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145.勝者のみ

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『我はこの世に一体しかおらぬ古代竜エンシェントドラゴンである。故あって、ここに封印されておる』
「何でそんな凄い竜が封印されてるの」
『それは盟約により言えん』
「盟約?ていうか、誰に封印されたの」
『それも言えん。だが、時がくればこの封印は解ける』
「その時って?」
『それは我にも分からん』
「ふーん」

何だこの埒が明かない感は。どこまでいっても平行線って感じだ。

「じゃ帰ろっか」
「え!?」
「か、帰れるのか?」

見れば、赤毛とスイカ頭はすっかりとガクブルと震えきっていた。恐怖からかスイカ頭は赤毛の陰に隠れるようにこちらを窺っている。…いつの間にそんなに仲良くなったの?

ここにもう用はないとばかりに扉に向かおうと踵を返した瞬間、何故か扉が勢いよく独りでに閉まった。

「え、な、何で閉まったんだ?」
「おい、開かないぞ!」

赤毛とスイカ頭が扉を押したり引いたりする。けれど、扉はびくともしなかった。…なーんか嫌な予感がするなぁ

「もしかしてだけど、ここの秘密を知ったからには生きて返さないみたいな展開だったりする?」
『よく分かっておるではないか。そうだ、我がここにいる事を外の者に知られる訳にはいかん。ここから出たければ我を倒すしかない』

だってさ。

「そ、そんなの無理に決まってるだろ!いくらアメくんとルカが強いからって…!」
「相手はドラゴンなんだぞ!?」
「………」

息の合ったまくし立てにイラッとして、思わず睡眠魔法を行使。直ぐに二人はどさりと地面で寝始めた。

『ほう、仲間割れか?』
「邪魔だったからね」

それに、これで心置きなく俺も力を解放できる。
ローブを脱いで、ルカに投げ渡す。

「アメ?」
「それ、持ってて。あと、ルカはそこで見てて」
「! しかし、」
「しかしも案山子もないの」

ただの人間がいると邪魔なの、分かるでしょ?

「…っ」

分かったら、そこで寝こけてる二匹のお守りでもしてて。

『一人で我に挑むつもりか、人間』
「そうだけど?あと、残念だけど、俺、人間じゃないんだよね」
『何?』

一気に魔力を解放して、魔王化する。今回はドラゴンの羽を真似て作った翼付きだ。

『! その姿…まさか魔王か!』
「正解」

ニッコリと微笑んで肯定してあげる。いつから封印されてるか知らないけど、魔王の存在は知ってたみたい。

『だが、そなたは確か先の勇者に──』
「あー違う違う。それは先代の魔王。俺はその息子」
『息子、だと?』

何かこのやり取り、久しぶりだな。

「そうそう。んで、現魔王ね。宜しく」

バサァと、ドラゴンさんの目線の位置まで飛び上がる。

「じゃあ、始めよっか」

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