Estrella

4-29

「…は？」



俺は今日、この反応を何回すれば良いのだろう。



「んー…、それがさぁ俺にもよく分かんないだよね…」
「どういう事だよ」


うーんと頭を抱える薄茶色に、疑わしげな視線を向けると
ゆっくりと説明し始めた。


「いやー、ほらさっきも言ったでしょ？俺ノンケだから、普通に女の子が好きだよ？って言っても、三次元の女の子に興味なかったから二次元の女の子限定だったけど(笑)まあ、いわゆるオタクだね」


それはそれでどうなんだ。


「別に根っからリアルの女子が嫌いって訳じゃないから、話せる子は話すよ？でもやっぱり『そういう対象』としては関心持てなくてさ。けど二次元があれば良いやって思ってたから別に気にしてなかったんだけど」
「おい。」


そこは気にしろよ。


「けどね、那月君は何か違ったんだ。
君と初めて会った時、好きって、感じたんだ。
…ああ、目を奪われるってこういう事を言うんだなぁって思ったよ」


長い睫毛に縁取られた眼を愛おしげに伏せて、祭月は自分の胸の上に掌を当てた。


「何て言うか…一瞬で俺の全部が持っていかれた、っていう感じかな？
ドキドキして、そわそわして、ふわふわで落ち着かない。
こんな気持ちになったの、生まれて初めてなんだよ？」


ゆっくりと瞼を上げて、仄(ほの)かに甘い色を宿したような薄茶色の瞳が俺に注がれる。


「那月君に会えたら嬉しくて、声を聞けたら幸せで、一緒にいるだけでココが一杯になるんだ。…これが『恋』してるって事なんだって分かった。だから、これは俺の初恋なんだよ」
「…っ」







その瞬間零した笑顔が


今までに祭月が見せてきたどのそれよりも


穏やかで、幸せそうで




不覚にも見惚れてしまった。