上 下
79 / 83

79.魔法図書館と裸婦画

しおりを挟む
 翌朝。
 早めに朝食を終えた花子はなこは気が付くとフレッドを伴って魔法図書館に向かう小道を歩いていた。
 歩きながら花子はなこは朝食を終えた後の出来事を振り返った。
 花子はなことしては春画の件があるので本当は一人で向かいたがったが如何せん魔法図書館に入る扉の位置というか方法が今一歩わからず仕方なく”白の宮殿”に一緒にいる同性のムツキかキサラギに頼もうとしたのだが食べ終えた瞬間に二人はいつの間にどこかに行ったようでいなくなっていた。
 そして食べ終えた花子はなこの目の前には、用意周到に早く行きたいと言った彼女の希望を叶えるため魔法図書館に入るための用紙を抱えたフレッドが待機していた。
 そんなフレッドにあなたとは行きたくないなどと言える勇気はなく、結局彼に先導され何がいけなかったのかと後悔しながらも歩く花子はなこが後に続いた。
 フレッドは”白の宮殿”からすぐ近くにある大きな通りを花子はなこの歩調に合わせながらしばらく歩いてから一本左に曲がると行き止まりの壁に近づくと持っていた用紙を開いてそれをそのまま行き止まりの壁に張り付けた。
 フレッドがなんの変哲もない白い用紙を壁に貼り付けるとそれはスゥーと吸い込まれ淡い光を発するとそこに重厚な扉が現れた。

「どうぞ。花子はなこ様。」
 フレッドは現れた扉を開くと軽く会釈した。
「ありがとう。」
 花子はなこはいつもとは趣が異なる重厚な扉を潜ると中に足を踏み入れた。
 そこは見慣れた魔法図書館の床とは違って毛足が長い高級な絨毯が敷かれ、周囲の壁には金箔で彩られた高価な本の背表紙が壁一面に光っていた。
「すっごい!」
 思わず呟くとその本棚が置かれた部屋の中央に魔法図書館の館長が音もなく現れた。
「ようこそ花子はなこ様。今回は大量の本のご寄付、ありがとうございます。」

 フレッドの祖父であり魔法図書館の館長であるミート館長が輝く笑顔で花子はなこを迎えてくれた。
「えっとどういたしまして?」
 戸惑いながらも返事をする花子はなこにミート館長は嬉しそうな表情で重厚なガラスケースを指示した。
「さあこちらを是非とも、是非とも見てください。」

 花子はなこは笑顔のミート館長に勧められるまま何かが飾ってあるガラスケースの中を覗きみた瞬間に驚愕で固まった。

 こっ・・・こっ・・・こっ・・・こっ・・・これって、おばあ様が寄付したって言ってた春画。
 ひょえーな・・・な・・・なんと大量にあるの。
 それにしてもその大量にあるそれをこ・・・こんな高級そうな重厚なガラスケースに入れてなんで飾ってくれちゃってるんですか。
 思わず花子はなこは目をカッと見開いて春画を睨みつけた。
 その花子はなこの様子になんでか慌てた館長が急に春画の価値は物凄くあるんだという話を力説し始めた。
 それも飾られているガラスケースの絵を一つ一つ丁寧に指示しながら説明する。
 どうも花子はなこの様子にこの春画の寄付を取りやめられたらということを懸念しているようだ。
 花子はなこからすると寄付するとかしないとかではなく大々的に自分の名前を表示される方を気にしているのだが希少価値がある歴史的なものだと主張しているミート館長には通じないようだ。
 だがたとえどんなに希少価値があろうがなかろうが自分の名前を伏せてほしいともう一度お願いしようと口を開きかけるとそれより早くミート館長からとんでも発言が飛び出した。
「まあ色々この絵については説明しましたが魔法図書館としてはこの寄付に対する謝礼としてこの黄金のカギを寄付していただける花子はなこ様に進呈しようという話になりました。」
「黄金のカギ?それってなんなんですか。」
花子はなこ様。黄金のカギっの特徴と言えば代表的なものは本の永久貸出カードと希少本や禁書本の閲覧ですね。」
「永久貸出カード!それってずっと本を借りていて返さなくってもいいってことですか。」
 急に態度が変わった花子はなこにミート館長は訝しく思いながらも詳しく説明した。
「永久と言いましても貸し出しはあくまで花子はなこ様になりますから黄金のカギの持ち主が亡くなった時はその時点で本は自動的に魔法図書館に返却されます。また魔法図書館にしかない原本と禁書については貸し出しではなく閲覧のみになります。」
「でも閲覧は出来るってことですよね。」
「はい。そうです。」
 な・・・なんて素敵な言葉。
 これはこの図書館にある本はすべて読み放題ってことじゃない。
 
 読み放題。
 読み放題!!

 うっふふ・・・ぐふっ・・・。

花子はなこいやご主人様・・・大丈夫ですか。」
 急に様子の変わった花子はなこにフレッドがあたふた声を掛けていたが”読み放題”の単語に花子はなこの思考は壊れていた。
 ミート館長に促されるまま寄付の書類にサインをするとすぐさまその場で”黄金のカギ”を貰うと早速館長室を出て隣の大図書室で本を選びまくった。
 ”黄金のカギ”は素晴らしいことに花子はなこが選んだ本に触れるとそれを自動で登録し彼女の部屋に転送してくれた。
 持って帰らなくてもいいようだ。
 もちろん読み終わったときも自動で本を返却してくれる。
 なんともすばらしいシステムだ。
 花子はなこは思いつく限りの本を選ぶと意気揚々と図書館を出た。
 心はもう机の上に積みあがっている本に飛んでいた。
 もっともこの後に親切にも花子はなこ寄贈による春画展と銘打たれた招待状がミート館長から贈られて来て何をしているんだ自分と青くなるのは本を読み漁って十分に堪能してやっと我に返った後だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃

紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。 【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

処理中です...