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第六章 淑女の秘密
第104話:怪しい粉
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「なにやら怪しげな粉を、調理班の荷物に仕込んでいたようだが?」とヴィルさんが言った。
うっ、バレている……。
「匂いの強いお肉しか手に入らないかも知れないと聞いたので」
「んむ」
「料理長と一緒にお肉の臭みに負けない香辛料を作って、それを持ってきました」
事前に聞いた話では、この時期の川の釣果は期待できないとのことだった。
狩った野生動物がメイン食材になると、食べつけていない強い歯ごたえや臭みとの戦いになる。
わたしが食べられないせいで皆に気を使わせたくないし、なによりも命を頂くのに「クサイから嫌だ」とは口が裂けても言いたくない。出されたものは有り難く美味しく頂くのがわたしのモットーだ。
手ごわい臭みを美味しい香りでやっつければいい。
わたしは料理長のところへ駆け込み、BBQスパイスを作ることにした。
自宅ではカレー用スパイスとチリパウダーを自分で混ぜて作っていたので、それらのレシピを覚えている範囲で料理長にお伝えし、それを二人でアレンジした。
マトンを使って試したので、結構いい線いっていると思う。
事前に調理班の班長さんとアレンさんに試食してもらい、大変美味だとお墨付きを頂戴していた。
これさえあれば、どんなお肉が出てきても食べられるはず。
本日のわたしの任務は『出されたものをきちんと食べること』だ。
ヴィルさんはニッコリして「そうか」と言い、またわたしを抱っこして皆から離れた場所へ連れていった。
そして、移動した先でもお膝に乗せられた。
「あの……わたし、お手伝いをしようと思ったのですが」
「またアレンに叱られるぞ?」
「皆さん忙しそうなので、見ているだけでは申し訳なく……」
「手伝いは後にしよう。話がしたい」
「はい」
ヴィルさんは真面目な顔で「この間はすまなかった」と言った。
どうやら、彼の寝室で気絶事件を起こしたのを気にしているようだ。
わたしは首を横に振った。
改めてあの日のことを話すのは少し恥ずかしかった。
「辛い思いをさせなかったか? 途中から朦朧としていて……」
「痕もすぐ消えましたし大丈夫です」
「痕? 何の痕だ?」
「ええ……と、その……」
何の? と言われると、答えに困ってしまい、顔が熱くなった。
ちょうど服がはだけていた辺りに、キスマークが盛りだくさんだったのだ。
着替えるとき、乙女な侍女衆がキャーキャーして大変だった。
「ごっ、ごめん……。徹夜明けは近寄らないほうがいいな」
「ずっと気になっていたのですけれど、十三条のせいで陛下とケンカなどしていないですよね?」
「ああ、大丈夫。リアをコッソリ食事に呼びたいとうるさいのだが、どうする?」
「是非。わたしも陛下にお会いしたいです」
「分かった。……リア、口づけをしてもいいか?」
返事を待たずにブチューっとされることが多かったけれど、今日はちゃんと待ってくれるようだ。
こくんと頷くと、ややフライング気味に優しく唇を塞がれた。
「リア、可愛い……。何もかもが可愛い……」
結局、そぼ降るフェロモンの下で過ごすことになった。
野外なのでそこそこ寒いはずなのに、ヴィルさんに包まれているせいか暑いくらいだった。
狩猟班が獲物を携えて戻ってくると、野性味溢れるバーベキューが始まった。
予想どおり超ワイルドだ。
さばいている様子はとてもとても怖くて見られず、ヴィルさんの胸に収まってぷるぷるしていた。
BBQスパイスが活躍するのはお肉が焼き上がる寸前だ。
調理班がそれを全体に振りかけると、辺りに食欲をそそる香りが漂う。
皆が「なんかいつもと違うぞ」と、嬉しそうにザワザワしていた。
しかし、ふと思ったのだけれども、敵から逃げているときにこんな良い匂いをさせていたら、自分たちの場所を知らせているようなものだ。
隠れて逃げるようなときは、腹をくくって野生の臭いにやられよう。切羽詰まっていれば何でも食べられるに違いない。
「んっ! これはいい」と、真っ先にお肉を食べたヴィルさんは言った。
「これはリア様が異世界から持ち込んだレシピを、今回の野営用に調整してくださった混合香辛料です。開発には『神の舌』と呼ばれる料理長ドニー・デレルも携わっており、厳選された何種類もの香辛料が絶妙な配合で混ぜ合わされ……」
BBQスパイス作りの現場にいたアレンさんは、すっかり先生モードになって皆に解説している。
「少しニンニクパウダーが多かったかも」と呟いていると、ヴィルさんが首を傾げた。
「そうか? 野郎どもにはちょうどいいぞ」
「でも、敵に追われているのに、こんなに匂ってしまったら」
「はははっ、そういうときは、皆でミントの葉を噛みながら逃げよう」
ワイルドなお肉は聞いていたとおり歯ごたえが違う。もきゅもきゅと頑張って噛んだ。
もぐもぐしながら、ふと自分の手を見た。
怪我を治す、わたしの謎の手……。
眉間にシワを寄せていると、アレンさんが「気にしないほうが良いですよ」と言った。スパイスの解説をし尽くして暇になったようだ。
「何の成分が出ているのかな、と思って」
「喜ばれることしかない。誰も傷つきません」
「そういうものですか?」
「私の風は、人を困らせることがあるでしょう?」
「ふふ。でも夏は良いのでは?」
「そう。重宝されるのは暑い日だけですね」
「これは怪我にだけ効くのでしょうか」
「いいえ、疲労にも効果テキメンですよ」
彼があまりにもはっきりと答えたので、「知っていたのですか?」と尋ねた。
すると彼は「はい」と頷いた。
「徐々に強くなってきていると思います」
「どうして分かるのですか?」
「あなたの手が触れていることが多いからですよ?」
彼は自身の右肘をトントンと指で叩いた。
「あっ……」
言われてみれば、どこへ行くにも彼につかまって歩いている。手から何か出ているのなら、彼が真っ先に気づくはずだった。
「おかげさまで、訓練で怪我をしても翌日には完治します」
「そうだったのですね。お役に立てていたのですねぇ」
世界が違うと不思議なことが色々ある。
しかし、幸いにも人に迷惑をかけるものではなかったし、一番お世話になっている人の役に立っていたので「まあいいか」と思うことにした。
「あとで川辺にミントを探しに行きませんか?」
「あっ、行きます」
食後はアレンさんと自生のミントを摘みに行った。
こちらではガムのようにそのまま葉っぱを噛む人が多い。特に男性はよくやっている気がする。ニンニクの臭い消しに皆でミントを噛み噛みし、余った分はミントティーにした。
最後に撤収作業のタイムアタック訓練をやり、来た道を戻って帰宅すると、冬の避難訓練は無事に全行程が終了。
しばふペーストと訓練のおかげで、気づけば気持ちもスッキリとしていた。
デイキャンプのような一日は、期待していた以上に良い気分転換になったのだった。
うっ、バレている……。
「匂いの強いお肉しか手に入らないかも知れないと聞いたので」
「んむ」
「料理長と一緒にお肉の臭みに負けない香辛料を作って、それを持ってきました」
事前に聞いた話では、この時期の川の釣果は期待できないとのことだった。
狩った野生動物がメイン食材になると、食べつけていない強い歯ごたえや臭みとの戦いになる。
わたしが食べられないせいで皆に気を使わせたくないし、なによりも命を頂くのに「クサイから嫌だ」とは口が裂けても言いたくない。出されたものは有り難く美味しく頂くのがわたしのモットーだ。
手ごわい臭みを美味しい香りでやっつければいい。
わたしは料理長のところへ駆け込み、BBQスパイスを作ることにした。
自宅ではカレー用スパイスとチリパウダーを自分で混ぜて作っていたので、それらのレシピを覚えている範囲で料理長にお伝えし、それを二人でアレンジした。
マトンを使って試したので、結構いい線いっていると思う。
事前に調理班の班長さんとアレンさんに試食してもらい、大変美味だとお墨付きを頂戴していた。
これさえあれば、どんなお肉が出てきても食べられるはず。
本日のわたしの任務は『出されたものをきちんと食べること』だ。
ヴィルさんはニッコリして「そうか」と言い、またわたしを抱っこして皆から離れた場所へ連れていった。
そして、移動した先でもお膝に乗せられた。
「あの……わたし、お手伝いをしようと思ったのですが」
「またアレンに叱られるぞ?」
「皆さん忙しそうなので、見ているだけでは申し訳なく……」
「手伝いは後にしよう。話がしたい」
「はい」
ヴィルさんは真面目な顔で「この間はすまなかった」と言った。
どうやら、彼の寝室で気絶事件を起こしたのを気にしているようだ。
わたしは首を横に振った。
改めてあの日のことを話すのは少し恥ずかしかった。
「辛い思いをさせなかったか? 途中から朦朧としていて……」
「痕もすぐ消えましたし大丈夫です」
「痕? 何の痕だ?」
「ええ……と、その……」
何の? と言われると、答えに困ってしまい、顔が熱くなった。
ちょうど服がはだけていた辺りに、キスマークが盛りだくさんだったのだ。
着替えるとき、乙女な侍女衆がキャーキャーして大変だった。
「ごっ、ごめん……。徹夜明けは近寄らないほうがいいな」
「ずっと気になっていたのですけれど、十三条のせいで陛下とケンカなどしていないですよね?」
「ああ、大丈夫。リアをコッソリ食事に呼びたいとうるさいのだが、どうする?」
「是非。わたしも陛下にお会いしたいです」
「分かった。……リア、口づけをしてもいいか?」
返事を待たずにブチューっとされることが多かったけれど、今日はちゃんと待ってくれるようだ。
こくんと頷くと、ややフライング気味に優しく唇を塞がれた。
「リア、可愛い……。何もかもが可愛い……」
結局、そぼ降るフェロモンの下で過ごすことになった。
野外なのでそこそこ寒いはずなのに、ヴィルさんに包まれているせいか暑いくらいだった。
狩猟班が獲物を携えて戻ってくると、野性味溢れるバーベキューが始まった。
予想どおり超ワイルドだ。
さばいている様子はとてもとても怖くて見られず、ヴィルさんの胸に収まってぷるぷるしていた。
BBQスパイスが活躍するのはお肉が焼き上がる寸前だ。
調理班がそれを全体に振りかけると、辺りに食欲をそそる香りが漂う。
皆が「なんかいつもと違うぞ」と、嬉しそうにザワザワしていた。
しかし、ふと思ったのだけれども、敵から逃げているときにこんな良い匂いをさせていたら、自分たちの場所を知らせているようなものだ。
隠れて逃げるようなときは、腹をくくって野生の臭いにやられよう。切羽詰まっていれば何でも食べられるに違いない。
「んっ! これはいい」と、真っ先にお肉を食べたヴィルさんは言った。
「これはリア様が異世界から持ち込んだレシピを、今回の野営用に調整してくださった混合香辛料です。開発には『神の舌』と呼ばれる料理長ドニー・デレルも携わっており、厳選された何種類もの香辛料が絶妙な配合で混ぜ合わされ……」
BBQスパイス作りの現場にいたアレンさんは、すっかり先生モードになって皆に解説している。
「少しニンニクパウダーが多かったかも」と呟いていると、ヴィルさんが首を傾げた。
「そうか? 野郎どもにはちょうどいいぞ」
「でも、敵に追われているのに、こんなに匂ってしまったら」
「はははっ、そういうときは、皆でミントの葉を噛みながら逃げよう」
ワイルドなお肉は聞いていたとおり歯ごたえが違う。もきゅもきゅと頑張って噛んだ。
もぐもぐしながら、ふと自分の手を見た。
怪我を治す、わたしの謎の手……。
眉間にシワを寄せていると、アレンさんが「気にしないほうが良いですよ」と言った。スパイスの解説をし尽くして暇になったようだ。
「何の成分が出ているのかな、と思って」
「喜ばれることしかない。誰も傷つきません」
「そういうものですか?」
「私の風は、人を困らせることがあるでしょう?」
「ふふ。でも夏は良いのでは?」
「そう。重宝されるのは暑い日だけですね」
「これは怪我にだけ効くのでしょうか」
「いいえ、疲労にも効果テキメンですよ」
彼があまりにもはっきりと答えたので、「知っていたのですか?」と尋ねた。
すると彼は「はい」と頷いた。
「徐々に強くなってきていると思います」
「どうして分かるのですか?」
「あなたの手が触れていることが多いからですよ?」
彼は自身の右肘をトントンと指で叩いた。
「あっ……」
言われてみれば、どこへ行くにも彼につかまって歩いている。手から何か出ているのなら、彼が真っ先に気づくはずだった。
「おかげさまで、訓練で怪我をしても翌日には完治します」
「そうだったのですね。お役に立てていたのですねぇ」
世界が違うと不思議なことが色々ある。
しかし、幸いにも人に迷惑をかけるものではなかったし、一番お世話になっている人の役に立っていたので「まあいいか」と思うことにした。
「あとで川辺にミントを探しに行きませんか?」
「あっ、行きます」
食後はアレンさんと自生のミントを摘みに行った。
こちらではガムのようにそのまま葉っぱを噛む人が多い。特に男性はよくやっている気がする。ニンニクの臭い消しに皆でミントを噛み噛みし、余った分はミントティーにした。
最後に撤収作業のタイムアタック訓練をやり、来た道を戻って帰宅すると、冬の避難訓練は無事に全行程が終了。
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