転生してもオタクはなおりません。

56.反省

　花子はなこが目を開くとそこは試合会場ではなく白い天井と薬品のにおいが充満するベッドの上だった。
「お加減はいかがですか花子はなこ様。」
　心配そうな表情をしたムツキが花子はなこの傍にいた。

　そっか。
　私負けたんだ。

「花子はなこ様。申し訳ありませんでした。」
　急にムツキに謝られた。
「ムツキ。なんであの魔法は私の防御壁を通り抜けたの？」
「・・・。」
　少し言いよどみながらもムツキは説明してくれた。

　どうやらあの模様の時はまだ魔力を帯びていなかったかもしくは魔力が小さすぎて花子はなこが展開していた強い魔力を帯びた防御壁を通り抜けてしまったようだ。
　そして、その通り抜けた後に最初に織り交ぜていた魔力が発動してその影響で花子はなこは痺れて動けなくなり一時的に意識をなくしてしまったようだ。

「それもこれもあのバカがまがい物の長剣なんかであの男に負けるから・・・。」
「なにをさっきからぶつぶつ言っているのムツキ。」
「いえ、こちらのことです。別に何でもありません。」

「花子はなこ体調はどうだい。」
　そこにキサラギを連れた異母兄ブラウンが心配そうな表情で現れた。
「えっともう大丈夫です。」
　花子はなこは起き上がろうとしたがそれを異母兄ブラウンに止められた。
「まだ休んでいなさい。」
「でも・・・。」
　花子はなこは表彰式が気になってやはり起き上がろうとした。

「先ほど案内があって優勝者も含めて今回は正式な表彰式は王宮で行うそうだからそのまま休んでいて問題ないよ。それに優勝者自身も今頃控室で倒れてるんじゃないかな。」
「えっ・・・？」
「あれだけの量の魔力を魔道具があったとはいえ試合の間中放出しつづけたんだ。なんとかあの瞬間だけはたっていたようだけど花子はなこが運ばれた後は周囲の人間に抱えられるような姿で試合会場から降りて行ったからね。」

　そうなの？

「むしろ少し休んだだけで立ち上がれる花子はなこのほうが会場の人間に驚かれるんじゃないかな。」
　異母兄ブラウンはにこやかにそういうと懐から何かの小さな小瓶を取り出しそれをベッドに寝ている花子はなこに渡した。
「これは？」
「まあ飲んでご覧。」
　花子はなこは恐る恐る小瓶の口を開けると中身を飲み込んだ。

　甘ったるい味と何とも言えないどろりとした口当たりが喉を通っていった。
　口の中に甘ーい味が残って何とも言えない表情をしてしまった。
「それほど甘いかい。」
「えっと・・・はい甘い・・・！」
　非常に甘いと感想を述べようとしたときにお腹からだんだんと温かくなって体の疲れがスーと抜けていった。
「えっ・・・えっとなんでか体が軽くなりました。」
「それはよかった。効果があったようだね。」
「これは何なんですか？」
　花子はなこは思わずもらった小瓶をしげしげと眺めた。
「まあいわゆる魔力エネルギーを復活させる飲み物かな。」
「魔力補充材なんてあったんですか？」
「まあ信子のぶこさんの治療薬を開発中に出来た薬なんだけど体力だけじゃなく魔力も補充できるようなんで今度ルービック家が経営する魔力薬品関連会社で売り出す予定なんだ。売れると思うかい。」
「正直に言いますとこの甘ったるーい感じがもう少しやわらげば売れると思います。それも爆発的に。」
「うーん。やっぱり味はネックなんだよな。」
「いえ、でもこの甘い感じも魔力を短時間で回復出来るなら問題ないのではないでしょうか。」
「まあそうだね。参考意見をありがとう花子はなこ。じゃ起き上がれるようなら家に戻ろう。」
「はい。」
　花子はなこと異母兄ブラウンは連れ立って試合会場を後にした。