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1章 隠密令嬢(?)とリア充令息
あの場にいなかった攻略対象達 Ⅰ
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「今頃、殿下による爆弾発言に皆さん驚いているんでしょうね。」
あの場にいなかった殿下の配下の一人、ラム公爵家嫡男ジョゼフが一人失笑した。
「皆さん、殿下の変態は今に始まった事ではないんですよ?」
何故殿下の粘着質な裏側の顔をこの男は知っているのか。
――関わりをもった者しか知らない事実だからだ。
殿下が男色ではないか、という噂は普通に広まっている。だが、これといって殿下の目に留まった人物は今まで表沙汰にされてこなかった。理由は簡単だ。イジメ同様、被害者が声を上げなければ騒ぎにはならないからだ。
そう、被害者はきちんといるのだ。
ただ、例外なのがこの男、ジョゼフ・ラム。
彼は殿下の好みのタイプであったが、襲われそうになったのを唯一完膚なきまでに叩きのめしたのだ。性的暴行未遂の加害者は一応…仮にもこの国の王子、王族だ。殿下自身もまさか自分より弱い立場の者が反撃するとは思っていなかったのだ。
ジョゼフ・ラムは儚げな美人という見た目とは真逆の人間だった。
線は細いが力持ちで体術・剣術ともに右に出る者はいない。そして、頭がキレる。彼を侮った者は一生頭が上がらなくなる。これは今ではちょっとした伝説になっている。
それもそのはず。殿下が見せしめにあったからだ。
ジョゼフが襲われそうになった当時、彼の腕は既に誰よりも強かった。それも、騎士達の憧れになるくらいには。それを知らなかった殿下がジョゼフに一目惚れし付き纏っていたのだ。騎士団の皆が注目していた。ジョゼフは殿下をどうあしらうのだろうか、と。
その結果、ジョゼフは明確に襲われかけた時に殿下を一撃で沈めた。手刀で殿下の首に。
その一撃とその前のやりとりの現場を見た者はいないが、殿下が泡を吐いていて、それを使用人達が担架で運ぶ様を。ジョゼフが殿下に向けた冷酷なまでの笑みを、騎士団の多くの者や文官達、他の使用人達が見ていた。
噂は上がった。ラム公爵家子息であるジョゼフ様が殿下を締め上げた、と。
流石に証拠不十分で、すぐに消えるかと思われていた噂も、翌日のジョゼフと殿下のやりとりで噂でも幻でもない事が判明した。殿下がジョゼフに対して怯えていて、いつもの傲慢な態度が鳴りを潜めていた。そして、ジョゼフの発言の一部が彼ら観衆の耳に届いた。
”殿下。貴方は尊き王族の血を受け継いでいて、誰もが貴方を立てて褒めそやすのでしょうね。ですけどね、残念な事に、私は貴方を失脚する力を持っているんですよ…言ったら分かりますよね?私はいつでも貴方の大事なものを切り落とす事もできるんですよ?貴方は王位継承権第一位の立場にいるだけで、後継者は貴方じゃなくていいですし、国王様も貴方の身柄を私に引き渡してくれますよ。国王の信頼を得ている私に。だけど、そうですね。貴方が王族である事、それか身体の象徴のどちらか失った場合、その時は男色が集まる娼館に入れるよう手はずをつけておきます。大丈夫。貴方は顔は美しいですから、可愛がってもらえますよ。…――どうですか。言わないというなら、貴方の配下とは名ばかりの私の下僕にしてあげますよ。そして、貴方の王位が揺るがない事をお約束します。
大丈夫。私を怒らせなければ誤って切り落とす事なんてありませんから、ね”
ジョゼフが真の強者である事、目をつけられたら自分が粉々…いや、徹底的に地獄を見せられる事。
誰もが彼に恐怖心を抱いた。
その後、殿下は危ない遊びを辞め、被害者は出なくなった。これはジョゼフが意図してやった事でもある。だが、殿下は夢を捨てていなかった。いつか好きな男と寄り添える事を。彼自身、男同士で子供が産めるとは知らないが。
「殿下は忘れているんでしょうね。王族でなくなるか、象徴を切り落とされるか。それを、彼を娼館に送り込む条件にしましたが、私を怒らせなければ、と私が追加した条件を。」
ジョゼフは殿下が意のままに動くように、公務に関しても外交などにしても的確な指示を出してきた。殿下の頭が良さそうに見える行動の殆どはジョゼフが生み出したものだ。彼は、あくまで殿下を国王とし、影ながらに支えるつもりでいる。
殿下に出した条件は全て繋がっている。男である象徴を失えば後継者を残せなくなる。すなわち、王位継承権がなくなる。男女、もしくは男同士でも子供は産むことができる。だが、子供に王族の血が流れていなくてはならない。便利な事に、子供の親を識別する魔法は存在しているから、ごまかしは効かない。男である殿下は象徴を失った時点で王族でなくなる。普通なら、王位継承者でなくなるだけだが、ジョゼフがそう手はずを整えている。
そこで一旦戻ろう。
殿下が象徴を切り落とされるとしたら、ジョゼフを襲おうとした事を発言した場合だ。
だが、ジョゼフの最後の発言から判断すれば、怒らせたら、という条件も含まれている。
今回の、黒髪黒目の少年が殿下に狙われている件がジョゼフを怒らせる要因にならないといいですね。
あの場にいなかった殿下の配下の一人、ラム公爵家嫡男ジョゼフが一人失笑した。
「皆さん、殿下の変態は今に始まった事ではないんですよ?」
何故殿下の粘着質な裏側の顔をこの男は知っているのか。
――関わりをもった者しか知らない事実だからだ。
殿下が男色ではないか、という噂は普通に広まっている。だが、これといって殿下の目に留まった人物は今まで表沙汰にされてこなかった。理由は簡単だ。イジメ同様、被害者が声を上げなければ騒ぎにはならないからだ。
そう、被害者はきちんといるのだ。
ただ、例外なのがこの男、ジョゼフ・ラム。
彼は殿下の好みのタイプであったが、襲われそうになったのを唯一完膚なきまでに叩きのめしたのだ。性的暴行未遂の加害者は一応…仮にもこの国の王子、王族だ。殿下自身もまさか自分より弱い立場の者が反撃するとは思っていなかったのだ。
ジョゼフ・ラムは儚げな美人という見た目とは真逆の人間だった。
線は細いが力持ちで体術・剣術ともに右に出る者はいない。そして、頭がキレる。彼を侮った者は一生頭が上がらなくなる。これは今ではちょっとした伝説になっている。
それもそのはず。殿下が見せしめにあったからだ。
ジョゼフが襲われそうになった当時、彼の腕は既に誰よりも強かった。それも、騎士達の憧れになるくらいには。それを知らなかった殿下がジョゼフに一目惚れし付き纏っていたのだ。騎士団の皆が注目していた。ジョゼフは殿下をどうあしらうのだろうか、と。
その結果、ジョゼフは明確に襲われかけた時に殿下を一撃で沈めた。手刀で殿下の首に。
その一撃とその前のやりとりの現場を見た者はいないが、殿下が泡を吐いていて、それを使用人達が担架で運ぶ様を。ジョゼフが殿下に向けた冷酷なまでの笑みを、騎士団の多くの者や文官達、他の使用人達が見ていた。
噂は上がった。ラム公爵家子息であるジョゼフ様が殿下を締め上げた、と。
流石に証拠不十分で、すぐに消えるかと思われていた噂も、翌日のジョゼフと殿下のやりとりで噂でも幻でもない事が判明した。殿下がジョゼフに対して怯えていて、いつもの傲慢な態度が鳴りを潜めていた。そして、ジョゼフの発言の一部が彼ら観衆の耳に届いた。
”殿下。貴方は尊き王族の血を受け継いでいて、誰もが貴方を立てて褒めそやすのでしょうね。ですけどね、残念な事に、私は貴方を失脚する力を持っているんですよ…言ったら分かりますよね?私はいつでも貴方の大事なものを切り落とす事もできるんですよ?貴方は王位継承権第一位の立場にいるだけで、後継者は貴方じゃなくていいですし、国王様も貴方の身柄を私に引き渡してくれますよ。国王の信頼を得ている私に。だけど、そうですね。貴方が王族である事、それか身体の象徴のどちらか失った場合、その時は男色が集まる娼館に入れるよう手はずをつけておきます。大丈夫。貴方は顔は美しいですから、可愛がってもらえますよ。…――どうですか。言わないというなら、貴方の配下とは名ばかりの私の下僕にしてあげますよ。そして、貴方の王位が揺るがない事をお約束します。
大丈夫。私を怒らせなければ誤って切り落とす事なんてありませんから、ね”
ジョゼフが真の強者である事、目をつけられたら自分が粉々…いや、徹底的に地獄を見せられる事。
誰もが彼に恐怖心を抱いた。
その後、殿下は危ない遊びを辞め、被害者は出なくなった。これはジョゼフが意図してやった事でもある。だが、殿下は夢を捨てていなかった。いつか好きな男と寄り添える事を。彼自身、男同士で子供が産めるとは知らないが。
「殿下は忘れているんでしょうね。王族でなくなるか、象徴を切り落とされるか。それを、彼を娼館に送り込む条件にしましたが、私を怒らせなければ、と私が追加した条件を。」
ジョゼフは殿下が意のままに動くように、公務に関しても外交などにしても的確な指示を出してきた。殿下の頭が良さそうに見える行動の殆どはジョゼフが生み出したものだ。彼は、あくまで殿下を国王とし、影ながらに支えるつもりでいる。
殿下に出した条件は全て繋がっている。男である象徴を失えば後継者を残せなくなる。すなわち、王位継承権がなくなる。男女、もしくは男同士でも子供は産むことができる。だが、子供に王族の血が流れていなくてはならない。便利な事に、子供の親を識別する魔法は存在しているから、ごまかしは効かない。男である殿下は象徴を失った時点で王族でなくなる。普通なら、王位継承者でなくなるだけだが、ジョゼフがそう手はずを整えている。
そこで一旦戻ろう。
殿下が象徴を切り落とされるとしたら、ジョゼフを襲おうとした事を発言した場合だ。
だが、ジョゼフの最後の発言から判断すれば、怒らせたら、という条件も含まれている。
今回の、黒髪黒目の少年が殿下に狙われている件がジョゼフを怒らせる要因にならないといいですね。
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