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しおりを挟む「やっぱ庶民の学校は狭いな」
「そういえばこっちの方ってあんまり来た事ないよね」
興味深いといった様子で物珍しげに校舎のあちこちを見回す砂酉。恐らく地図であろうメモを片手に先行する祭月。
「あった。ここだね」
校舎裏の花壇に面した空き教室。ここがその例の部室らしい。
ガチャッと鍵を開ける。
「たのもー!」
「誰に頼むんだよ」
「一回言ってみたかったんだよね~。うわー凄い、植物がいっぱいだ」
ガラッと勢い良く扉を開け放ってはしゃぎながら入っていく祭月に続いて足を踏み入れると
視界に飛び込んできたのは、室内を所狭しと埋め尽くしている観葉植物だった。
念のためもう一度言っておこう。ここは『室内』だ。
祭月は兎も角としても、これを見ても動じない砂酉は「うちにも植物園があるから見慣れとる」だそうだ。
「…あれ?珍しいな、人がいる」
落ち着いた、けれどよく通る声。
振り向くと、入口に如雨露を持った男子生徒が立っていた。
ネクタイの色から見るに、どうやら二年生らしい。
「ああ、もしかして先生が言っていた新入部員って君達の事かな」
可憐な花のような笑みだった。上品とはまさにこの事を言うのだろう。
「那月君と祭月君、だよね?僕は天草っていいます。2年生です。宜しくね」
おっとりとした話し方で、動きは少ないが
ゆったりとした雰囲気からは育ちの良さが十二分に伝わってくる。
「あれ?でも新入部員は2人って聞いてたんだけど…」
「あ、そうだ。イッちゃーん」
「イッちゃん?」
祭月が呼ぶと部屋の隅の方の植物を見ていた砂酉は振り向いた。
「…藤乃?」
黒灰色の目が、これでもかと見開かれていく。
「え…漁?」
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