炎のように

369.愛しい存在

「怒らないのか、か…。そうだな、確かにショックだったな」
「………っ」


泣くな。
俺が泣く理由なんて無い。


またじわりと滲んできたものが落ちないように耐え忍ぶ。


「…嫌わないよ、嫌えない。
あんな辛そうな顔で、俺から離れてまで守ろうとしてくれたお前をどうして嫌いになんかなれる」



…………え？



俯いていた顔を上げると、そこには慈しむような眼差しがあった。


「お前に『関係ない』と言われた時は確かに落ち込んだが、別に怒ってはいない。
あれがあったから覚悟を決める事ができた。
だから寧ろ感謝していると言っても良い」

「かん…しゃ？」


酷い事を言ったのに、どうして感謝なんかされるのだろう。


「そんな大層な理由なんて無いんだ。ただお前に傷付いてほしくない…それだけだ」
「…！」
「全部一人で背負い込もうとするな。頼むからもっと俺を頼ってくれ、もっと自分を大事にしてくれ。…お前が傷付く事の方が何倍も辛い。お前が居なくなってしまう事が何よりも…怖い」
「……っ」


こつんとお互いの額が合わせられて、






「好きだ。お前が、好きだ」






告げられた言葉に、時間が止まったような気がした。




「人としてでも、友としてでもない。俺は、お前を愛してる。だから、俺にお前を守らせてくれ…」




その言葉を吹き込むように、優しく唇が重ねられた。