上 下
62 / 83

62.新たな脅威

しおりを挟む
 花子はなこは”封印の札”を片手に現れた大海おおみに背後から呼びかけたがその声は箱から放たれた黒い冷気に遮えぎられ途中でプツリと途切れた。

 声すらも飲み込む黒い冷気が溢れる箱と大海おおみの周りにはいつのまにかクッキリとした丸い空間が出来あがっていた。
 花子はなこの見ている前でその空間の中で大海おおみは”封印”と書かれた札に右手で文字を刻むと次々に剥がれた四隅にその札を張り付けた。
 札が張り付いた瞬間に今まで箱の隙間からあふれていた黒い冷気の色がだんだんと薄らいでいった。
 ほぼ見えなくなったところで箱と大海おおみの間にあった丸い空間が見えなくなった。

「お・・・」
 花子はなこがもう一度背後から声を掛けて駆け寄ろようとした時、扉近くに控えていた兵士の間から魔法が放たれた。

 大海おおみがすぐにそれに気が付いて箱に向けて放たれた魔法を遮るようにその前に立ちはだかった。
 魔法は大海おおみの前で跳ね返されたがその一部が背後の箱に吸い込まれ再び四隅に張り付いていた”封印”と書かれた札の一枚が剥がれハラリと床に落ちた。

 大海おおみは慌てて懐から出した札をもう一度そこに張りなおそうと箱に近づこうとするが黒い冷気がそれを阻むように彼女の体を這い上っていく。

「お祖母ばあさま!」
 花子はなこが後ろから大海おおみの手に握られていた札を掴むと黒い冷気を飛び越えて剥がれた札の代わりにそれを箱に押し付けた。
 花子はなこが押し付けた札は何度か箱の蓋をがたがたと震わせたが数分後にはピタリとその音がおさまりその瞬間に黒い冷気と共に忽然とその場から姿を消した。

 箱が消えた!

 ざわつき始めた人々の間からしわがれた王妃の声が響いた。
「何をしているの。その曲者を捕まえなさい!」
 王妃が巫女服を着て会場の中央に立っていた大海おおみを捕らえるように傍にいた近衛兵に叫んだ。
 しかし周囲にいた貴族たちはしわがれた声で叫んだ王妃に視線を向けていた。

「おうひ・・・?」
 王妃から発せられたしわがれた声を聴いて驚愕した表情になった王が呟いた。

 その表情をみて訝し気に王妃が首を傾げた。
「陛下、何を驚いているのですか。」
「お前は誰だ。」
「な・・・急に・・・なにを・・・いって・・・。」
 王に近づこうとした王妃は王の傍にいた近衛兵の剣でそれを遮られた。
「無礼ですよ。お退きなさい。」
 その声に王は今まで傍にいた王妃であったものからさらに距離を置いた。

 第一王子でさえも王妃から距離を置いていた。
「ははうえをどこに隠した。」

「何を言っているの?」
 王妃は今度は第一王子に近づこうとしてそれを王子の傍にいた近衛兵に遮られた。

「いい加減におのれの姿が変わったのを自覚しなさい。」
 大海おおみから鋭い声と札が放たれた。
 札はまっすぐに王妃の顔に張り付くと王妃であった人物はその場で土くれに変わった。

「何が起こっている。」
 王の呟きが会場に響いた。

「それについては私が説明いたします。」
 遅れてやってきた花子はなこのもう一人の祖母が会場に現れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

婚約破棄まで死んでいます。

豆狸
恋愛
婚約を解消したので生き返ってもいいのでしょうか?

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

絶縁書を出されて追放された後に、王族王子様と婚約することになりました。…え?すでに絶縁されているので、王族に入るのは私だけですよ?

新野乃花(大舟)
恋愛
セレシアは幼い時に両親と離れ離れになり、それ以降はエルクという人物を父として生活を共にしていた。しかしこのエルクはセレシアに愛情をかけることはなく、むしろセレシアの事を虐げるためにそばに置いているような性格をしていた。さらに悪いことに、エルクは後にラフィーナという女性と結ばれることになるのだが、このラフィーナの連れ子であったのがリーゼであり、エルクはリーゼの事を大層気に入って溺愛するまでになる。…必然的に孤立する形になったセレシアは3人から虐げ続けられ、その果てに離縁書まで突き付けられて追放されてしまう。…やせ細った体で、行く当てもなくさまようセレシアであったものの、ある出会いをきっかけに、彼女は妃として王族の一員となることになる…! ※カクヨムにも投稿しています!

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

処理中です...