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四章 「五光年先の遊園地」
その二
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「遊園地? まぁ、三連休はテスト明けだし、あたしは別に構わないけど。お前らテスト勉強は大丈夫なのかよ」
授業が終わり、僕らは通りの花屋『木犀(もくせい)花(か)』を訪れていた。
花屋というと、優しい色合いの綺麗な花々がはかなげに咲き誇っている様を思い浮かべるかもしれないけど、名前の通り木星の花を扱うここでは、強烈な香りを放つ鮮やかで攻撃的な花がほとんどだ。
「あ、そういやソウだね。どうしようか?」
ぴょんと跳ねて僕の前に立つトモカさん。さらっと丸投げにしてきた。
「僕に聞かれても……」
「テスト勉強と遊園地、なんとか両立できませんの……?」
頬に手を当てて思い悩む魚々乃女さん。なぜか、流し眼でこちらを見つめてくる。
「だから僕に聞かないで下さいよ」
なんたってこの人たちは、自分で考えようとしないのだろう。というか僕にばかり振らないで欲しい。
「あっ、お久しぶりですー」
店の奥で痛んだ葉を切り落とそうとしていた万美さんが、こちらに気づいて振り返る。その手には、小型のチェーンソーが握られていた。手元に咲く赤い花は、盆栽か何かのように逞(たくま)しい枝葉を伸ばしていた。
チェーンソー片手に終始笑顔で裁断する万美さんの姿を思い浮かべてもらえば、この店の惨状も少しは伝わるだろうか。……木星人には好評らしいけど。
「いや、昨日も会ったじゃないですか」
「じゃあ昨日ぶりですねー」
見た目より大雑把(おおざっぱ)な人なのかもしれない。
「心配なら勉強会でもやるか?」
樹理さんの鶴の一声に、魚々乃女さんはわかりやすく反応した。
「――――勉強会、ですの? そこまで言うなら仕方がないですわね、やりましょう、皆さんで。なんでしたら泊まりでも構いませんわ。いえ泊まりましょう!! ちょうど両親が出張中で空いていますのっ! 布団もありあまっていますしっ!!」
目的が見え見えだった。たじろく樹理さんに、魚々乃女さんはさらにたたみかける。
「お夕食もありあまっていますしっ!!」
「……いや、夕飯は、ありあまってねぇだろ、普通」
そんなこんなで、僕らは魚々乃女さん宅におじゃますることになった。
授業が終わり、僕らは通りの花屋『木犀(もくせい)花(か)』を訪れていた。
花屋というと、優しい色合いの綺麗な花々がはかなげに咲き誇っている様を思い浮かべるかもしれないけど、名前の通り木星の花を扱うここでは、強烈な香りを放つ鮮やかで攻撃的な花がほとんどだ。
「あ、そういやソウだね。どうしようか?」
ぴょんと跳ねて僕の前に立つトモカさん。さらっと丸投げにしてきた。
「僕に聞かれても……」
「テスト勉強と遊園地、なんとか両立できませんの……?」
頬に手を当てて思い悩む魚々乃女さん。なぜか、流し眼でこちらを見つめてくる。
「だから僕に聞かないで下さいよ」
なんたってこの人たちは、自分で考えようとしないのだろう。というか僕にばかり振らないで欲しい。
「あっ、お久しぶりですー」
店の奥で痛んだ葉を切り落とそうとしていた万美さんが、こちらに気づいて振り返る。その手には、小型のチェーンソーが握られていた。手元に咲く赤い花は、盆栽か何かのように逞(たくま)しい枝葉を伸ばしていた。
チェーンソー片手に終始笑顔で裁断する万美さんの姿を思い浮かべてもらえば、この店の惨状も少しは伝わるだろうか。……木星人には好評らしいけど。
「いや、昨日も会ったじゃないですか」
「じゃあ昨日ぶりですねー」
見た目より大雑把(おおざっぱ)な人なのかもしれない。
「心配なら勉強会でもやるか?」
樹理さんの鶴の一声に、魚々乃女さんはわかりやすく反応した。
「――――勉強会、ですの? そこまで言うなら仕方がないですわね、やりましょう、皆さんで。なんでしたら泊まりでも構いませんわ。いえ泊まりましょう!! ちょうど両親が出張中で空いていますのっ! 布団もありあまっていますしっ!!」
目的が見え見えだった。たじろく樹理さんに、魚々乃女さんはさらにたたみかける。
「お夕食もありあまっていますしっ!!」
「……いや、夕飯は、ありあまってねぇだろ、普通」
そんなこんなで、僕らは魚々乃女さん宅におじゃますることになった。
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