終の九生

碧月 晶

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(十三)

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………………神?


一瞬、頭の中に変な宗教的な人の姿が思い浮かんだ。


「…お主、何か違う事を考えておるな?」
「へ!? そ、そそそんなコトは」
「では質問を変える。神やあやかし、霊のようなこの世ならざる者が本当に存在し得ると思うか」
「ああ、そういう…えっと神ってあの神様、だよね?」
「それ以外に何がある」
「んー、そうだなぁ…。信じてるか信じてないかって聞かれたら多分信じてないって答えるんだろうけど。でも、お参りとかお墓参りもするし、神社に行ったらお賽銭とか御守りも買っちゃうし……って事は少なくとも神様とか幽霊の存在を認めてるって事だよね?なら、いるんじゃないかな?見えないだけで。……って思うんだけど、ど、どうかな」


気が付けば長々と語ってしまっていた自分に気付き、恥ずかしさを覚え、急いで顔を上げると

彼は意外そうなものを見るような目で俺を見ていた。


「驚いた。この時代の人間にもまだそんな考えを持つ者がおったのか」


これは褒められていると受け取っても良いのだろうか。


「…えーと、それで神様がどうしたの?」


それを突っ込むとまた藪蛇になりかねないので敢えて聞かずに、知りたいという欲求を優先した。


「その神によって作られたのがワシじゃ」
「………………………え!?」
「いきなり大声を出すでない」
「だっ、えええだってそれって…え、え?じゃあ八代君って神様なの?っていうかいくつ!?」
「落ち着かんか阿呆。人の話を聞いておったのか。ワシは作られたと言ったじゃろうが」
「あ、そ、そか…」


じゃあ神様ではない、のか?いやでも神様に作られたんだったらそれに近い?


「年は…そうじゃな、この肉体を得てからはせいぜい二十そこいらじゃったと思うが…ワシが知る時代から500年は経っておる」
「ご、ごひゃくねん!?」
「この世の歴史上で言うならば徳川…じゃったか、その一族が政権を握り始めた頃よ」
「そ、な、ええ…」


突拍子もない発言に目玉が飛び出そうな程驚く。
変に心拍数が跳ね上がった心臓を落ち着かせる暇もなく彼は続ける。


「お主『輪廻転生りんねてんせい』という言葉を知っておるか」
「りんね…?」
「それは知らんのか」
「ご、ごめん」


がっかりさせてしまっただろうかと声を落とす彼に慌てて謝る。


「謝らんでも良い。『輪廻転生りんねてんせい』とは、命あるものの魂は全て、輪廻りんねの輪によって巡るという思想じゃ」
「りんねのわ?」
「この世の生きとし生けるものは全て『肉体』と『魂』で成り立っておる。そして、死す時その魂は肉体から剥離し、あの世へと還る」
「あの世…?天国とか地獄じゃなくて?」
「無論それらも存在する。ただワシはそのどちらにも属しておらん」
「でも神様に作られたって…?」
「ワシの言う神とは唯一神のようなものではない。この世の神社や仏閣などで神や仏として祀られておる方じゃ」
「えっと…お勤め先が違うって事?」
「まあ…その認識でも良いじゃろう」
「あ、ありがとう…」


渋い顔をされてしまった。


「この世界には、お主ら生者が住まう『この世』と死者の魂が行く『あの世』が存在しておる。天国とはその名の通り天にあり、こちらでは極楽浄土ともいう。地獄とはあの世で罪人を裁く機関じゃ。そして、更に独立した機関『六道りくどう』が存在する」
「あ、それが八代君のお勤め先?」


そう言うと、彼にまたもや意外そうなものを見るような目を向けられた。




───────────
※あくまで作者の創作です。これが正しいという訳ではありません。
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