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45.僕は不運な男で趣味は最悪だった。
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フレッドは背後の殺気に震えながらも先程貰った剣を振るって断崖にある細い道で敵に対峙していた。
それにしても今の状況はなんなのだろうか。
自業自得。
いや、自分の趣味の悪さか。
フレッドは試合終了後に起こった出来事を剣を振るいながらボンヤリと振り返っていた。
あの時は少し彼女と会話をしようとしたが彼女の父親が部屋に入って来て物凄い殺気を放たれたのでスゴスゴと退散してすぐに自国に帰ろうと部屋を出た。
そこでなんでか花子の専任護衛をしているキサラギという人間に会場を出た所でまたしても捕まった。
「いい加減にしろよ。今度は何なんだ?」
「花子様の伴侶として相応しいかどうかの試験です。」
「はあぁ?伴侶になりたいとか言ったことはないぞ。」
「それでは今すぐにここから立ち去って、二度と花子様に近づかないようにお願いします。」
「なんでそうなるんだ。同じ大学にいるんだから友人なら問題ないだろ。伴侶とかそんなのはいきなりすぎる。」
「友人ならいりません。」
「いらないって、それはお前たちの言い分だろ。本人はな・・・何も言ってないじゃないか。」
「男女で友情は成り立ちません。いますぐに決めて下さい。」
「・・・。」
なんでかキサラギに気圧されたフレッドはじりじりと後ろにある壁まで後退していた。
「さあさあさあ・・・。」
「う・・・。」
なんですぐにもう二度と"会わない"と答えないんだ。
フレッドは自問自答していた。
その一言をいえばすぐにでもこの異様な状態を脱け出せるのになぜかその言葉が出なかった。
別に自分の野心を叶えるのに必要な人間は一人じゃない。
彼女は自分の好みとはたいぶかけ離れている。
フレッドの野心を叶えるのに該当する部分は魔力の高さと家柄くらいだ。
容姿はとてもじゃないがフレッドの好みには掠りもしない。
それなのに”二度と会わない”と言おうとするたびに彼女のその平凡な顔が浮かんできて上手く言葉を紡げなかった。
なんで・・・何で言えない。
なんで・・・。
僕はまさか・・・まさかあの娘を気に入っている?
いや、この感じはすき・・・スキ・・・好き!
うおーーー。
フレッドは壁に背中を預けたままズルズルと地面にずり落ちた。
ハハハハハ・・・。
顔を下に向けて地面にへたり込んでいる男を見てキサラギは背を向けるとそこから立ち去ろうとして、その男に引き留められた。
「おい、待てよ。」
「どうかしましたか?」
「一緒に行く。」
「はあぁ?」
フレッドは立ち上がるとキサラギを通り越して通りに出た。
そしてキサラギが外に待たせていた乗り物に率先して乗り込んだ。
キサラギは急に率先して歩き出した男の後ろ姿を訝し気に見ながらも命令を追行すべくそのまま目的地である八百万神社に向かった。
フレッドは目的地に向かう間、ただただ自分の趣味の悪さに飽きれていた。
何で自分はいつ彼女に惚れたんだ?
いつだ?
なんで?
答えの出ないことをグルグルと考えているうちに八百万神社に着いた。
今回は前回とは違い正面にある長ーい石段の前に降ろされた。
なのでそのまま黙ってその石段を登ること数十分。
幾つもの朱色の鳥居を通り抜けた先にある本殿に辿り着いたがフレッドをここまで連れて来た人物はその建物を横に見ながら幾つもの池を渡る橋を通り、どんどん本殿から離れた建物に向かっていった。
そしてフレッドは本殿から一番離れた部屋に通された。
部屋に入るとそこには先程試合会場で別れたパートナーの実母が座っていた。
「あら、本当にここに来るなんて思わなかったわ。」
「意外ですか。」
「そうね。意外ではあるけどあの人の息子ならありえることだったわね。」
あの人って誰のことだ?
フレッドが疑問におもっているうちに目の前に桐で作られた古い箱を出された。
「これをあなたにあげるわ。」
フレッドは訝しげに思いながらも桐の箱に入っているものを取り出すために箱に掛かっている紐を丁寧に解いて箱の蓋を開けた。
そこには重々しい感じの黒い鞘の剣が入っていた。
思わず剣に呼ばれたように感じてそれに手を伸ばして箱から取り出すとクラッと眩暈に襲われた。
なんだ?
思わず体に力を入れて両目を固く瞑る。
さらにグラグラと視界が揺れた。
何が起こっているんだ。
フレッドは脂汗を垂らしながらそのグラつく視界に逆らったがとうとう剣を手にしたまま意識を飛ばした。
気がつくと全く何もない空間に浮いていた。
フレッドが浮いている場所から下を見ると簡素な着物を着込んだ筋骨たくましい男が黒い鞘の剣を腰に指して三又の首を持つ大蛇と対峙していた。
男は大蛇に向けて駆けだすと腰に指していた剣を瞬きのする間に抜刀して大蛇の首を一つ切り落とした。
男はその後も苦も無く残りの首を落とすと血のりを振り払って剣を鞘に納めた。
気がつくと場面が勝手にどこかの豪華な部屋に変わっていた。
男は小さな少女を抱き締めてそのまま寝所に連れ込むと彼女の着衣に手を掛ける。
真珠色の肌が見えた。
胸はまだ小さい。
おいおい。
これってこのまま見ていていいのか?
思わずフレッドがそう思考すると場面が変わって今度は血塗られた剣を手に立っている先程の男とその前には彼が寝所に連れ込んだ少女が血まみれになって倒れていた。
男はその少女を見てクルリと背を向けるとそのまま目の前に迫って来ていた鎧を着た兵士の群れに突っ込んでいった。
男は孤軍奮闘したが多勢に無勢。
最後は剣を持ったままその場で絶命した。
剣は地面に突き立てられ、その場にいた男たちが何人か引き抜こうとしたが抜けずにそのままになっていた。
うーん。
この白昼夢って何を意味してるの?
いきなり僕にどうしろっていうの?
場面はそこで固まった。
これってこの流れってたぶんこの剣を抜けってことだよね。
フレッドは恐々と地面に突き刺さっている剣に手を伸ばした。
剣に触れた瞬間絶命した男の思考が雪崩れ込んで来た。
復讐だ。
殺すんだ。
おれの女を殺した奴らを・・・。
気持ちはわかるが何でそう力任せなことばっかなの?
やるなら慎重にもっとこう裏から・・・。
思わず自分の考えを言おうとするとパチリと目が覚めた。
そこは先程の部屋だった。
フレッドは一ミリもその場から動いておらず倒れてもいなかった。
なのでフレッドの手には先程の剣がまだ握られたままだった。
「さすがミート家の人間ね。」
目の前にいる女性はそういうとフレッドの前から立ちあがった。
「その剣はもうあなたのものだから好きに使いなさい。」
彼女はそういうとその部屋から去って行った。
そこに敵の襲撃を知らせる声が周囲に響き渡った。
「ほら行くわよ。」
フレッドはここまで彼を案内して来たキサラギに引きずられるように裏庭に向かった。
僕ってついているんだろうか?
それとも人生一番の貧乏くじを引いたのか?
フレッドはしっかり掴んでいる剣に目を向けながら自問した。
そしてまた断崖にある細い道からやって来た敵に対峙して先程貰った剣を振るった。
振るうたびに軽くなる剣にフレッドは首を傾げた。
軽すぎて剣じゃないみたいだ。
少し離れた所で同じように敵と対峙していたキサラギはフレッドの持っている剣を見て目を見開いていた。
信子様から聞いた話だとあの剣は使い手によっては人を切ってその刀身に血が流れれば流れるほど剣が重くなって使えないって言ったけど見てる限りだと逆に見える。
ということは彼は剣の所有者に選ばれたってことになるけど本当に?
何千年も所有者が現れなかった曰く付きの物だって大海様も話してたような・・・。
まっ今のところ何も問題がないみたいだしいいか。
キサラギは対峙している敵に意識を集中した。
何気にフレッドは知らないうちに厄介なものを推し付けられていたようだが本人はこの時点ではまったく自覚していなかった。
それにしても今の状況はなんなのだろうか。
自業自得。
いや、自分の趣味の悪さか。
フレッドは試合終了後に起こった出来事を剣を振るいながらボンヤリと振り返っていた。
あの時は少し彼女と会話をしようとしたが彼女の父親が部屋に入って来て物凄い殺気を放たれたのでスゴスゴと退散してすぐに自国に帰ろうと部屋を出た。
そこでなんでか花子の専任護衛をしているキサラギという人間に会場を出た所でまたしても捕まった。
「いい加減にしろよ。今度は何なんだ?」
「花子様の伴侶として相応しいかどうかの試験です。」
「はあぁ?伴侶になりたいとか言ったことはないぞ。」
「それでは今すぐにここから立ち去って、二度と花子様に近づかないようにお願いします。」
「なんでそうなるんだ。同じ大学にいるんだから友人なら問題ないだろ。伴侶とかそんなのはいきなりすぎる。」
「友人ならいりません。」
「いらないって、それはお前たちの言い分だろ。本人はな・・・何も言ってないじゃないか。」
「男女で友情は成り立ちません。いますぐに決めて下さい。」
「・・・。」
なんでかキサラギに気圧されたフレッドはじりじりと後ろにある壁まで後退していた。
「さあさあさあ・・・。」
「う・・・。」
なんですぐにもう二度と"会わない"と答えないんだ。
フレッドは自問自答していた。
その一言をいえばすぐにでもこの異様な状態を脱け出せるのになぜかその言葉が出なかった。
別に自分の野心を叶えるのに必要な人間は一人じゃない。
彼女は自分の好みとはたいぶかけ離れている。
フレッドの野心を叶えるのに該当する部分は魔力の高さと家柄くらいだ。
容姿はとてもじゃないがフレッドの好みには掠りもしない。
それなのに”二度と会わない”と言おうとするたびに彼女のその平凡な顔が浮かんできて上手く言葉を紡げなかった。
なんで・・・何で言えない。
なんで・・・。
僕はまさか・・・まさかあの娘を気に入っている?
いや、この感じはすき・・・スキ・・・好き!
うおーーー。
フレッドは壁に背中を預けたままズルズルと地面にずり落ちた。
ハハハハハ・・・。
顔を下に向けて地面にへたり込んでいる男を見てキサラギは背を向けるとそこから立ち去ろうとして、その男に引き留められた。
「おい、待てよ。」
「どうかしましたか?」
「一緒に行く。」
「はあぁ?」
フレッドは立ち上がるとキサラギを通り越して通りに出た。
そしてキサラギが外に待たせていた乗り物に率先して乗り込んだ。
キサラギは急に率先して歩き出した男の後ろ姿を訝し気に見ながらも命令を追行すべくそのまま目的地である八百万神社に向かった。
フレッドは目的地に向かう間、ただただ自分の趣味の悪さに飽きれていた。
何で自分はいつ彼女に惚れたんだ?
いつだ?
なんで?
答えの出ないことをグルグルと考えているうちに八百万神社に着いた。
今回は前回とは違い正面にある長ーい石段の前に降ろされた。
なのでそのまま黙ってその石段を登ること数十分。
幾つもの朱色の鳥居を通り抜けた先にある本殿に辿り着いたがフレッドをここまで連れて来た人物はその建物を横に見ながら幾つもの池を渡る橋を通り、どんどん本殿から離れた建物に向かっていった。
そしてフレッドは本殿から一番離れた部屋に通された。
部屋に入るとそこには先程試合会場で別れたパートナーの実母が座っていた。
「あら、本当にここに来るなんて思わなかったわ。」
「意外ですか。」
「そうね。意外ではあるけどあの人の息子ならありえることだったわね。」
あの人って誰のことだ?
フレッドが疑問におもっているうちに目の前に桐で作られた古い箱を出された。
「これをあなたにあげるわ。」
フレッドは訝しげに思いながらも桐の箱に入っているものを取り出すために箱に掛かっている紐を丁寧に解いて箱の蓋を開けた。
そこには重々しい感じの黒い鞘の剣が入っていた。
思わず剣に呼ばれたように感じてそれに手を伸ばして箱から取り出すとクラッと眩暈に襲われた。
なんだ?
思わず体に力を入れて両目を固く瞑る。
さらにグラグラと視界が揺れた。
何が起こっているんだ。
フレッドは脂汗を垂らしながらそのグラつく視界に逆らったがとうとう剣を手にしたまま意識を飛ばした。
気がつくと全く何もない空間に浮いていた。
フレッドが浮いている場所から下を見ると簡素な着物を着込んだ筋骨たくましい男が黒い鞘の剣を腰に指して三又の首を持つ大蛇と対峙していた。
男は大蛇に向けて駆けだすと腰に指していた剣を瞬きのする間に抜刀して大蛇の首を一つ切り落とした。
男はその後も苦も無く残りの首を落とすと血のりを振り払って剣を鞘に納めた。
気がつくと場面が勝手にどこかの豪華な部屋に変わっていた。
男は小さな少女を抱き締めてそのまま寝所に連れ込むと彼女の着衣に手を掛ける。
真珠色の肌が見えた。
胸はまだ小さい。
おいおい。
これってこのまま見ていていいのか?
思わずフレッドがそう思考すると場面が変わって今度は血塗られた剣を手に立っている先程の男とその前には彼が寝所に連れ込んだ少女が血まみれになって倒れていた。
男はその少女を見てクルリと背を向けるとそのまま目の前に迫って来ていた鎧を着た兵士の群れに突っ込んでいった。
男は孤軍奮闘したが多勢に無勢。
最後は剣を持ったままその場で絶命した。
剣は地面に突き立てられ、その場にいた男たちが何人か引き抜こうとしたが抜けずにそのままになっていた。
うーん。
この白昼夢って何を意味してるの?
いきなり僕にどうしろっていうの?
場面はそこで固まった。
これってこの流れってたぶんこの剣を抜けってことだよね。
フレッドは恐々と地面に突き刺さっている剣に手を伸ばした。
剣に触れた瞬間絶命した男の思考が雪崩れ込んで来た。
復讐だ。
殺すんだ。
おれの女を殺した奴らを・・・。
気持ちはわかるが何でそう力任せなことばっかなの?
やるなら慎重にもっとこう裏から・・・。
思わず自分の考えを言おうとするとパチリと目が覚めた。
そこは先程の部屋だった。
フレッドは一ミリもその場から動いておらず倒れてもいなかった。
なのでフレッドの手には先程の剣がまだ握られたままだった。
「さすがミート家の人間ね。」
目の前にいる女性はそういうとフレッドの前から立ちあがった。
「その剣はもうあなたのものだから好きに使いなさい。」
彼女はそういうとその部屋から去って行った。
そこに敵の襲撃を知らせる声が周囲に響き渡った。
「ほら行くわよ。」
フレッドはここまで彼を案内して来たキサラギに引きずられるように裏庭に向かった。
僕ってついているんだろうか?
それとも人生一番の貧乏くじを引いたのか?
フレッドはしっかり掴んでいる剣に目を向けながら自問した。
そしてまた断崖にある細い道からやって来た敵に対峙して先程貰った剣を振るった。
振るうたびに軽くなる剣にフレッドは首を傾げた。
軽すぎて剣じゃないみたいだ。
少し離れた所で同じように敵と対峙していたキサラギはフレッドの持っている剣を見て目を見開いていた。
信子様から聞いた話だとあの剣は使い手によっては人を切ってその刀身に血が流れれば流れるほど剣が重くなって使えないって言ったけど見てる限りだと逆に見える。
ということは彼は剣の所有者に選ばれたってことになるけど本当に?
何千年も所有者が現れなかった曰く付きの物だって大海様も話してたような・・・。
まっ今のところ何も問題がないみたいだしいいか。
キサラギは対峙している敵に意識を集中した。
何気にフレッドは知らないうちに厄介なものを推し付けられていたようだが本人はこの時点ではまったく自覚していなかった。
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