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何のやる気も起きなくて、ベッドに倒れ込んだ。
白い壁紙と対峙する俺の手には黒い画面のスマホ。
時折ホーム画面にしては、映るデジタル時計の表示を見つめている内に液晶はまた光を失う。
そんな夢現(ゆめうつつ)な状態で同じ動作を繰り返し続けていた。
あの後、祭月は結局放課後になっても戻ってくる事はなかった。
荷物もそのままで、仕方がないから俺が預かって帰ってきたのだが
「…………」
聞くべきか否か。
アイツの連絡先はこの間家に行った日に交換したばかりだ。
…電話どころかまだ一文もやり取りをしていないのが現状なのだが。
何故か押そうする度に、朝の出来事が思い出されてそれを躊躇させる。
「荷物預かってるって言うだけだろ…」
別にアイツが誰と知り合いだろうが俺には関係ない…はずだ。
「何か釈然としねえんだよなぁ…」
はっきりとない心内を零した、その時だった。
「!」
突然手の中の物が震え始め、危うく取り落としそうになる。
あまりにタイムリーに表示された名前にどこからか見ていたのではないかと馬鹿な事を思いながら、応答を選択して耳に当てた。
「…はい」
『あ、もしもし那月君?こんばんは』
「…おう」
電話越しに聞こえてくる祭月の声に、何故だかほっとしたのを感じた。
『ごめんね、いきなり電話して。今大丈夫だった?』
「先に確認したら良かったね」と付け加えたその声は、少しだけいつもより沈んでいるように聞こえた。
そう感じたけれど、その事について特に追究せずに「大丈夫じゃなかったら出ない」と応えると
安堵したような声が返ってきた。
『…そっか。特に用はないんだけどね、何か今那月君の声聞きたいなって思ったんだ』
「…は?」
てっきり真琴辺りにでも聞いて、荷物の事で連絡してきたのだろうと思っていた。
「…そうかよ」
俺の声なんか聞いて何になるんだと聞きたかったが、上手く返せなくて、結局そう応えるしかできなかった。
『うん♪そうなのです。あ、今ちょっとドキッとした?』
「うっせ、してねぇ」
『ふふふ~そっかそっかー』
「だから違うって…おい、聞いてんのか」
何か盛大な勘違いをしている奴にすかさず訂正を入れるが、聞く耳を持とうとしない。
というより、会話が成り立たない。
けれど、そのやり取りで戻った雰囲気に
まあ(どうでも)いいかと諦めた。
「あー…そういや俺お前の荷物預かってんだけど」
『え、そうなの?わーありがとう!』
「いや別に良いけど…」
『あー…でもどうしようかなぁ』
「? 何が」
『イッちゃん…あ、今日来た人ね?さっきまで一緒にいたんだけど』
「…さっきまで?」
…朝から今の今まで?
何か、胸の奥がざわつくのを感じた。
『? おーい、那月くーん?聞こえてる?』
返事をしなくなった俺を呼ぶ声のすぐ後ろで、車が通る音がした。
「…今どこだ」
『へ?今?…えーっとね、もうすぐで家の近くの公園に着くよ。それがどうかしたの?』
「分かった。直ぐ行く」
言うと同時に上着を掴んで、扉に手をかけていた。
「お前の荷物持って行くからそこで待ってろ」
『え、ちょ、那月く…』
何かを言い掛けているその先は聞かずに通話を切る。
理由も分からない焦燥感に駆り立てられるまま、家を出た。
白い壁紙と対峙する俺の手には黒い画面のスマホ。
時折ホーム画面にしては、映るデジタル時計の表示を見つめている内に液晶はまた光を失う。
そんな夢現(ゆめうつつ)な状態で同じ動作を繰り返し続けていた。
あの後、祭月は結局放課後になっても戻ってくる事はなかった。
荷物もそのままで、仕方がないから俺が預かって帰ってきたのだが
「…………」
聞くべきか否か。
アイツの連絡先はこの間家に行った日に交換したばかりだ。
…電話どころかまだ一文もやり取りをしていないのが現状なのだが。
何故か押そうする度に、朝の出来事が思い出されてそれを躊躇させる。
「荷物預かってるって言うだけだろ…」
別にアイツが誰と知り合いだろうが俺には関係ない…はずだ。
「何か釈然としねえんだよなぁ…」
はっきりとない心内を零した、その時だった。
「!」
突然手の中の物が震え始め、危うく取り落としそうになる。
あまりにタイムリーに表示された名前にどこからか見ていたのではないかと馬鹿な事を思いながら、応答を選択して耳に当てた。
「…はい」
『あ、もしもし那月君?こんばんは』
「…おう」
電話越しに聞こえてくる祭月の声に、何故だかほっとしたのを感じた。
『ごめんね、いきなり電話して。今大丈夫だった?』
「先に確認したら良かったね」と付け加えたその声は、少しだけいつもより沈んでいるように聞こえた。
そう感じたけれど、その事について特に追究せずに「大丈夫じゃなかったら出ない」と応えると
安堵したような声が返ってきた。
『…そっか。特に用はないんだけどね、何か今那月君の声聞きたいなって思ったんだ』
「…は?」
てっきり真琴辺りにでも聞いて、荷物の事で連絡してきたのだろうと思っていた。
「…そうかよ」
俺の声なんか聞いて何になるんだと聞きたかったが、上手く返せなくて、結局そう応えるしかできなかった。
『うん♪そうなのです。あ、今ちょっとドキッとした?』
「うっせ、してねぇ」
『ふふふ~そっかそっかー』
「だから違うって…おい、聞いてんのか」
何か盛大な勘違いをしている奴にすかさず訂正を入れるが、聞く耳を持とうとしない。
というより、会話が成り立たない。
けれど、そのやり取りで戻った雰囲気に
まあ(どうでも)いいかと諦めた。
「あー…そういや俺お前の荷物預かってんだけど」
『え、そうなの?わーありがとう!』
「いや別に良いけど…」
『あー…でもどうしようかなぁ』
「? 何が」
『イッちゃん…あ、今日来た人ね?さっきまで一緒にいたんだけど』
「…さっきまで?」
…朝から今の今まで?
何か、胸の奥がざわつくのを感じた。
『? おーい、那月くーん?聞こえてる?』
返事をしなくなった俺を呼ぶ声のすぐ後ろで、車が通る音がした。
「…今どこだ」
『へ?今?…えーっとね、もうすぐで家の近くの公園に着くよ。それがどうかしたの?』
「分かった。直ぐ行く」
言うと同時に上着を掴んで、扉に手をかけていた。
「お前の荷物持って行くからそこで待ってろ」
『え、ちょ、那月く…』
何かを言い掛けているその先は聞かずに通話を切る。
理由も分からない焦燥感に駆り立てられるまま、家を出た。
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