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2章 神と魔の悪戯
編入当日 凡人(モブ)と有名人
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ドッキドキの編入初日を迎え、思いっきり遅刻してしまった。
案内人が来るという学園入り口で待っていた所、指定の人物――金髪のイケメンで赤マント着用――は現れなかった。
学生は黒マントだし学園の教師かなと思いながら、学園ゲートを監視している警備員のおじさんに探し人の特徴を伝えてみたら、
「ああ、今日は見かけてないね。職員会議が押してるのかもしれないから、待ってると遅刻するぞ、坊主。」
「そうですか。助かりました。助言通り、先を急ぎます。」
「おう、迷子になるなよ?」
おじさんに会釈して学生証を翳した先の真っ白な玄関をくぐり、学園に入った。
編入試験の時も急いでる今もまともに探検できないけど、道を知らなかったら警備のおじさんの言う通り迷子になっていたかも。自慢では…あるけど、一度通った道はすぐ覚えられるし、頭の中に地図があるみたいに的確に目的地に辿り着けるんだよね。前世からの特技は健在のようです。
「――ここが、クラス・ゼイド。」
この世界共通言語シュトラ語で書かれたプレートを確認して扉に手を掛けた所で、廊下の向こう側から声を張りながら走ってくる人に呼び止められた。
「あああ~ちょ~っと待って!扉開けないでぇ~!」
「えっと…?」
近づいてきた人物は如何にも気が弱そうなもやし人間のイメージそのもので、白マントがダボダボに見える。
私と扉の間にスライドしてきて、扉前の空中で手を振りかざして小窓を出して見せた。そこには、本日のミッションと表記されていて、慣れた調子でポンポンと小窓を出しては消すを繰り返している。
だけど、それはチャイムが鳴っても終わらなかった。
「ふぅ~、やっと終わったぁ。」
白マントの彼は肩を回しながらようやく私の存在に気付き、辺りを見回して私を数秒凝視してオーバーな動作で手を叩いた。
「!あ~、君は編入の子だよね。…今日だったか~。あの子らへの説教が先だよね。う~ん……数分待ってて。ちょっとシバいてくるから。」
柔和な顔で毒を吐く様子はどこか頼もしいなと感心していると、扉が高速で開閉し、次には廊下まで届く怒声が聞こえてきた。
ほえ~、おっかなそう。
説教は軽く数分は超え、うつらうつらしていると、扉がゆっくり開いた。
あ、入れって事ね?
扉をくぐると、薄いバリアを通過した感覚を肌で感じ、教卓とそこに立つ白マントの彼と、席に座った28人の生徒からの視線が一気に注がれた。
「はいはい、皆さん注目。…って、いやいやギラギラした目は仕舞って!もっとこう、ウェルカムなムードで迎えて。…――オッホン。編入生の君、いつでもどうぞ。」
「…はい。」
この場合、先生が一番好意的なのかな。
…そんな訳ないか。名前も覚えてなさそうだし。
殺気が頭に刺さる中、全体を見渡してから口を開いた。
「皆さん、初めまして。私、シリル・バロンは本日からこのクラス・ゼイドに編入します。至らない点で度々ご迷惑をかける事になるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。」
一気に言葉にして、左胸に手を当てお辞儀をするとザワッと場が沸いた。
「えっ。あれが、宮廷魔術師セレスタン・バロン様の一番弟子…?」
「おい、嘘だろ。あんなひょろい野郎が、今巷で噂の新星だっていうのかよ!信じらんねぇ。」
「セレスタン様と同棲しているだなんて許せない!最近断られてるのってあの女狐のせいね!」
「そこは同棲ではなく、居候ですよ。それにどう見ても男です。これだから噂で早とちりする奴は社交界で出遅れるんですよ。…あ、失礼?手に負えない猛獣に可愛げを感じる男は居ませんからね。」
「何ですって!?インテリ眼鏡、表に出なさい。決闘ですわ!」
「皆さ~ん、ちょっと落ち着いて。現実に戻ってきてくださ~い。」
先生の頼りない声はあっさり聞き流され、私はと言うと、ヒートアップした彼らの間を通り、先生に指定された席にドカッと座った。
隣の男子生徒は目を丸くして何か言いたげな視線を送ってきた。
「はぁ~。もう、時間が押しちゃうから、始めちゃいますよ?」
「――モルバ先生。遅刻してすみません。」
先生の緩い声で授業が開始されようとする最中、凛とした声が響いた。
長い栗色の髪がゆるく三つ編みに纏められ、黒マントや体の周りに可視化された魔素を揺蕩わせたまま少女が空中から突如現れた。
手で魔素を払う動作は雑だけど、所作や佇まいに品があり、目元を覆う前髪を恨めしく思った。きっと可愛いんだろうな。
それを、まさか声に出していたとは知らず。
「おい、バカ。お前には彼女は無理だろうよ。彼女は、あのエインズワース伯爵家の秘宝、カルディナ・エインズワース様だぜ?俺らだって滅多に話せないんだからな。」
「え、話しかければいいじゃないですか。」
「お前、ほんとバカだな。このクラスで一番の階級で筆記・実技共にトップの成績の彼女に、おいそれと話しかけられるかよ。」
隣の男子はヘタレね。それとは別に情報ありがとう。
彼女、カルディナさんってハイスペックで敬遠されちゃってるんだ。何かもったいないなぁ。できれば友達になりたいタイプだし。
「エインズワースさん、おはようございます。遅刻なんて気にしなくていいですよ。貴方の成績なら留年なんて事もないですし、今日はもう一人遅刻者居ますから。」
え、先生。今、遅刻者って言う時、こっち見た?
嘘でしょ。先生が何かしてる間、廊下で待ってたけどそれも遅刻扱い!?!惨い。
「…そう、なのね。中断させてしまってすみません。どうぞ始めて下さい。」
先生の視線を辿ってか彼女と一瞬目が合った気がした。
これが、凡人と有名人の違いかぁ。――なんて事を考えていたけど。
「シリル君っ、君とは同志になれると思っていたよ!」
「あの、先生。一旦落ち着いて――」
「落ち着いてなどいられるか!君は真にセレスタン・バロン殿の一番弟子だッ。卒業後は是非我が市部魔術省に就職してほしい。給料は弾むよ!何せ僕が責任者だからね!」
授業が終了する鐘が鳴り終わった後、モルバ先生に捕まり、先生管轄の市部魔術省へのスカウトを強引にされていた。
思わず先程のやり取りを思い出してしまう。
モルバ先生による授業は、魔術工学に関するもので、様々な事象を簡単に紐解いて解説がされていた。
「――と、こういった場合は、空気中の魔素の濃度以上に気をつけないといけない事があります。…分かりますね、エインズワースさん。」
「…はい。水関連の魔術を使用する際、空気中の水成分や支燃剤の存在が暴発の原因になります。」
「そうです。皆さんの中で火や水の魔術を扱う割合が大きく占めている訳ですが、空気中の成分を見極めず誤って魔術を暴発させるといった経験は以前の実技でやりましたね?それを防ぐためにはまず、魔素を可視化して分類する方法が挙げられます。」
バロンさんに編入でも授業についていける筈だとは聞いてたけど、確かに難しくはないね。それより気になるのは、前世みたいに名称がついてない事。水素と酸素とか、そもそも科学だけじゃなくて化学も発達してないとか?それに一般的な名称を決める事とかすごい名誉じゃん。誰かやろうよ。
・・・・・・・・・。
モルバ先生の説明から考えるに、化学反応による事象そのものやリスクへの理解はあるけど、いまいち掴めないな。図や公式は使わず、検証時の映像を見せるだけだから、皆感覚でしか覚えられないと思うんだけど…。
これを座学と呼んでいいのやら。
「シリル・バロン君。聞いていますか。」
「えっ!…あの、もう一度お願いします。」
周りから嘲笑を含むバカにした視線を送られてしまった。
「分かりました。えぇ、まず、今まで水と空気による爆発を議題にしていましたね。そして我々魔術師がフィールドで魔術を使う際によく起きる事象の対策も二点お伝えしました。では、魔術を使う空間を定めない場合、何故暴発の規模が変わるのでしょうか。」
あ~、そうだよね。
普通、この実験は密閉空間のあるフラスコとか容器でやるもんね。
「はい。簡単な事です。私達が予め張っている結界が魔素には関与するのに、空気は素通りさせてしまうから、私達が考える規模と異なってしまうのです。結界内でも空気は簡単に流動して第一波、第二波と新たな事象を起こさせるように、空気中の成分の割合が安易に変動しているのが原因だと考えます。」
「…ふむ。予想以上の答えだね。私達魔術師の近年の成果で結界膜の質改善はされつつあるんだけど、それは未だに解決してないんですよ。…因みに、もし貴方がフィールドで使う時はどう扱いますか。」
うわぁ、優しそうな顔してお腹真っ黒だよ、先生。
「私は、―――」
気を遠くに飛ばしていたら、一瞬強い視線を感じた。
振り向いた先では、私を興味深げに見るカルディナさんの姿があった。
案内人が来るという学園入り口で待っていた所、指定の人物――金髪のイケメンで赤マント着用――は現れなかった。
学生は黒マントだし学園の教師かなと思いながら、学園ゲートを監視している警備員のおじさんに探し人の特徴を伝えてみたら、
「ああ、今日は見かけてないね。職員会議が押してるのかもしれないから、待ってると遅刻するぞ、坊主。」
「そうですか。助かりました。助言通り、先を急ぎます。」
「おう、迷子になるなよ?」
おじさんに会釈して学生証を翳した先の真っ白な玄関をくぐり、学園に入った。
編入試験の時も急いでる今もまともに探検できないけど、道を知らなかったら警備のおじさんの言う通り迷子になっていたかも。自慢では…あるけど、一度通った道はすぐ覚えられるし、頭の中に地図があるみたいに的確に目的地に辿り着けるんだよね。前世からの特技は健在のようです。
「――ここが、クラス・ゼイド。」
この世界共通言語シュトラ語で書かれたプレートを確認して扉に手を掛けた所で、廊下の向こう側から声を張りながら走ってくる人に呼び止められた。
「あああ~ちょ~っと待って!扉開けないでぇ~!」
「えっと…?」
近づいてきた人物は如何にも気が弱そうなもやし人間のイメージそのもので、白マントがダボダボに見える。
私と扉の間にスライドしてきて、扉前の空中で手を振りかざして小窓を出して見せた。そこには、本日のミッションと表記されていて、慣れた調子でポンポンと小窓を出しては消すを繰り返している。
だけど、それはチャイムが鳴っても終わらなかった。
「ふぅ~、やっと終わったぁ。」
白マントの彼は肩を回しながらようやく私の存在に気付き、辺りを見回して私を数秒凝視してオーバーな動作で手を叩いた。
「!あ~、君は編入の子だよね。…今日だったか~。あの子らへの説教が先だよね。う~ん……数分待ってて。ちょっとシバいてくるから。」
柔和な顔で毒を吐く様子はどこか頼もしいなと感心していると、扉が高速で開閉し、次には廊下まで届く怒声が聞こえてきた。
ほえ~、おっかなそう。
説教は軽く数分は超え、うつらうつらしていると、扉がゆっくり開いた。
あ、入れって事ね?
扉をくぐると、薄いバリアを通過した感覚を肌で感じ、教卓とそこに立つ白マントの彼と、席に座った28人の生徒からの視線が一気に注がれた。
「はいはい、皆さん注目。…って、いやいやギラギラした目は仕舞って!もっとこう、ウェルカムなムードで迎えて。…――オッホン。編入生の君、いつでもどうぞ。」
「…はい。」
この場合、先生が一番好意的なのかな。
…そんな訳ないか。名前も覚えてなさそうだし。
殺気が頭に刺さる中、全体を見渡してから口を開いた。
「皆さん、初めまして。私、シリル・バロンは本日からこのクラス・ゼイドに編入します。至らない点で度々ご迷惑をかける事になるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。」
一気に言葉にして、左胸に手を当てお辞儀をするとザワッと場が沸いた。
「えっ。あれが、宮廷魔術師セレスタン・バロン様の一番弟子…?」
「おい、嘘だろ。あんなひょろい野郎が、今巷で噂の新星だっていうのかよ!信じらんねぇ。」
「セレスタン様と同棲しているだなんて許せない!最近断られてるのってあの女狐のせいね!」
「そこは同棲ではなく、居候ですよ。それにどう見ても男です。これだから噂で早とちりする奴は社交界で出遅れるんですよ。…あ、失礼?手に負えない猛獣に可愛げを感じる男は居ませんからね。」
「何ですって!?インテリ眼鏡、表に出なさい。決闘ですわ!」
「皆さ~ん、ちょっと落ち着いて。現実に戻ってきてくださ~い。」
先生の頼りない声はあっさり聞き流され、私はと言うと、ヒートアップした彼らの間を通り、先生に指定された席にドカッと座った。
隣の男子生徒は目を丸くして何か言いたげな視線を送ってきた。
「はぁ~。もう、時間が押しちゃうから、始めちゃいますよ?」
「――モルバ先生。遅刻してすみません。」
先生の緩い声で授業が開始されようとする最中、凛とした声が響いた。
長い栗色の髪がゆるく三つ編みに纏められ、黒マントや体の周りに可視化された魔素を揺蕩わせたまま少女が空中から突如現れた。
手で魔素を払う動作は雑だけど、所作や佇まいに品があり、目元を覆う前髪を恨めしく思った。きっと可愛いんだろうな。
それを、まさか声に出していたとは知らず。
「おい、バカ。お前には彼女は無理だろうよ。彼女は、あのエインズワース伯爵家の秘宝、カルディナ・エインズワース様だぜ?俺らだって滅多に話せないんだからな。」
「え、話しかければいいじゃないですか。」
「お前、ほんとバカだな。このクラスで一番の階級で筆記・実技共にトップの成績の彼女に、おいそれと話しかけられるかよ。」
隣の男子はヘタレね。それとは別に情報ありがとう。
彼女、カルディナさんってハイスペックで敬遠されちゃってるんだ。何かもったいないなぁ。できれば友達になりたいタイプだし。
「エインズワースさん、おはようございます。遅刻なんて気にしなくていいですよ。貴方の成績なら留年なんて事もないですし、今日はもう一人遅刻者居ますから。」
え、先生。今、遅刻者って言う時、こっち見た?
嘘でしょ。先生が何かしてる間、廊下で待ってたけどそれも遅刻扱い!?!惨い。
「…そう、なのね。中断させてしまってすみません。どうぞ始めて下さい。」
先生の視線を辿ってか彼女と一瞬目が合った気がした。
これが、凡人と有名人の違いかぁ。――なんて事を考えていたけど。
「シリル君っ、君とは同志になれると思っていたよ!」
「あの、先生。一旦落ち着いて――」
「落ち着いてなどいられるか!君は真にセレスタン・バロン殿の一番弟子だッ。卒業後は是非我が市部魔術省に就職してほしい。給料は弾むよ!何せ僕が責任者だからね!」
授業が終了する鐘が鳴り終わった後、モルバ先生に捕まり、先生管轄の市部魔術省へのスカウトを強引にされていた。
思わず先程のやり取りを思い出してしまう。
モルバ先生による授業は、魔術工学に関するもので、様々な事象を簡単に紐解いて解説がされていた。
「――と、こういった場合は、空気中の魔素の濃度以上に気をつけないといけない事があります。…分かりますね、エインズワースさん。」
「…はい。水関連の魔術を使用する際、空気中の水成分や支燃剤の存在が暴発の原因になります。」
「そうです。皆さんの中で火や水の魔術を扱う割合が大きく占めている訳ですが、空気中の成分を見極めず誤って魔術を暴発させるといった経験は以前の実技でやりましたね?それを防ぐためにはまず、魔素を可視化して分類する方法が挙げられます。」
バロンさんに編入でも授業についていける筈だとは聞いてたけど、確かに難しくはないね。それより気になるのは、前世みたいに名称がついてない事。水素と酸素とか、そもそも科学だけじゃなくて化学も発達してないとか?それに一般的な名称を決める事とかすごい名誉じゃん。誰かやろうよ。
・・・・・・・・・。
モルバ先生の説明から考えるに、化学反応による事象そのものやリスクへの理解はあるけど、いまいち掴めないな。図や公式は使わず、検証時の映像を見せるだけだから、皆感覚でしか覚えられないと思うんだけど…。
これを座学と呼んでいいのやら。
「シリル・バロン君。聞いていますか。」
「えっ!…あの、もう一度お願いします。」
周りから嘲笑を含むバカにした視線を送られてしまった。
「分かりました。えぇ、まず、今まで水と空気による爆発を議題にしていましたね。そして我々魔術師がフィールドで魔術を使う際によく起きる事象の対策も二点お伝えしました。では、魔術を使う空間を定めない場合、何故暴発の規模が変わるのでしょうか。」
あ~、そうだよね。
普通、この実験は密閉空間のあるフラスコとか容器でやるもんね。
「はい。簡単な事です。私達が予め張っている結界が魔素には関与するのに、空気は素通りさせてしまうから、私達が考える規模と異なってしまうのです。結界内でも空気は簡単に流動して第一波、第二波と新たな事象を起こさせるように、空気中の成分の割合が安易に変動しているのが原因だと考えます。」
「…ふむ。予想以上の答えだね。私達魔術師の近年の成果で結界膜の質改善はされつつあるんだけど、それは未だに解決してないんですよ。…因みに、もし貴方がフィールドで使う時はどう扱いますか。」
うわぁ、優しそうな顔してお腹真っ黒だよ、先生。
「私は、―――」
気を遠くに飛ばしていたら、一瞬強い視線を感じた。
振り向いた先では、私を興味深げに見るカルディナさんの姿があった。
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