封印に魔力を消費される心配はなくなったという訳か」
そういう事。…あれ、でも待てよ。これ、何て説明するの?
地下都市の遺跡に古代竜が封印されていて、地震も魔力量の減少も全部こいつのせいでした、って言うの?ここにいる小さい竜がそのご本人です、って?
「…間違いなく混乱になるだろうな」
『そのまま言えば良いのではないか?』
「そういう訳には。古代竜とは我々人間にとって神聖な生き物です。そんな存在がこんな所に封印されていたと知られれば、弱っているあなたを狙って国家が動き出すでしょう」
『ふむ…人間は相変わらず面倒くさいな』
まあ、確かに人間って面倒くさいよね。そこは同意する。
「んー…別に言わなくて良いんじゃない?」
「え?」
『え?』
だって、モーニのおじさんに相談はされたけど、解決してくれってはっきり言われたわけじゃないし。分かりませんでしたーって言っても誰も怒らないと思うけど。実際、問題は解決したようなもんだし。それを伝えないってだけで…
「それでは駄目だ」
「何で」
「確かに明確に依頼された訳ではない。だが、不安に思っている人々がいる。それを無視する事など私には出来ない」
「………」
「アメ」
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やれやれと俺が溜め息を吐くと、ルカはぱっと顔を明るくして「ありがとう」と言った。
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