チート魔王はつまらない。

138.代理 sideアメ

ルカの香りは何ていうか落ち着く。
そんなに離れてなかったはずなのに、今は凄く懐かしく感じる。何でだろう。

「無事で良かった」

心の底から安堵したと言わんばかりの声。

「怪我はないか？」
「当たり前でしょ」

ノーダメージクリアだよ。…あ、でも。

「靴捨てちゃったからちょっと足の裏がヒリヒリするかも」
「靴を？」
「うん。虫やっつけた時に血が付いちゃったから捨てたの」
「そうか」

あと、

「一応言っとくけどあとの二人も無事だよ」

ルカに抱っこされながら後ろに振り向くと、呆然とした顔をしてるスイカ頭の所へ
赤毛が向かっているところだった。

それに続いてルカも歩き出す。…ていうか俺抱っこされてるまんまだけど。

「ルカ、降ろしてくれても良いよ」
「駄目だ」
「？　何で」
「裸足だと危ない。怪我したらどうするんだ」
「………」

過保護かっ。

そのままルカはスイカ頭と赤毛の前を通り過ぎて、俺を石段に座らせた。しかもご丁寧に俺の足が地面につかないように自分の膝の上に乗せて。

取り敢えず何をするのか見ていると、ルカは懐から綺麗な布を取り出した。それを割いて俺の足に巻き付けていく。

「よし。これで大丈夫だろう」

ぴっちり綺麗に巻かれた布。足を動かしても全然緩まないし、きつくもないという絶妙な力加減。性格がにじみ出てる。

少し離れた所で、何やらふるふるとしているスイカ頭の肩に手を置く赤毛の姿が見えた。