24 / 51
24.魔獣発生源は・・・
しおりを挟む
太陽の光が徐々に山側から砦内の外にある雪に降り注いでいった。
その太陽の光が降り注いでいる雪にまみれながらそこでは若い兵士たちがガヤガヤとした声をあげながら何か作業をしていた。
「おーい。今は砦の外に出るなって言われてただろ。なんで外にいるんだ?」
城壁の山側では上から紐を括りつけて食料を引き上げていた若い兵士数人が上官に早く上がって来いと怒鳴られていた。
「でも隊長。もう食料が全くないんです。何とかしないと俺達飢え死にします。」
「だが雪がない方向ではもう魔獣がうろつき始めているんだ。こっち側の雪もほとんど残っていないんだぞ。」
「でも数日分ならまだここから運び上げれば何とか・・・。」
「ならないわね。」
そこにシェルが現れて城壁から砦の外を眺めた。
数十人が食料を紐に括りつける作業をしていた。
その間も太陽の光に照らされた雪が徐々に解けていき魔獣がそれに従ってかれらのすぐ脇に来ていた。
「早く彼らを上に上げなさい。あいつらに喰われるわよ。」
「分かっています。」
隊長は食料を運び上げるのを止めてすぐに上がって来いと怒鳴るが彼らは作業を続けていた。
「ところであの肉はどこから持って来たの?」
シェルは彼らが下で紐に括りつけている肉の塊を指差した。
「あ・・・あれは昨日あなた方が始末した魔獣から切り出したものです。」
シェルは顔色を変えた。
「いつからそれを食べているの?」
「倒された魔獣を見てすぐに数人が砦の外に降りて・・・。」
だから昨日あんなことが起こったのか。
「まさか病人にそれを食べさせたりはしてないわよね?」
シェルは隊長の胸蔵を思わず掴みあげていた。
「い・・・いえ、彼等には・・・。」
どうやら被害は少数で済みそうだとシェルが胸を撫で下ろしているといきなり砦内で魔獣の咆哮が上がった。
どうやら遅かったようだ。
「下にいる兵士たちは魔獣の肉を食べたの?」
「いえ、彼らは昨日食べた奴らに話を聞いてそれで・・・。」
砦の上にいる若い兵士が口ごもりながら説明し出した。
「言っておくわね。魔獣の肉を食べると十中八九魔獣になるわよ。魔獣になりたくなかったら食べない事ね。」
「それじゃまさか。」
若い兵士は何かに思い当たってシェルを見た。
「砦内で暴れた魔獣がもしかしたら魔獣の肉を食べたかも知れない奴らって可能性は否定出来ないわね。」
シェルと若い兵士が城壁でそんな話をしている間にも砦内の魔獣が山側にある城壁にも現れた。
「あらあら、結構な数ね。」
シェルはのんびり言いながら右手に杖を出すと城壁から砦内にある広場に飛び降りた。
すぐに魔獣が寄って来た。
シェルは彼らを炎で焼き尽くす。
数十匹をいっぺんに焼き尽くすとそのまま魔獣の咆哮が聞こえてきた場所を目指して駆け出した。
シェルが駆けつけるとそこには聖剣を手にした克也が魔獣の死骸の前で唖然とした表情で立っていた。
「ショウ。」
「シェル。どうなってるんだ?いきなり目の前で話していた人間が魔獣になったぞ。」
「シータはどこ?」
「まだ部屋・・・いやテントで寝てる。疲れてた様子だったんで声を掛けなかった。」
「上出来よ。」
シェルは克也とそんな話をしながらも目の前にあった魔獣の死骸を全て炎で焼き尽くした。
「ショウはちょっとテントに戻ってシータの様子を見て来て頂戴。私は少しガイウスと話してくるわ。」
克也は頷くとすぐにテントに戻っていった。
シェルは砦の広場に難しい顔をして佇む老兵士の肩を掴んだ。
「ちょっと食堂で話がしたいんだけど。」
老兵士は我に返るとシェルに言わるまま食堂に移動した。
シェルは食堂に着くと厨房に勝手に入り、そこに空間から取り出した食料を積み上げた。
「これは・・・。」
食堂に働く兵士見習いは全員涙目でシェルに感謝した。
シェルは彼らにこれで砦にいる若い兵士の食料を賄うようにいうと食堂のテーブルの端に座る老兵士のところに戻った。
「でっどこまで気づいてたの?」
シェルの質問に対して彼は無言を貫いた。
「まあいいわ。結論をいうわ。昨日シータが治療した兵士たちは魔獣にならないわ。」
シェルの断言に老兵士がやっと顔を上げた。
「もしも彼らが魔獣の肉を食べていても魔獣にならないわよ。」
今度こそ老兵士は信じられないという顔でシェルの顔を凝視した。
「それと明日にはこの砦に魔獣を誘き寄せて彼らを砦ごと殲滅するから明日の朝には全員この砦から出て行って貰うわ。」
「な・・・なんて無茶いや無謀なことをするつもりなんだ。」
「あーら以外ね。気づいてたでしょ。魔獣の発生源がこの砦だってことは。」
老兵士は無言でまた何も話さなくなった。
「発生源になった原因は色々考えられけどその発生源をそのままには出来ないわ。」
「しかし・・・。」
反論しようとする老兵士を置いて席を立ったシェルはそのまま食堂を出て行った。
出て行くとき一言、彼の耳元に囁いた。
「部下に知らせる知らせないわ任すわ。でも午後にはこの砦内は崩壊するから巻き込まれても文句を言わない事ね。」
老兵士はハッとして食堂を出て行くシェルの背をそのまま見送った。
その太陽の光が降り注いでいる雪にまみれながらそこでは若い兵士たちがガヤガヤとした声をあげながら何か作業をしていた。
「おーい。今は砦の外に出るなって言われてただろ。なんで外にいるんだ?」
城壁の山側では上から紐を括りつけて食料を引き上げていた若い兵士数人が上官に早く上がって来いと怒鳴られていた。
「でも隊長。もう食料が全くないんです。何とかしないと俺達飢え死にします。」
「だが雪がない方向ではもう魔獣がうろつき始めているんだ。こっち側の雪もほとんど残っていないんだぞ。」
「でも数日分ならまだここから運び上げれば何とか・・・。」
「ならないわね。」
そこにシェルが現れて城壁から砦の外を眺めた。
数十人が食料を紐に括りつける作業をしていた。
その間も太陽の光に照らされた雪が徐々に解けていき魔獣がそれに従ってかれらのすぐ脇に来ていた。
「早く彼らを上に上げなさい。あいつらに喰われるわよ。」
「分かっています。」
隊長は食料を運び上げるのを止めてすぐに上がって来いと怒鳴るが彼らは作業を続けていた。
「ところであの肉はどこから持って来たの?」
シェルは彼らが下で紐に括りつけている肉の塊を指差した。
「あ・・・あれは昨日あなた方が始末した魔獣から切り出したものです。」
シェルは顔色を変えた。
「いつからそれを食べているの?」
「倒された魔獣を見てすぐに数人が砦の外に降りて・・・。」
だから昨日あんなことが起こったのか。
「まさか病人にそれを食べさせたりはしてないわよね?」
シェルは隊長の胸蔵を思わず掴みあげていた。
「い・・・いえ、彼等には・・・。」
どうやら被害は少数で済みそうだとシェルが胸を撫で下ろしているといきなり砦内で魔獣の咆哮が上がった。
どうやら遅かったようだ。
「下にいる兵士たちは魔獣の肉を食べたの?」
「いえ、彼らは昨日食べた奴らに話を聞いてそれで・・・。」
砦の上にいる若い兵士が口ごもりながら説明し出した。
「言っておくわね。魔獣の肉を食べると十中八九魔獣になるわよ。魔獣になりたくなかったら食べない事ね。」
「それじゃまさか。」
若い兵士は何かに思い当たってシェルを見た。
「砦内で暴れた魔獣がもしかしたら魔獣の肉を食べたかも知れない奴らって可能性は否定出来ないわね。」
シェルと若い兵士が城壁でそんな話をしている間にも砦内の魔獣が山側にある城壁にも現れた。
「あらあら、結構な数ね。」
シェルはのんびり言いながら右手に杖を出すと城壁から砦内にある広場に飛び降りた。
すぐに魔獣が寄って来た。
シェルは彼らを炎で焼き尽くす。
数十匹をいっぺんに焼き尽くすとそのまま魔獣の咆哮が聞こえてきた場所を目指して駆け出した。
シェルが駆けつけるとそこには聖剣を手にした克也が魔獣の死骸の前で唖然とした表情で立っていた。
「ショウ。」
「シェル。どうなってるんだ?いきなり目の前で話していた人間が魔獣になったぞ。」
「シータはどこ?」
「まだ部屋・・・いやテントで寝てる。疲れてた様子だったんで声を掛けなかった。」
「上出来よ。」
シェルは克也とそんな話をしながらも目の前にあった魔獣の死骸を全て炎で焼き尽くした。
「ショウはちょっとテントに戻ってシータの様子を見て来て頂戴。私は少しガイウスと話してくるわ。」
克也は頷くとすぐにテントに戻っていった。
シェルは砦の広場に難しい顔をして佇む老兵士の肩を掴んだ。
「ちょっと食堂で話がしたいんだけど。」
老兵士は我に返るとシェルに言わるまま食堂に移動した。
シェルは食堂に着くと厨房に勝手に入り、そこに空間から取り出した食料を積み上げた。
「これは・・・。」
食堂に働く兵士見習いは全員涙目でシェルに感謝した。
シェルは彼らにこれで砦にいる若い兵士の食料を賄うようにいうと食堂のテーブルの端に座る老兵士のところに戻った。
「でっどこまで気づいてたの?」
シェルの質問に対して彼は無言を貫いた。
「まあいいわ。結論をいうわ。昨日シータが治療した兵士たちは魔獣にならないわ。」
シェルの断言に老兵士がやっと顔を上げた。
「もしも彼らが魔獣の肉を食べていても魔獣にならないわよ。」
今度こそ老兵士は信じられないという顔でシェルの顔を凝視した。
「それと明日にはこの砦に魔獣を誘き寄せて彼らを砦ごと殲滅するから明日の朝には全員この砦から出て行って貰うわ。」
「な・・・なんて無茶いや無謀なことをするつもりなんだ。」
「あーら以外ね。気づいてたでしょ。魔獣の発生源がこの砦だってことは。」
老兵士は無言でまた何も話さなくなった。
「発生源になった原因は色々考えられけどその発生源をそのままには出来ないわ。」
「しかし・・・。」
反論しようとする老兵士を置いて席を立ったシェルはそのまま食堂を出て行った。
出て行くとき一言、彼の耳元に囁いた。
「部下に知らせる知らせないわ任すわ。でも午後にはこの砦内は崩壊するから巻き込まれても文句を言わない事ね。」
老兵士はハッとして食堂を出て行くシェルの背をそのまま見送った。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる