257 / 372
第十一章 婚約発表
第261話:爆弾発言
しおりを挟む
わたしがヴィルさん一人では満足していないと思われているのだろうか。
とんでもない。
むしろ、もっと努力をしないと隣に立つ資格はない気がして、侍女と一丸となって頑張っているところなのに。
二人目の夫なんてそんな……相手が誰であろうと有り得ない。
ビシッと否定しようとしたけれども、またペロンと指を舐めていたヴィルさんがわたしよりも先にこう言った。
「そうですね。少なくても、あと二~三人は夫が欲しいですね」
は……?
スクナクテモ アト ニサンニン?
欲しいですね、って……ヴィルさんが欲しいって意味?
はいぃぃぃーーッ???
「ヴィルさん、一体何を言っ……」
「例えばケンカになってしまったときにリアを慰めてくれたり、仕事で帰れない夜にリアが寂しがらないようにしてくれたり、俺がいない間にリアが何をしていたか教えてくれたり、リアの好きなものなど情報共有してくれる同志は多いほど良い。アレンやクリスなら大歓迎」
こっ、こっ、こっ…… (※ニワトリではない)
こここここっ、この人は一体何を言っているのでしょうか……ッ?
ケンカの仲直りや朝帰りのフォローは、ご自身でお願いしたいです。
あ、でも今まで高確率でアレンさんがフォローのために介入してくれていたかも。
あれ? そういう意味では「ヴィルさん一人では足りていない」と言えないこともな……いやいやいや落ち着いて! 夫婦ゲンカの仲直りに第三者が絡むことだってあるでしょう。
で、朝帰りのフォローはどうだったっけ? いえいえ、そもそも旦那さんが朝帰りなんて滅多にしないのよっ。
ああぁ、わけが分からなくなってきました……。
わたしに一妻多夫なんて無理なので、間違いのない唯一の旦那様を選んだつもりだ。
『生命の宝珠』をたくさんを作らなければならないという事情があるため、それを成し得る旦那様であることが最重要ポイントだった。
世の中に完璧な人などいない。彼の良いところ悪いところ全部ひっくるめて、良い相手と婚約したと思っていた。
なのに、まさか、まさか……
まさか彼が別の夫を欲しがるなんて。
しかも「あと二~三人は欲しい」ってどういうこと?
だ、誰か、誰か説明してっ。
宰相様っ、助けてください!
すがるように目配せをすると、フォルセティ宰相はニッコリと微笑んだ。
「最初にも申し上げましたが、やはり夫は少なくても二~三人は持たれたほうが良いですよね」
あああぁ、ヴィルさんのせいでっ、ヴィルさんが陛下にそんな話をするからっ、外堀が埋まりかけているではありませんかぁぁ。
人前で彼に文句を言うわけにはいかない。そこはぐっと堪えよう。
しかし、なんて答えれば良いのか分からず、口をぱくぱくするばかりだった。
宰相様、取り急ぎ大雨洪水波浪警報を発令してください。わたくし、感情がぶっ壊れて泣きそうです。
「──恐れながら陛下、リア様はそのようなことは望んでおられません」
はっと隣を見ると、アレンさんがこちらを見てわずかに頷いた。
「大丈夫ですよ、お任せください」と言ってくれる時の落ち着いた表情だった。
アレンさん……。
う、うわーん、アレンさぁぁん。
うう……、ヤバい、号泣してしまいそう……。
ナイスフォローです。
さすが隠れイケメンです。
いつもありがとうございます。素敵すぎます。
しかし、ヴィルさんはまたもや指についたチョコを舐めながら言った。
「俺はリアの可愛いところを話し合う相手が欲しい。同じ立場でないと、ただの自慢話になってしまう。お前はそれに適した人物だと思っているのだが」
うおー、ヴィルさんのワカランチン、話し合わなくて良いのですよーっ。
「それは団長の都合です。リア様の気持ちを優先してください」
神様、イケ仏様、アレン様……。
わたしは一生あなた様を拝んで生きてゆきます。
カッコ良すぎです。
「なんだ? リアがそう言ったのではないのか?」と、陛下が怪訝そうな顔をした。
誤解されてはいけないので「わたしは何もお話ししていません」と伝えたところ、陛下のこめかみにお怒りマークが浮かび上がった。
「ヴィル、お前というやつは……!」
まったく、なんて婚約者だろう。
やはりあのナントカ伯令嬢(また忘れた)なんて全然大したことなかった。
あんなの、夫を二~三人持てと言われることに比べたら蚊に刺された程度だ。
「私は数人で協力してリアを支えられたらと思っているだけですよ」
ヴィルさんがシレっと言うと、「今それを言うのは団長のワガママです」と、アレンさんがツッコんだ。もう本当にカッコイイ。
「ヴィル、またリアを振り回す気か!」
陛下はおかんむりだ。
顔が真っ赤で、鼻が膨らんでいる。今にも頭から湯気が出そうだ。
アレンさんは涼しい顔でチョコをつまんで珈琲を飲んだ。そしてこちらを見て「とても美味ですねぇ」と目を細めた。
嗚呼さすが十三億円の男……余裕が違う。
「私はリアの長期的な幸せを考えて言っています。夫が一人では足りませんよ。足りるわけがないでしょう?」
「まだ婚約を発表したばかりなのですよ? もう少し自重してください」
「自重も何も、俺はリアのために……」
「オーディンスの言うとおりだ! お前はまたリアの気持ちを無視しおって、このッ……」
ああ、もう陛下が噴火しそう……。
陛下のすぐ近くに座っている宰相が軽く耳を押さえた。
隣からスッと腕が伸びてきて、アレンさんがわたしの両耳を手で優しく塞いだ。
「大馬鹿者ぉッッッ!!!!!!」
は、はわぁ……
特大のカミナリが落ちてお説教が始まると、宰相がサッと逃がしてくれた。
アレンさんに手を引かれて馬車に飛び乗ると、皆でとっとと自宅へ引き返した。
とんでもない。
むしろ、もっと努力をしないと隣に立つ資格はない気がして、侍女と一丸となって頑張っているところなのに。
二人目の夫なんてそんな……相手が誰であろうと有り得ない。
ビシッと否定しようとしたけれども、またペロンと指を舐めていたヴィルさんがわたしよりも先にこう言った。
「そうですね。少なくても、あと二~三人は夫が欲しいですね」
は……?
スクナクテモ アト ニサンニン?
欲しいですね、って……ヴィルさんが欲しいって意味?
はいぃぃぃーーッ???
「ヴィルさん、一体何を言っ……」
「例えばケンカになってしまったときにリアを慰めてくれたり、仕事で帰れない夜にリアが寂しがらないようにしてくれたり、俺がいない間にリアが何をしていたか教えてくれたり、リアの好きなものなど情報共有してくれる同志は多いほど良い。アレンやクリスなら大歓迎」
こっ、こっ、こっ…… (※ニワトリではない)
こここここっ、この人は一体何を言っているのでしょうか……ッ?
ケンカの仲直りや朝帰りのフォローは、ご自身でお願いしたいです。
あ、でも今まで高確率でアレンさんがフォローのために介入してくれていたかも。
あれ? そういう意味では「ヴィルさん一人では足りていない」と言えないこともな……いやいやいや落ち着いて! 夫婦ゲンカの仲直りに第三者が絡むことだってあるでしょう。
で、朝帰りのフォローはどうだったっけ? いえいえ、そもそも旦那さんが朝帰りなんて滅多にしないのよっ。
ああぁ、わけが分からなくなってきました……。
わたしに一妻多夫なんて無理なので、間違いのない唯一の旦那様を選んだつもりだ。
『生命の宝珠』をたくさんを作らなければならないという事情があるため、それを成し得る旦那様であることが最重要ポイントだった。
世の中に完璧な人などいない。彼の良いところ悪いところ全部ひっくるめて、良い相手と婚約したと思っていた。
なのに、まさか、まさか……
まさか彼が別の夫を欲しがるなんて。
しかも「あと二~三人は欲しい」ってどういうこと?
だ、誰か、誰か説明してっ。
宰相様っ、助けてください!
すがるように目配せをすると、フォルセティ宰相はニッコリと微笑んだ。
「最初にも申し上げましたが、やはり夫は少なくても二~三人は持たれたほうが良いですよね」
あああぁ、ヴィルさんのせいでっ、ヴィルさんが陛下にそんな話をするからっ、外堀が埋まりかけているではありませんかぁぁ。
人前で彼に文句を言うわけにはいかない。そこはぐっと堪えよう。
しかし、なんて答えれば良いのか分からず、口をぱくぱくするばかりだった。
宰相様、取り急ぎ大雨洪水波浪警報を発令してください。わたくし、感情がぶっ壊れて泣きそうです。
「──恐れながら陛下、リア様はそのようなことは望んでおられません」
はっと隣を見ると、アレンさんがこちらを見てわずかに頷いた。
「大丈夫ですよ、お任せください」と言ってくれる時の落ち着いた表情だった。
アレンさん……。
う、うわーん、アレンさぁぁん。
うう……、ヤバい、号泣してしまいそう……。
ナイスフォローです。
さすが隠れイケメンです。
いつもありがとうございます。素敵すぎます。
しかし、ヴィルさんはまたもや指についたチョコを舐めながら言った。
「俺はリアの可愛いところを話し合う相手が欲しい。同じ立場でないと、ただの自慢話になってしまう。お前はそれに適した人物だと思っているのだが」
うおー、ヴィルさんのワカランチン、話し合わなくて良いのですよーっ。
「それは団長の都合です。リア様の気持ちを優先してください」
神様、イケ仏様、アレン様……。
わたしは一生あなた様を拝んで生きてゆきます。
カッコ良すぎです。
「なんだ? リアがそう言ったのではないのか?」と、陛下が怪訝そうな顔をした。
誤解されてはいけないので「わたしは何もお話ししていません」と伝えたところ、陛下のこめかみにお怒りマークが浮かび上がった。
「ヴィル、お前というやつは……!」
まったく、なんて婚約者だろう。
やはりあのナントカ伯令嬢(また忘れた)なんて全然大したことなかった。
あんなの、夫を二~三人持てと言われることに比べたら蚊に刺された程度だ。
「私は数人で協力してリアを支えられたらと思っているだけですよ」
ヴィルさんがシレっと言うと、「今それを言うのは団長のワガママです」と、アレンさんがツッコんだ。もう本当にカッコイイ。
「ヴィル、またリアを振り回す気か!」
陛下はおかんむりだ。
顔が真っ赤で、鼻が膨らんでいる。今にも頭から湯気が出そうだ。
アレンさんは涼しい顔でチョコをつまんで珈琲を飲んだ。そしてこちらを見て「とても美味ですねぇ」と目を細めた。
嗚呼さすが十三億円の男……余裕が違う。
「私はリアの長期的な幸せを考えて言っています。夫が一人では足りませんよ。足りるわけがないでしょう?」
「まだ婚約を発表したばかりなのですよ? もう少し自重してください」
「自重も何も、俺はリアのために……」
「オーディンスの言うとおりだ! お前はまたリアの気持ちを無視しおって、このッ……」
ああ、もう陛下が噴火しそう……。
陛下のすぐ近くに座っている宰相が軽く耳を押さえた。
隣からスッと腕が伸びてきて、アレンさんがわたしの両耳を手で優しく塞いだ。
「大馬鹿者ぉッッッ!!!!!!」
は、はわぁ……
特大のカミナリが落ちてお説教が始まると、宰相がサッと逃がしてくれた。
アレンさんに手を引かれて馬車に飛び乗ると、皆でとっとと自宅へ引き返した。
70
お気に入りに追加
455
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
勘違いは程々に
蜜迦
恋愛
年に一度開催される、王国主催の馬上槍試合(トーナメント)。
大歓声の中、円形闘技場の中央で勝者の証であるトロフィーを受け取ったのは、精鋭揃いで名高い第一騎士団で副団長を務めるリアム・エズモンド。
トーナメントの優勝者は、褒美としてどんな願いもひとつだけ叶えてもらうことができる。
観客は皆、彼が今日かねてから恋仲にあった第二王女との結婚の許しを得るため、その権利を使うのではないかと噂していた。
歓声の中見つめ合うふたりに安堵のため息を漏らしたのは、リアムの婚約者フィオナだった。
(これでやっと、彼を解放してあげられる……)
獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる