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1章 隠密令嬢(?)とリア充令息
家族のカタチ 前編 ジョゼフ・ラム視点
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私は公爵家の嫡男、ジョゼフ・ラム。
勉学は誰にも騙されないために、武術は誰にも見下されないように。
この国を支えるラム公爵家の跡取りに相応しくあるために努力し続けてきた。
その努力だけでは本当に守りたいものを救えないと気付かされる日が来るなんて私は思いもしなかった。
私が10歳の頃、冷え切った家庭が変質したようだと感じたのはいつだったか。
いつもイライラしてストレスを溜め込んでいた義母は肌艶がいい位に健康になり、逆に父は見る影もなく痩せこけていた。
二人の関係が異様だと知っていたが、明らかに黙認できない状況にあった。
私は探り出す必要性を感じ、絶対的な信頼を置ける使用人と影を使い、義母と父が外出する日に行動することにした。決断してから案外早くその日がやってきた。
義母は遠方へのお茶会で朝から夕方まで、父は王城での執務と午後から円卓会議があり、双方とも帰りが遅いと確認してから決行した。
目指すは義母の部屋、というより彼女が住まう館。
彼女には特別に専用の館が用意されており、何かきな臭いものを隠している気がする。今まで視界にも入れようとしなかった建物だ。結局私は己の好奇心に負けた…それだけだ。
館に入ると、趣味の悪い赤と黒の廊下が奥まで続いていた。
専属執事と子機で報告し合い、一部屋ずつ調べていった。
一言言わせてもらうと、気味が悪かった。
危ない武器や道具の置かれた拷問部屋、壁一面が鏡の風呂場、似た構図の寝室が四つあった。
どの部屋も生臭い匂いがして頭が痛くなった。
・・・でも、この匂いを私は知っている?
そうか。
これは、男の独特の匂い。
何故知っているかと言えば、私も精通したからだ。
鼻を抓みながら次の部屋に入ろうとして、中からくぐもった声が聞こえてきた。
・・・おいおい、夫人がいない今ナニカしている奴がいるのかよ…。
内心辟易しながら、ドアノブを回し覗いて、絶句した。
夫人が変貌した根源が目の前にいるのに、怒るどころか可哀想に思えた。
目の前の人物――少年は腕を後ろに拘束され、足をM字開脚させられ、陰茎の根元がベルトで縛られていた。後ろの孔から紐が出ており、少年はカタカタと体を震わせ、咽び泣いている。
気持ちよくなりたいのか陰茎を床に擦りつけ、懸命に腰を振っている。
淫らではしたない光景のはずなのに、健気に見えて―――
私は思わず抱きしめていた。
抱きしめてみて、少年が予想以上に細い事に気付いた。
(細い…。ちゃんと食事を取れてないじゃないか。奴隷のように扱われていたのか。
それより、彼はいつからここにいると言うんだ。)
少年が囚われた年月に疑問を感じていると、胸に重みを感じた。
見下ろすと、少年はあどけない顔で爆弾発言してきた。
「ご主人様ぁ~、気持ちよくなりたいです。僕のナカをかき混ぜてください」
「え」
私が困惑していると、後ろで拘束された手で孔に埋まった道具を抜いて、強請り擦り寄ってきた。
ご主人様と連呼する彼を見てると情が湧いてきて、私は何故か彼の唇にキスを落としていた。
「ん…ふぁ…ふ、ぅん…」
「は…んぅ…じゅる…ん…」
堪能していたら、胸にしなだれかけている彼の頬が紅潮し目が虚ろになっていることに気付いて、口内から舌を抜き取った。その際に彼の鼻を抜けるような甘い声が響き、急に恥ずかしくなった。
わ、私は何をやっているんだ!!
こんな幼気な少年に発情するなんて…、と思いつつ彼を見れば、はにかんだ笑顔でいるが唾液が零れエロい姿を晒している。目に毒だ。
上着をかぶせて、今度は言おうと思っていた事を伝えようと口を開いた。
「君、ここから逃げ出そう。辛かっただろう。ほら、私の手を取って?」
手を差し伸べたが、少年は私の手を一向に取ろうとしない。
それどころか怯えたように後ずさった。
「あ…ぁあ…、僕、また…捨てられるの?」
「え、…違うよ?君が安心して暮らせる場所を準備してあげると…――」
「ううん!ううん!そんなの、ない!!僕の居場所はここなんだ!」
私が宥めて説明しようとすれば、被りを入れるように否定してくる。
何が正しいかも考えずに全否定する彼に苛立ちを覚えて、彼を拘束する道具を引きちぎった。
私の行動に呆気に取られたのかジタバタするのもやめて、こちらを見上げている。
理不尽な目に遭っておいて、何で諦めているんだよ。
人の好意を無視してまで悲劇のヒロインぶりたいのかよ。
「ご、めんな…さい。でも、ここが僕の居場所なんだ…っ」
私は心の声を口にしていたのか?
いや、そんな事より彼の話を聞いた方がいいな。
「どうして、ここが君の居場所なんだ?」
「だ、誰にも…、ご主人様にも言わない?」
ご主人様…、義母の事か。
私が頷けば、頬を少し緩めながらも強張った表情で話しだした。
「僕は母さんが死んで孤児になったと思っていたんだ。
そしたら、あのおじさん…公爵様が僕をここに連れてきたんだ。
あの人は僕の処遇…僕って庶民だからさ、僕をご主人様の所に置いてくれたんだ。」
それを聞いた私は、どんな表情をしていただろうか。
少年への同情、驚き、父への憎悪が膨れ上がっていて、何かが弾けた。
勉学は誰にも騙されないために、武術は誰にも見下されないように。
この国を支えるラム公爵家の跡取りに相応しくあるために努力し続けてきた。
その努力だけでは本当に守りたいものを救えないと気付かされる日が来るなんて私は思いもしなかった。
私が10歳の頃、冷え切った家庭が変質したようだと感じたのはいつだったか。
いつもイライラしてストレスを溜め込んでいた義母は肌艶がいい位に健康になり、逆に父は見る影もなく痩せこけていた。
二人の関係が異様だと知っていたが、明らかに黙認できない状況にあった。
私は探り出す必要性を感じ、絶対的な信頼を置ける使用人と影を使い、義母と父が外出する日に行動することにした。決断してから案外早くその日がやってきた。
義母は遠方へのお茶会で朝から夕方まで、父は王城での執務と午後から円卓会議があり、双方とも帰りが遅いと確認してから決行した。
目指すは義母の部屋、というより彼女が住まう館。
彼女には特別に専用の館が用意されており、何かきな臭いものを隠している気がする。今まで視界にも入れようとしなかった建物だ。結局私は己の好奇心に負けた…それだけだ。
館に入ると、趣味の悪い赤と黒の廊下が奥まで続いていた。
専属執事と子機で報告し合い、一部屋ずつ調べていった。
一言言わせてもらうと、気味が悪かった。
危ない武器や道具の置かれた拷問部屋、壁一面が鏡の風呂場、似た構図の寝室が四つあった。
どの部屋も生臭い匂いがして頭が痛くなった。
・・・でも、この匂いを私は知っている?
そうか。
これは、男の独特の匂い。
何故知っているかと言えば、私も精通したからだ。
鼻を抓みながら次の部屋に入ろうとして、中からくぐもった声が聞こえてきた。
・・・おいおい、夫人がいない今ナニカしている奴がいるのかよ…。
内心辟易しながら、ドアノブを回し覗いて、絶句した。
夫人が変貌した根源が目の前にいるのに、怒るどころか可哀想に思えた。
目の前の人物――少年は腕を後ろに拘束され、足をM字開脚させられ、陰茎の根元がベルトで縛られていた。後ろの孔から紐が出ており、少年はカタカタと体を震わせ、咽び泣いている。
気持ちよくなりたいのか陰茎を床に擦りつけ、懸命に腰を振っている。
淫らではしたない光景のはずなのに、健気に見えて―――
私は思わず抱きしめていた。
抱きしめてみて、少年が予想以上に細い事に気付いた。
(細い…。ちゃんと食事を取れてないじゃないか。奴隷のように扱われていたのか。
それより、彼はいつからここにいると言うんだ。)
少年が囚われた年月に疑問を感じていると、胸に重みを感じた。
見下ろすと、少年はあどけない顔で爆弾発言してきた。
「ご主人様ぁ~、気持ちよくなりたいです。僕のナカをかき混ぜてください」
「え」
私が困惑していると、後ろで拘束された手で孔に埋まった道具を抜いて、強請り擦り寄ってきた。
ご主人様と連呼する彼を見てると情が湧いてきて、私は何故か彼の唇にキスを落としていた。
「ん…ふぁ…ふ、ぅん…」
「は…んぅ…じゅる…ん…」
堪能していたら、胸にしなだれかけている彼の頬が紅潮し目が虚ろになっていることに気付いて、口内から舌を抜き取った。その際に彼の鼻を抜けるような甘い声が響き、急に恥ずかしくなった。
わ、私は何をやっているんだ!!
こんな幼気な少年に発情するなんて…、と思いつつ彼を見れば、はにかんだ笑顔でいるが唾液が零れエロい姿を晒している。目に毒だ。
上着をかぶせて、今度は言おうと思っていた事を伝えようと口を開いた。
「君、ここから逃げ出そう。辛かっただろう。ほら、私の手を取って?」
手を差し伸べたが、少年は私の手を一向に取ろうとしない。
それどころか怯えたように後ずさった。
「あ…ぁあ…、僕、また…捨てられるの?」
「え、…違うよ?君が安心して暮らせる場所を準備してあげると…――」
「ううん!ううん!そんなの、ない!!僕の居場所はここなんだ!」
私が宥めて説明しようとすれば、被りを入れるように否定してくる。
何が正しいかも考えずに全否定する彼に苛立ちを覚えて、彼を拘束する道具を引きちぎった。
私の行動に呆気に取られたのかジタバタするのもやめて、こちらを見上げている。
理不尽な目に遭っておいて、何で諦めているんだよ。
人の好意を無視してまで悲劇のヒロインぶりたいのかよ。
「ご、めんな…さい。でも、ここが僕の居場所なんだ…っ」
私は心の声を口にしていたのか?
いや、そんな事より彼の話を聞いた方がいいな。
「どうして、ここが君の居場所なんだ?」
「だ、誰にも…、ご主人様にも言わない?」
ご主人様…、義母の事か。
私が頷けば、頬を少し緩めながらも強張った表情で話しだした。
「僕は母さんが死んで孤児になったと思っていたんだ。
そしたら、あのおじさん…公爵様が僕をここに連れてきたんだ。
あの人は僕の処遇…僕って庶民だからさ、僕をご主人様の所に置いてくれたんだ。」
それを聞いた私は、どんな表情をしていただろうか。
少年への同情、驚き、父への憎悪が膨れ上がっていて、何かが弾けた。
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