炎のように

253.びっくりした

「はぁ…なんで出しちゃったかなー俺…」

廊下の端にうずくまって、一人ごちる。

「何を出したんだ？」
「そりゃ俺の………って、え？」

尋ねられた質問に普通に答えようとして、ふと気付く。
俺は今誰に答えようとしているのだと。
顔を上げれば

「こんな所で何をやってるんだ？アズライト」
「ヴィント様！？」

不思議そうな顔をして、俺を見下ろしているヴィント様がいた。

「あー、いえ…その、まあ色々と…」

ハハ…と乾いた笑いを零しながら、急いで立ち上がる。

「ヴィント様こそ、どうしたんです？彼についてなくて良いんですか？」

ヴィント様には申し訳なかったけれど、これ以上何か聞かれる前に誤魔化した。

「今はユアンについて貰っている。用が済めば俺もすぐ戻るつもりだ。」
「用事、ですか？」

何の、と聞こうとするよりも先にヴィント様が口を開いた。

「アズライト、頼みがあるんだ。」